表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
青井スポーツ杯編
17/19

Episode17 気付き

 (白城side)

現在、怜人・大木ペアが試合中である。相手の西原にしのはら高校はそこまで強いチームではなく、Bチームなら俺たちと実力がほぼ同じぐらいである。初戦の相手にはちょうどいい強さである。

 しかし、怜人と大木ちゃんは今かなりマズイ状況である。サーブが二人ともほとんど入っていないのである。今、ゲームカウント0-2で怜人・大木ペアが負けている。怜人たちも少し焦っているようだった。二人ともダブル後衛なのに全くラリーにならず、ラリーになる前に怜人たちがミスをしている。


「あの二人、いつもこんな感じ?」


突然、石井が俺に話しかけてきた。俺は「こんな感じ」の意味がいまいち分からなかったがすぐに


「いつもミスは多いほうだけど…」


と言うと石井は続けざまに、


「練習の時もミスを結構しているんじゃない?」


と聞いてきた。言われてみれば確かに練習でこの二人はいつもネットにボールをかけたり、1~2メートルぐらいのアウトを連発したりしている。


「たしかに…言われてみればいつもミスが多いかも。」


と答えると、石井の声色が少しだけ変わった。


「たしかにって、まるでチームメイトのことは気にしてないみたいに聞こえるな。」


この言葉に俺が黙り込むと石井はため息をついた。そして石井は


「仲間だろ?もう少し大切にしてやれよ。ペアがいないとテニスはできないんだぜ?」


と言ってまた怜人たちの試合を見始めた。石井の言葉は核心をついていた。

 思い返せば今までの練習は自分のコトでいっぱいいっぱいだった。チームメイトに目を向けるなんてしていなかった。まわりの人間よりも身長が低いし、とりわけ足が速いわけでもなく、パワーがあるわけでもなかった。体格的に不利な俺は練習を他人の倍以上こなさなくては、そう思い続けていた。無理をしていたわけではない。ただ自分の考えに囚われ続けて周囲の人間でさえ見えなくなっていた。

 

 久々に怜人と大木のテニスを細かく観察してみた。サーブのトスの位置、サーブを打った直後の体勢など最近は全く気にしていなかった所までも観察した。すると何か違和感を覚えた。どこか、ボールを打つ前の体勢がどうもしっくりこない。何だ、何なんだこの違和感の正体は…。


 しばらく怜人のストロークを注視した。なぜラケットは振れているのにネットに引っかかる?どこかがおかしいはず。すると、俺はあることに気付いた。


「怜人のヤツ…なんか打点がいつもより心なしか低くないか?」


 俺が感じていた違和感、それは怜人の打点の高さであった。打点、すなわちボールをラケットで捉える位置のことだ。それが少しだけ低い気がしたのだ。打点はプレイヤーによって多少の違いがある。だから、普段はあまり意識はしていなかった。だが打点を下げるにつれてミスをする確率は高まっていく。さらに怜人はほとんどロビングを使わない。そうであれば、打点が低くなると当然ミスも多くなる。


「白城、いい所に気付くじゃん。意外と他人のプレーを細部まで観察できるんだな。」


突然石井が俺に話しかけてきた。思ってもいなかった誉め言葉に俺は嬉しくなった。そして、


「怜人ー!!打点を意識しろー‼」


と怜人に聞こえるような大きな声で言った。俺の言葉が聞こえたのか、怜人はベンチの俺に向かってグッドサインをした。そしてここから、試合は白熱していくのであった。


  (石井side)

 白城はなんだか自分に似ていて、気が合う。ソフトテニスへの情熱も話を聞く感じではそこそこはあるみたいだ。だが、少々テニスへの取り組む姿勢が雑である。プレーしか見ておらず、ただ「上手うまいなあ」としか言わない。そんな調子でいるから白城はCチームなんだろうな。細かいところに目を向けていらないようでは一生、白城コイツはレギュラーにはなれない。

 俺は白城コイツとは違う。今回は校内戦で負けCチームに登録されているが、今回の試合で必ず結果を残して次こそはAチームに入るんだ。白城達(コイツら)に格の違いを見せつけてやる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ