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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
青井スポーツ杯編
16/19

Episode16 開幕

 青海学園の自己紹介が終わり、続いては俺たちのターンだ。先頭はCチームになってから全く言葉を発していない大木おおきちゃん。大木ちゃんはかなりのコミュ障だが思い切って、


「さ、坂井高校1年の、お、大木です。よろしくおねがいします…」


となんとか言い終えた。ただ意外にも大木ちゃんの自己紹介で笑うやつは青海にはいなかった。てっきり俺たちのことを下に見ていてもっと馬鹿にすると思っていた。さすがに監督がいる前では笑わないか。

 大木ちゃんの次は怜人であった。怜人はさっさと挨拶を終らせた。そしていよいよ俺の番。俺は咳払いをして一瞬だけ間をおいてから、


「坂井高校1年、白城知しらきさとるです。ポジションは後衛をしてます。今日、明日お世話になります。」


頭を下げ、やがて顔をあげると石井君が一歩前にでてきた。石井君は手を差し出しながら笑顔で、


「白城君、今日と明日、よろしくね。絶対試合に勝とう。」


この石井という男は熱い男なのだろう。こんな風にやる気のある人は正直大好きだ。俺も手を差し出して、


「石井君、こちらこそ2日間よろしく。足を引っ張るだろうけどベストは尽くすよ。」


俺と石井は強く互いの手を握り合った。手の大きさは二人とも同じぐらいの大きさなのだが、石井の手は自分よりもはるかに分厚く、硬かった。今、激動の「青井スポーツ杯」が幕を開けるのであった。


 ついに俺の公式戦高校初試合が始まろうとしていた。もうコートの中に入り、俺たちは対戦相手が到着するのを待っていた。自己紹介の後、青海の人たちと一緒にランニングをしたり、準備運動をしたりしたのだが意外と青海の人たちは気さくな人達であった。俺は、すぐに青海の3人とも打ち解けすっかり仲良くなったのだが、大木ちゃんはというと相変わらず口を開かない。いくらコミュ障でも少しぐらいは話せよ、と思ったがそこは言わずに我慢した。怜人はというと、俺と同じように青海の人たちと仲良くなり、特に中迫君と仲良くなったみたでずっと二人で話している。

 雑談をしていると、内田さんがやって来た。どうやらオーダーを伝えに来たらしい。だが、俺たちCチームの試合とAチームの試合が被ってしまったらしくCチームの試合は見れないとのことだった。

 オーダーはというと、1番手が怜人・大木ペア。2番手が中迫・橋本ペア。そして3番手が白城・石井ペアであった。まさか自分が石井君とペアを組ませてもらえるとは思っていなかった。しかし、石井君とペアを組める嬉しさと同時に不安になった。石井君ほどの前衛なら、俺がミスをしなければ点を取ってくれる。そう、()()()()()()()()()()。少し緊張してきた。だけど、この緊張感が懐かしくて久々の試合が楽しみで仕方がない。


「よっしゃー!勝つぞー!」


と声に出して自分に言い聞かせた。すると、石井君が話しかけてきた。


「フフ、白城君はなんだか僕と似ているね。僕も試合前に自分を鼓舞するんだ。」


「そうなんだね…。今日、僕は高校公式戦初試合だからなんとしても勝ちたいんだ。」


「それは僕もだよ。やっぱり最初の試合は勝ちたいよね。」


「うん。勝ちたい。」


「絶対に勝とう。勝って勢いに乗っていこうよ。」


「うん‼」


俺と石井は気が合った。面白いくらいに二人は同じような人間であった。そうしているうちに、相手の高校がやって来た。相手は「西原にしのはら高校」のBチーム。相手がBチームだろうが関係ない。俺は石井という最強のペアと組むんだ、こんなところで負けてたまるか。

 そして両チームが試合前の挨拶をするためにバックラインに並んだ。目の前の相手選手が、自分よりも強そうに見える。中学の時には体験したことのない雰囲気がそこにはあった。

 審判が「集合!」と言い、両チームが互いに挨拶をした。そしてネット付近まで歩みだす。


「ただいまから、坂井・青海混合チーム対西原高校の試合を始めます、礼。」


両チームが「よろしくお願いします」と挨拶をした。そして、俺たちはバックラインの所まで戻り、コートに一礼してから、観客席の方にも挨拶をした。観客席に久井さんの姿はなかった。だが、そんなことを思っている場合ではなかった。

 いよいよ、高校初の公式戦が今始まったのであった。その時は刻一刻と近づいてきている…






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