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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
青井スポーツ杯編 上
20/31

Episode20 プレイボール!

 いよいよ試合が始まろうとしていた。俺は石井と一緒にコートに足を踏み入れた。対戦相手との距離が近づいていくにつれて自然と鼓動が速くなる。相手との挨拶を済ませ、トスを行った。トスを行い、サーブ、レシーブ、サイドが決まった。俺たちはサーブからで、サイドは自分たちのベンチ側であった。


 試合前の乱打ラリーが始まった。俺は一球一球、深いボールを打ち続けた。乱打をしている感じでは調子がよさそうだ。狙ったとこにほとんど誤差なく打ち込めている。ずれてもほとんど大差ない。


 俺の隣で石井はサーブの練習をしていた。ずっと2ndサーブの練習をしていた。ただ黙々と俺たちは乱打をし続けた。そして審判から「レディ(準備)」と乱打終了のコールがされた。


 乱打が終わり、相手に向かって軽く礼をして「ありがとうございました。」と言い、いよいよ試合が始まろうとしていた。俺は大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていた。


 すると、突然石井が話しかけてきた。


「白城、相手前衛は多分、引っ張りが得意だと思う。」


「はっ?」


 突然何を言い始めたのかと俺は思い、反応できなかった。意味が分からなかった。俺はすぐに、

「どうしてそんな風に思うんだよ。」と石井に聞いてみた。


 すると、石井は真顔でこう言った。


「試合前の乱打でなんとなく相手の弱点が分かるだろ?だからだよ。」


「はっ?」


 ますます俺の頭はこんがらがってきた。本当に意味が分からない。石井コイツはなんか相手の弱点が分かるような超能力でも持っているのか?そんな風に考えていた。


 全く理解できていないのを石井も感じ取ったのか、呆れたように


「はぁ、今は深く考えんな。とにかく前衛にボールが行ったらストレート気味にボールが来ると思え。」


「了解。」


 俺はとにかく石井の言葉を信じてみることにした。

 (ストレート気味ねぇ…。じゃあ前衛レシーブはストレートを注意しとけばいいのか…?)

 俺は少し疑問を抱きながらもサーブを打つ態勢に入った。


 「7ゲームマッチ、プレイボール‼」

 

 審判の声が聞こえてきた。いよいよ俺の試合が始まった。大事な最初の1stサーブ。俺はいつも通りにただ真っすぐトスを上げることを意識した。ボールがいい高さに上がる。トスは真っすぐ上がった。風は吹いておらず、そのまま真下に落ちてくる。いつもと同じタイミングで俺はラケットを振り始める。


 ラケットがボールをキレイにとらえた。ラケットの中心でとらえられたボールは俺が狙った通り、センターに突き刺さる。相手後衛はフォアでボールを打つため、少し回り込みながらレシーブに入る。相手はボールを俺の方に強めに打ち込んだ。


 その瞬間、石井が勢いよく飛び出した。全く動く気配のなかった石井は完璧なタイミングで飛び出した。相手がなんとなく打ちこんだやや速いボールをキレイに縦面で捉えた。


 「パァーン!」気持ちの良い音が響く。相手前衛は、石井のボレーに反応できなかった。石井のボールが無人のエリアに落ちる。あっという間に1点を取った。


 俺は石井のプレーに驚いていた。今のボレー、無駄のない動きで極限まで相手がどこにボールを打つかを見ていた。そして、迷うことなくポーチボレーに出る。完璧すぎる…。


「おい、何ボーっとしてんだ白城。今のはお前のサーブが良かっただけだ。」


「えっ、そうかな?ありがとう…」


 俺は石井に褒められ、正直嬉しかった。嬉しくて声が少し甲高くなる。


「何やってんだお前は…まだ1点しか取ってないだろ?次も良いサーブを頼むよ。」


 俺は浮ついた心を落ち着かせ、再びサーブの構えに入った。


審判「1ー0(ワン・ゼロ)」←サーブ側からポイントを言う。


 俺はサーブを打つ前に石井が言ったことを思い出していた。

(相手前衛は引っ張りが得意か…ならサイドの浅い所に打つ!)

 相手前衛はさっきの俺のサーブを見て、少しセンター気味に立っている。これでこそ、サイドをつくことができるとポイントを取りやすい。俺は自分を信じて、再びトスを上げる。

「パァーン!」またいい音が響く。サーブは狙った通り、サイドの浅いところに入った。相手前衛は余程センターを意識していたのか俺のサーブに触ることすらできない。

 まさかまさかのサービスエースをとった。これには石井も驚いたのか、目を見開いて俺を見た。


白城おまえ、今みたいなコトできるんだな…。ナイスサーブ。」


 俺はいわゆるゾーンに入っている。ボールが、試合展開が、思うように行っている。試合に勝てる、そう初めて思った。俺のボルテージは早くも最高潮に達していた。


「ナイスサーブ!」


 やけに聞き慣れた声が聞こえてきた。声がした方へ目線を移す。観客席の方にその人は立っていた。そう、久井さんだった。柿田さんと一緒に俺の試合を見ていた。

 顔を見ただけで、こんなにもやる気になる。久井さんのパワーはすごい…。

 俺はやる気に満ちた。この試合、絶対に勝ってやる!




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