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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
青井スポーツ杯編
18/19

Episode18 開花

 怜人の打点の違和感に気付いてから、俺は考え込んでいた。今まで、テニスは楽しんできていただけであった。何も相手の細かい所まで意識して見ることはなかった。この時俺は思った。

「自分自身の細かい部分でさえ意識できていなかったのかもしれない。」と。確かに今までいろんなアドバイスを内田さんや先輩からもらった。そして言われるがままにそれを自分のプレーに取り入れた。だが、そこが問題だった。何も考えずにただ言われた通りにしていただけというコトが。アドバイスは人それぞれによって言葉が変わってくる。だから一つ一つ別のモノとして今まで聞き入れてきた。だが、本当はそうではなかったのだ。別のモノに見えても同じ目的を持っていることがある。そのことに気付いた俺は今までもらってきたアドバイスを思い出してみた。

 すると「膝を落とす」と「つま先に体重をかける」、この二つを真っ先に思い出した。一見すると意識するところが違うから異なるアドバイスだと思っていた。しかし、よく考えてみた。「膝を落とす」と「つま先に体重をかける」ことで体勢が低くなる。そう、同じことを目的として持っていたのだ。

 この瞬間、俺の中で何かが開花した。何かと聞かれたら、具体的に言葉にできない。だけど、確かに何かが開花したのであった…。


 少し考えている間に、怜人たちの試合は進んでいた。ゲームカウント0-2の1-3で負けている。だが、ここで怜人に変化が見られる。さっきまで全くと言っていいほど入らなかった1stサーブだが、ここに来て入り始めた。怜人は身長が高いから、サーブに自然と角度がつく。相手後衛もそこまで上手くはないから怜人の角度のあるサーブに苦戦している。相手後衛が怜人の1stサーブをなんとかキャッチしたがボールに勢いがなくネットに引っかかる。2-3になった。


「ナイスサーブ‼」


俺は思わず声を上げて喜ぶ。隣を見ると石井が少し驚いたような顔をしている。


「どうした、石井。驚いたか?」


俺が声を掛けると石井は少しボーっとしていて、反応が少し遅れ


「うん?あぁ、確かにあれを初見で狙ったところに返すのは難しいな。」


なんか、ペアのプレーを褒められるって嬉しいものである。俺はつい「そうだろ⁉」とドヤ顔で言ってしまった。石井は一瞬俺のドヤ顔を見て、驚きをしたものの真顔で見つめ返してきた。


「なんだよ、お前。狙ったところに返すのが難しいだけだ。返球できないとは言ってない。」


(チっ、なんだよ石井コイツ…可愛くねぇな…)


俺と石井のやり取りを見ていた青海学園の橋本が話しかけてきた。


「白城くーん、石井と仲良くしてるッスね。どーしたらそんな会ったばかりのヤツと仲良くなれるんすか。」


「橋本君…」


話しかけられるとは思っていなかったので俺は言葉が詰まる。だけどすぐに、


「勢いだよなぁ、多分。」


なんてテキトーなことを言った。すると橋本は謎に首を縦に振り、


「勢いッスか…俺、そういう精神論的なヤツ大好きッス。」


なんて橋本もまた、テキトーに返してきた。

(いやいや、普通に考えて精神論嫌いじゃないとか昭和かよ…)


こんな風に雑談しているとまた、怜人がサービスエースを取っていた。さらに今回は相手が触れることすらもできなかった。改めて思う、怜人コイツはやっぱり只者ではないと。

 続く大木もしっかりとダブルフォルトはせずにサーブを確実に入れた。当然ラリー戦になるが、打点を意識した怜人は相手に打ち負けることはなく、なんなら相手を圧倒し始めている。

あっという間に3ゲーム目を取り、ゲームカウント1-2となった。怜人の快進撃はまだ止まらない…。

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