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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
夏合宿編
41/42

Episode40 苦しい

「どうなんだよ、最近は。」


「どうなのって、ドウイウコト?」


「久井さんとどんな感じなのかってことだよ。」


「どうって、別に…」


「いいじゃん、もったいぶるなよ。今更隠すことはないでしょ?」


「そうだな…。」


 俺は雄星にあの日曜日の件(出会いと慰めたコト)とか青井スポーツ杯前の会話とか昨日の夜のことを全部話した。他人に話すのは勇気がいる。一通り話し終えると、一気に力が抜けた。

 俺の話を聞いた後雄星は「うーん。」と言って黙り込んでしまった。(何なの?コイツ…)と思いながら雄星が口を開くその瞬間を待った。

 30秒ぐらいの沈黙の後、雄星は淡々と言った。


「羨ましいなあ…僕はこの間別れたばっかなのに、お前ってヤツは…」


「えっ、付き合ってたの?」


「なかなか失恋はキツイものなんだぜ…。」そう言って雄星は物思いにふけたようだった。そして重い口を再び開く。


「中学2年の夏から付き合ってたんだ。高校生になったら学校は違うし、僕の部活が忙しいとか色々あった。そして会えない日々が続いて、夏休み前に向こうから別れのメールが来たんだよ。」


(そうだったのか…)


 失恋か…恋愛すらまともに経験したことのない俺には分からない。ただ、この時の雄星の顔はいつになく元気がなかった。無理して笑ってるのか、いつになく笑顔がぎこちなかった。


「別れてから、一時どうしようか迷った。学校にも部活にも行きたくなかった。家で一人で1日中泣いていたかった。でも、泣いても諦めなんてつかなかった。」


「…。」返す言葉が見当たらない。ここで励ましの言葉なんて似合わない。まして俺が言うのはもっとダメな気がした。俺は雄星の話を黙って聞き続けた。


「有名な失恋ソングを聞いてみたけど、どれもしっくり来なかった。」


「うん…。」


「失恋をすると何かに無性に集中したくなってさ…それでテニスを夏休みの間、本気で頑張った。そしたら青井スポーツ杯で結果が出た。成長を実感できたんだ。」


「そうなんだ…。」


「あ、ごめんね。話が逸れちゃったね。さとるの恋愛についてだったね。」


「うん。」


「正直、好きな人がいると楽しいでしょ。」


「そりゃあ楽しいよ。嫌なことがあっても、久井さんと話せば全部どうでも良くなる。」


「そうだよね、でもこれだけは言わせて。」急に声が真剣になる。


「行動しないと、結局何も成果は得られない。今はまだこのままの関係で良いかもだけど、久井さんは1個年上だ。部活を引退しちまえば受験勉強で忙しくなる。」


「難しいよなぁ…。大人になったら年の差なんて気にしなくていい。でも高校生には1個差ってかなり厳しいものがあるよな…。」


「だからと言って諦めるのは違う。さとるの気持ちは、本物だよ。」


 改めて雄星はスゴイやつだと思う。失恋をして苦しいハズなのに、俺の相談に乗ってくれる。そして本気で相手をしてくれる。


さとるは久井さんと付き合いたいの?」


「うーん…。付き合いたいかな?」


「結婚とかできるならしたい?」雄星は口角を上げて聞いてきた。


「結婚か…。今はそこまではないかなぁ。ただずっと一緒にいたい。いつまでも今の関係が続けばいいのにって思う。」


「そっか…。そんなもんだよな恋愛って。特に片思いならね。」


(片思い、か…。そうだよな久井さんが俺のコト好きなワケないか…)


 その後も俺はしばらく雄星と話をつづけた。一通り話が済んだら部屋で雄星と二人お菓子パーティーをした。

 久井さんが好きってこと、誰かにずっと言いたかった。言ってみたら心が少し軽くなった。だけど、胸は依然として苦しいままだった。いや、余計苦しくなった。



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