神様、養い子が訪問する!
「来たでぇ~!」
朗らかで、それでいて愛くるしい子供らしさを感じる声がコテージ前に響き渡る。
「いらっしゃい」
「なんや?まだ寝てたんかいな?」
ボサボサに寝癖ついた髪、若干、乱れたパジャマ姿を気にせず、出迎える自分の姿をみて相手が冷やかす。
「ほんまガチで無職になったんやな……!」
みたことない、だらしない格好を呆れ気味に受け入れる。
「ま、ええわ!入るでぇ~!」
返事を待たずに、ずかずかコテージの中に入って行く。
自分は構うことなく、大きなあくびをひとつすると、扉を閉めて冷蔵庫の中に冷やしておいたオレンジジュースを大きな花柄が描かれた子供用コップに注ぐ。
「ほらよ」
「ありがとやで!」
6歳児ぐらいが座る子供用椅子に腰かけて、持ってきた手土産を自分で開けて、食べはじめる。
「ん……退職祝い持ってきたで!」
「納豆味……嫌がらせか??」
限りなく本物に近く再現された駄菓子をひとつ取り、わずかに眉を潜める。
「なんかプレミアムなモッツァレラチーズやら和風ステーキ味なんてもの出てたで??」
いろんな味をたくさん買ってきた。
たまたま、その中の1本を手に取ったに過ぎない!
相手が、対して気にした様子もなく話を続ける。
ガサガサ……ダバァー!
袋の中を全部、テーブルの上に出して種類別に並べてみる。
シュガーラスク5本
たこ焼き7本
照り焼き4本
コーンポタージュ8本
チーズ3本
納豆30本
エビマヨネーズ6本
などなど……
「納豆味だけ、数が突出してる理由は?」
「袋売りしてたんやで??」
「エリー......お前……おれが納豆のねちゃねちゃした食感がイヤだ!って知っててわざと選んだろ?」
「ええやん!うまいんやから」
本人は気にした様子なく、納豆味の駄菓子をバリボリ美味しそうに食べていく。
「間違いなくおれへの【嫌がらせ】だと断定する!
言い訳はみ、と、め、な、い!!」
むっちりした頬を軽く両手でつかみ、びにょ~んと横に伸ばす。
「ごめん!ごめんやで!!
お前にニガテな食いもんがある!
知って面白がったんや!!」
ほっぺたを引っ張られて、すぐに涙目になって謝罪する。
エリーは産まれてすぐ親に捨てられた孤児だった。
そこを自分が運営している組織のひとつ【赤ちゃんポスト】的な受け入れサービスを通して知り合った。
見た目こそずんぐりむっくりした女児だが、これでも一応、数年億年規模の【神】のひとりだ。
善悪だけは自分が厳しく躾をした。
納豆味の駄菓子は、その厳しい教育を受けさせられた腹いせ、もとい本人なりの【報復】の意思表示なのだろうーー
自分にとって、エリーは可愛い我が子に近い間柄だ。
「全く......遊びに来たと思ったら......」
軽く吐息を漏らして指を離し、隣に座る。
足を組み、予定を尋ねる。
「泊まりか?」
この後、自分以外にも、数人来るのを答える。
「わいが一番乗りやったみたいやな、他にも来るで?」
その時タイミング良く、気さくな調子で来訪を告げる声が聞こえてきたのだった。




