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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
夏の日々
6/19

Episode6 災いの予兆

 さあ、今から校内戦ということで部員の雰囲気もさっきまでとは変わり皆闘志を燃やしている。それもそのはず。なぜなら、今回の校内戦はもうすぐに控えている「青井スポーツ杯」のレギュラー決めに直結するからだ。この「青井スポーツ杯」というのは県内でもかなり有名な個人開催の大会で大体の高校が参加する。そのため新体制になって初めての試合がこの「青井スポーツ杯」となるのだ。

 

 どのチームだって本気でチーム作りをして臨むに決まっている。最初の大会でかなりの好成績を残せたのならそのチームの士気は高まってさらに練習に励んでいけるだろう。しかし、コケてしまったチームは秋に控える新人戦に勝てればいいが、もし仮に勝てなかったとしたらもうそのチームはその年の成績はあまり上振れすることはないだろう。やっぱり暑い8月と9月に練習に打ち込んだチームが強くなれる。そして過酷な夏の練習にみんなが熱心に取り組めるためにも、「青井スポーツ杯」でなんとしてでもいい結果を残さなけばならない。だから、今日の校内戦は本当に負けられない戦いなのだ。

 

 さあ、まずは試合の前にペアで10分間の練習をする。いわゆる「ペア練」というやつだ。俺は今回も怜人とペアになった。そして怜人と一緒に乱打ラリーをしたり、サーブレシーブをしたりしてあっという間に10分間は終わってしまった。全ペアがペア練を終え、いよいよ校内戦をすることになった。

 

 もちろん俺は下っ端なので最初の試合は審判をしなければならない。しかし、その審判をすることになった試合がメチャクチャ荒れることになるとは、この時の俺はまだ何もしらない。

 その試合というのは柿田・久井ペアと倉田・上原ペアの試合。柿田さんは女子の2年生で右利きの後衛である。柿田さんは身長は150センチ後半ぐらいだと思うが、本人はずっと「160センチ」と言っている。いやどう考えても161センチの俺と並んだ時に柿田さんの頭が俺より明らかに3~4センチ低い。うん、絶対160はないね。そんなことは置いといて、柿田さんはマジで強い。あの我らが2番手の幸汰に全然余裕で打ち勝てる。なんなら、高瀬さんとも劣らないぐらいのラリーを展開する。マジですごい人。

 

 一方の上原さんはちょっと天然な人で、時々真面目な顔でかなりぶっ飛んだコトを言ってくる。この間だって学校の近くのコンビニに寄ったのだが、その時500mlのペットボトルのお茶が税抜118円で売っていたんだが近くにコンビニの従業員が品出しをしているのにも関わらず、真顔で


「はっ?お茶が一本120円?ボッタクリやろ。」


 こんなコトをまあまあ大きめの声量で言った。そして上原さんはこれだけでは終わらない。続けて、


「スーパーは100円ぐらいで売ってるやん。誰がコンビニ(こんなところ)で買うねん。」


とまぁこんな感じでちょっと?変わった先輩だ。決して悪い人ではないんだけどね…。


 そんなことを思い返していたらいつの間にか怜人が「レディー(準備)」と試合前の乱打(ラリー)の終了を告げた。さあいよいよ試合開始。サービスは柿田・久井ペアから。


 柿田さんの1stサーブ。これは惜しくもネットの白帯にはじき返されてしまった。そして柿田さんの2ndサーブ。少し当たり損なって、ボールは久井さんの真正面に落ちた。そして倉田さんはボールの落下地点に素早く入り、「おら‼︎」と声を上げた。倉田さんのボールは一回コートのラインを空中で出た。そこからありえないくらいに曲がってラインぎりぎりに落ちた。そうこれはソフトテニスだからできる技。

 俺はこれを「外入れ(そといれ)」と言っている。ソフトテニスボールは名前の通りゴムでできていて非常に柔らかい。ラケットでかけた回転でボールの跳ね方や空中で曲がったりする。これがソフトテニスの醍醐味。そして倉田さんはありえないくらいこの「外入れ(そといれ)」が上手い。これは相手前衛、つまり久井さんからするとかなり嫌な気持ちになる。だって、分かっていても空中でコートの外にでるから一瞬アウトだと思って反応が遅れてしまう。たとえ手が届いたとしても甘い球しかほとんど打ち返せない。つまり完全な初見殺しの技。久井さんは「ごめん。」と柿田さんに言っていたが、正直いまの失点は仕方がない。

 でも俺はまだ知らなかった。ここから、倉田・上原ペアのヤバさが露見することになるとは…


 

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