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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
夏合宿編
34/42

Episode33 現状と提案

 夏合宿二日目の朝になった。合宿の朝は俺からすると少し早い。6時30分に起床する。大部屋なら起こしてくれる人がいるかもしれないが、今回俺は個室に一人で泊っている。朝に弱い俺はアラームを6時10分から2分ごとに設定した。おかげさまでどうにか6時26分に起きることができた。

 起きたら顔を洗い、練習をする格好に着替えて食堂へと向かう。1年生は朝も晩もご飯の支度をしなければならない。白ごはんをお茶碗によそったり、コップに水をついだりする。そして準備が出来たら、食堂の外で待機している内田さんや、先輩たちを呼びやっと朝食にありつける。

 いただきますの前にキャプテンの長瀬ながせさんから食事前の挨拶があった。内容は「暑さに負けず元気に今日も乗り切ろう。」と言った感じだった。挨拶が終わりみんな食べ始める。

 座席はと言うと1年男子、2年男子、女子+内田さん夫妻の3つで分かれている。みんなで一緒にご飯を食べるといろいろなことを知ることができる。俺が驚いたことは、1年男子は好き嫌いをするヤツがとても多いコトである。俺の隣に座っていた大木、そして俺の目の前に座っていた雄星、雄星の右隣に座っている猪野いのはみんな揃って野菜は全部嫌いらしい。サラダを食べないのはもちろんのこと、みそ汁の中に入っていた小松菜でさえ食べようとしなかった。

 さらにこの3人は魚も嫌いだそうで、唯一のおかずであったサバの塩焼き(渋すぎる)も一口も食べなかった。さすがに3つも残すのは食堂の方に申し訳なかったので俺が3つとも平らげた。


 食事が終わると1年生で片付けを済ませ、いよいよ練習会場に移動する。宿泊施設のバスで練習会場まで移動する。移動すること約10分。練習コートに到着し、俺たちはシューズに履き替えてネットをかける人とボールの空気を調整する人で分かれた。そして準備が終わったら、コートの中を走る。俺は走らずに前日と同じように独りで日陰にいた。

 

 みんなが走っている姿を見ているところ、内田さんが突然話しかけてきた。


「白城、足の方はどうだ?やっぱりまだ痛むか?」


「そうですね…。かなり良くはなったのですが、まだ少し痛む時があります。」


「肉離れでも人間ってスポーツできるんだな。俺の人生でお前が初めてだよ、肉離れでもプレー続けたヤツは。」


 そう言われると確かによく動けたな、あの時の俺。足に違和感を感じながらもなんとか我慢して試合を終えたことは誇りに思う。だけど、もっと入念に準備運動をしていたら肉離れにならずに済んだかもしれない、そう考えると悔しい。

 昨日の夜、久井さんと話せて俺は気持ちを切り替えた。だけど胸の奥にあった思いを内田さんに俺は打ち明けてしまった。


「僕はレギュラーになれますかね?」


 突然の質問であったにも関わらず、内田さんは俺の目を真っすぐ見て言った。


「レギュラーになりたいのか、白城。」


「はい。」と俺は返事をする。返事を聞いて内田さんはすぐさま話をつづけた。


「お前の今のレベルではレギュラーにはなれない。」


()()()()()()()」という言葉が引っかかる。まだ俺には伸びしろがあると内田さんは見てくれているのか?と思った俺が馬鹿だった。その期待はすぐに裏切られた。


「この暑い夏合宿を乗り切ったヤツは秋に急激に強くなることがある。だがな、逆を言えばこれを乗り切ることができなかったヤツは秋に強くなることはほとんどない。実際、俺のコーチ人生でそういうヤツは一度も見たことがない。」


「…。」俺は黙ることしかできなかった。内田さんは俺に構わず話を進める。


「さらに、白城達1年生は8人とも後衛だろ?この期間でお前以外みんな少しは成長するだろうな。この間の試合(青井スポーツ杯)で良かったのは白城だけじゃない。」


「…。」


早瀬はやせ(幸汰)も1年生ながらAチームの2番手として十分な成績だった。小川おがわ(雄星)もBチームで一番の活躍だった。その次に良かったのは白城、お前だ。だがな、レギュラーになるには早瀬はやせ小川おがわ、倉田、長瀬この4人のうち2人に勝たないといけない。正直言って今のお前にはこの4人に勝つことはほぼ不可能だ。」


「じゃあ、僕はレギュラーになれないってことですか?」


後衛・・では現状難しいな。」


後衛・・では?」


「ほら、さっきも言っただろ?白城達1年生は全員後衛だって。珍しく、前衛がいないんだよお前たちの代は。」


 ここで俺は頭をフル回転させて考えた。なんだかんだ内田さん(このひと)の言いたいことが分かった。


「つまり前衛にならないか、ということですか?」


 俺はほぼ確信をもって質問した。そして俺の質問に呼応するかのように内田さんは俺の目をもう一度しっかり見て「そういうことだ。」と言った。俺は返事をすることができなかった。




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