Episode25 ベンチ休憩
石井の1stサービス。ボールを打つと同時に石井は前へ駆け出した。そして鋭い打球がサイドにバウンドし、相手後衛はオープンスタンスで打つ構えに入った。相手後衛のレシーブは真っすぐ俺のもとへと飛んでくる。俺はボールの落下地点を大体予測して移動する。すると嫌な予感がした。このままシュートボールを打つと相手前衛に取られそうな気がした。俺はストレートにロビングを上げた。思った通り相手前衛は飛び出していた。俺のシュートボールをボレーしようとしたのだろう。相手前衛は急には止まれず、相手コートに大きな隙間ができた。状況が悪い相手後衛は攻めることはできず、態勢を整えるためロビングを打った。しかし石井がすでに動いていた。少し浅くなった相手のロビングを、ジャンピングスマッシュでがら空きとなった右側に打ち込んだ。相手が取れるワケがない。これで3-0となった。あと一点で、第一ゲームをとれる。
「ナイススマッシュ!」と俺は石井に声をかける。石井は「このゲーム、しめるぞ。」と言い、自分のサービスの所へ移動した。そして、石井の2本目の1stサービス。これは、ネットの白帯に当たり、弾き返された。フォルトとなり、石井は少し間をあけて2ndサービスをうった。やや力のないボールだったが、相手前衛のレシーブはネットの白帯にあたり、これまた弾き返された。
あっという間に、第一ゲームを手にした俺たちは、すぐさま自分たちのベンチへ戻った。大木と怜人が俺と石井の水筒を持って待っていてくれた。俺たちは水筒を受け取り、ベンチに座る。
「知、調子はどう?いい感じ?」と聞き慣れた声が聞こえた。声の主は雄星であった。
「雄星か…。Bチームの方はどうなの?」
「さすがに勝ったよ、さすがに。」
「そうかー。まあ、俺のプレー見といてよ。」
「どうした、知。調子良いのか?」
「まあいいから見とけって。」
「もうそろそろ、Aチームも女子も来るはずなんだけどな…。あと内田さんも。」
「えっ!?」
思わず大きな声を出してしまった。石井も「何なんコイツ…」という険しい顔で俺を見てきた。あぁ、マジでびっくりしたときに大声出るのどうにかしたいな、マジで。
AチームもBチームも女子も内田さんも応援に来る、という状況を想像しただけでなんだか緊張してきた。
でも分かる。俺が驚いたのはAチームが応援に来ることでも内田さんが試合を観に来ることでもない。間違いなく、女子、つまり久井さんが応援に来るって分かったからだ。
とんでもないプレッシャーが俺を襲ってきている。おそらく高校入試の時と同じくらいのプレッシャーである。体に自然と力が入る。妙な力の入り方だなと俺は感じながらもベンチから立ち上がった。それと同時、石井も待ってましたと言わんばかりに立ち上がった。
「よしっ、じゃあ行ってくるぜ雄星。」
「おう、ゲームカウント3-0で戻って来いよ!」雄星が元気よく送り出してくれた。
俺と石井は反対側のコートへと歩き始めた。
「白城ってさ、チーム内で人気者だったりする?」石井が突然質問してきた。
「えっ、いやぁどうかな?まぁ、嫌われてはいないと思うけど…」
「そうか…。」と石井はひとりでクスッと笑った。
「何だよ、何かおかしいか?」俺は石井がなぜ笑ったのかが分からなかった。しばらくして、石井が言った。
「いや、坂井高校はいいチームだなって思っただけ。」
予想外の言葉に俺は何も言えなかった。いいチーム、か…たしかに、そうかもね。
「石井、次とその次のゲームも取って、ゲームカウント3-0でまたベンチに戻ろうぜ。」
「あぁ、そうしようぜ。どんどん点を取っていこうぜ。」
こうして俺たちはまた、自分たちのポジションについた。もう2ゲーム目が始まろうとしていた。




