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90 ピザが食べたい 上 そこに窯があるから

 ピザが食べたい


 栄養剤に混じっていた瘴気については、とりあえず薬草を届けついでにハーカセさんに丸投げした。

 私ではよくわからないから。

 やはり王都では人気だけれど、この街ではそれほど出回っていない栄養剤らしく、これだけが原因とは思えないらしい。

 そうだよね、原因不明の病がこんなあっさり解決するはずがない……



 ということでピザが食べたい。

 最近は薬草作りに忙しくしていて少し余裕がなくなってきている。

 こういう時こそ美味しいものを食べるべきではないか。


 パン窯があるのである。借りられるのである。

 そしたらピザが食べたくなるのが人の心というものだ。

 ピザ生地を作るのはけっこう簡単だ。


 昔友人の家でピザパーティをした時に、ホームベーカリーが壊れてしまってピザ生地が作れなくなった時があった。

 その時、友人の姉が、じゃあ手捏ねで作るわ。

 とあっさり手でこねてピザ生地を作ってくれた。


 なんていうか、それまで私はホームベーカリーがないとパン生地って作れないと思っていた。そういう思い込みに凝り固まっていたので衝撃だった。

 作ってもらったピザ生地で作ったピザとても美味しかった。


 多分あれは炊飯器がなければご飯が炊けない、みたいな思い込みだった。

 別にお鍋でもフライパンでもご飯は炊こうと思えば炊けるのに。

 その手段じゃないとできない、っていう思い込みは他にもけっこうあるのだろうなと思う。


 自分でパンを焼くようになると、ピザ生地も作れるようになった。失敗したパン生地をピザ生地に流用したりするの、やったことある人は多いと思う。


 ただ、問題としてピザを焼くのであればパン窯の余熱ではなく、最初の強火の時に焼きたい。ハードパンを焼く温度よりも高い温度がピザの適温だ。




「ラリーさん、ちょっとお願いがあるのです」

 ということで、事前にラリーさんに交渉だ。パンを焼き始める前のパン窯をちょっと貸してほしいというお願いである。

 十分に窯が熱されていれば、90秒くらいで焼けるはずなので、そんなに時間は取らせないとは思う。けど一番忙しい時にお願いをすることになるのでそこはちょっと申し訳ない。

「ああ、焼くだけだろ? そんなのいつでも焼くよ。明日来るか? しかし膨らんだパン生地をわざわざ押しつぶして焼くのか」

 これも焼き込みパンの変種か? おもしろそうだな、とすぐに許可が出た。そしてパンを焼き始める大体の時間を教えてもらった。

「お願いします!」

「サキさんの新作パンなの? 楽しみね」

 ってアンさんに言われてしまった。新作というわけではない、と思う。伝統的な食べ方だよね。ピザ。


 こうなったら美味しいピザを作りたい。必要なものを買って帰ろう。

 チーズの美味しいお店をこないだ見つけたのだ。あそこのチーズをたっぷりかければ勝ったも同然ではないか。


 あと、ベーコンも素敵に美味しいやつを買ってある。ベーコンは段ボール燻製器を自作して作ったことがあるのでこっちでもいつかやろうと思っていたのだけれど、自分でやるよりもハイクオリティなものが買えてしまうのだから買った方が良い。

 ただ、ナッツの燻製やスモークチーズはちょっとやってみたいなぁ。


 トマトソースは贅沢にミニトマトだけで作ろう。大玉で作るトマトソースも美味しいけれど、ミニトマトで作ると味が濃厚で甘み旨味たっぷりになって絶品なのだ。


 えっとだから、買って帰らないといけないのは、チーズとオリーブオイルかな。

 玉ねぎもにんにくもピーマンもあるから。もちろんバジルも育てている。

 オリーブオイルは昔の購入履歴があるから結構安く買えるのは買える。けど、どうせなら偽物を警戒しなくて良いオリーブオイルが手に入るならそっちが良いだろう。

 日本だとエキストラヴァージンオリーブオイルを名乗る基準が外国とはちょっと違うのでいろいろあるっぽいよね。


 そう思っていたら、

「うちで出さしてもろとるこれはほんまもんのオリーブオイルやから安心したってな」

 って今日初めて見るアラブの商人っぽい格好をした糸目の店員さんに言われた。めちゃくちゃ声が良いのと懐かしいアクセントにびっくりした。

「ほんま? うれしいわー」

 って口から出かけた。うちそこまでこてこての関西弁じゃないのに。なるほど、これが相手の言語につられるということか。

 これはあれだ。こっちの世界でもエキストラヴァージンオリーブオイルの偽造は多いのだろうか……

 まあ、良いオリーブオイルが買えたのならそれで良い。

 チーズがめちゃうまだから信頼しているお店である。オリーブオイルがあるかついでに聞いてみて良かった。





「まず、トマトソースを作ります」

 宣言してから作業に入る。

「ここにミニトマトがあるのじゃ!」

 カゴいっぱいに収穫された綺麗なミニトマトたち。赤いのもあればオレンジなのもある。個人的に赤よりオレンジの方が甘く感じる。多分品種の違いなのだろうけど。


 ちなみに私はトマトは苦手だ。しかしピザは大好物なのである。昔はチーズも苦手だった。ピザを食べるようになってからチーズは大丈夫になった。トマトは、加熱されていてあの緑のグニュっとしたところが気にならなくなっていれば美味しく食べられる。


『ここに玉ねぎとにんにくがある、のじゃ』

 ミミが今日はトカゲ姿のまま、にんにくにくるりと巻き付いている。

 キララに語尾が釣られているようだ。


 玉ねぎとにんにくをみじん切りにする。ミニトマトはヘタを取って二つに切る。

 にんにくの臭いは人によって感じ方が違うらしい。私は食べた時に火薬を食べてるみたいだなと感じる時がある。火薬を食べたことはないのだけど。

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― 新着の感想 ―
更新遅いからしばらくぶりに見に来ました。 楽しみは取っておくタイプです。 トマトソースじゃないけどケチャップは明宝のしか勝たんと思っています。 昔はギフトセットにしか入ってなかったレアなトマケチャです…
トマトは無理でもケチャップとかソースは 好きって人結構いますよね 牛乳苦手でもコーヒー牛乳は好きな人も 新鮮なにんにく火薬っぽいはめっちゃ同意><
出ましたね!ピザ! 嬉しいです。 梅ジャムって食べたこと無いのですが、イメージ的にはゴルゴンゾーラチーズと一緒にピザにしたら意外といけるんじゃないかと。 次回楽しみですね。
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