9 ゴードン道具屋で服を買う
ギルドに戻ってマチルダさんのいる受付に向かい、依頼票を出して処理をお願いする。
「はい、サインを確認しました。初仕事完了おめでとうございます。こちらが報酬になります」
祝われて嬉しい。マチルダさんの笑顔ほんといいなぁ。
「ありがとう」
渡された銀色のコインを3枚を大事に受け取る。
この世界で初めて手にするお金だ。感慨深い。
続けて、仕事を探したい気持ちもあるが、お買い物をしてみたいというか、何がどのくらいの価格なのか知りたい。のと、ジルさんにお使いを頼まれている。知り合いの道具屋に暇な時に来て欲しいと伝言してほしいと。
マチルダさんに聞いてみよう。
「ゴードン道具屋の場所を教えてほしい」
ジルさんにギルドの近くだと大体の場所は聞いたけど確認大事。
「それでしたら、出てすぐの角を右に行っていただければ左側に見えてきます」
「ありがとう」
行ってみよう。
言われた通りに進むと、あれかなという店が見えてきた。店の外にも雑多なものが並んでいる。家具や服も取り扱っているようだ。看板を確認するとゴードンと書かれていたのでここで間違いないだろう。
店の中を覗き込むと中には天井まである棚が並んでおり、そこにびっちり品物が並んでいる。皿や壺、文房具っぽいものや、革製品。キラキラ光る石も並んでいて興味深い。
「いらっしゃい」
奥からひょろっとした背の高い男が出てきた。
「ゴードンさん?」
「ああ、私がゴードンです。何かお探しですか?」
聞かれて答える。
「ジルさんから伝言を頼まれて。家の不用品を暇な時に見に来てほしい、と」
「ジルじいさんが?」
うなずく。
「台所から出た不用品で皿や鍋が多くて、結構な量がある」
「ほう。今日の夕方にでも行ってみます。ありがとう」
これで任務は完了だ。
ついでなので物価を知りたい。切実に知りたい。このお店、棚を見た感じ食料品も並んでいる。
「ところで、この街に来たばかりなんだが、ここでは小麦粉、塩、砂糖はどのくらいだろうか?」
パンがあったから小麦粉も売っている、はず。
「小麦、塩、砂糖ですか。うちだとこの袋入りので小麦粉が1000ゴルドです。塩と砂糖は錬金ギルドで、今だと1キログム400ゴルドと1600ゴルドくらいですかねぇ」
示されたのが大体1kgくらい入ってそうな布袋だ。小麦粉の値段はだいたいわかったけれど、単位がいまいちわからない。けどめちゃくちゃ高いってことはないのがわかった。塩砂糖はやっぱり専売っぽい気配だ。
「ありがとう。今、量を持ってきていないが、このレーズンは買い取ってもらえるだろうか?」
サンプルとして少し出して食べてもらう。
「こりゃ、甘くて美味い! 種もないんですね。普通のレーズンなら1キログム2000ゴルドですが、これなら3000ゴルドで買い取りますよ」
買い取ってもらえるようだ。
「えっと、1キログムというのは?」
問うと、横に置いてあった天秤から重りを取って持たせてくれた。けれど手量りとかしたことないのでよくわからない。まあ多分1kgくらいなんじゃなかろうか。そう思おう。
「わかった。ありがとう。少し店を見せてもらっても?」
「はい、見てってください」
できればマントと一般的な服とカバンが欲しい。せめてマント。あと入れ物。レーズンを入れる布袋も欲しい。店の一角にある古着コーナーを物色する。外にも特売品らしい服があるのでそっちも見る。
マントはフード付きのこれ良いな。カバンも布製で補強に革を使っているでっかい背負いが見つかった。
ただ、問題は3000ゴルドで買えるかってことで。値札が見当たらないけど多分無理だよね。
って、いま着ている服って売れる?
こちらの服を買って着てみたいのだが、手持ちが心もとないのでコートを売れるか相談してみた。
「仕立てが良くて布目も均一で、すごいですね、これ。これなら15万ゴルドで買取りできますが、本当に売ってしまっていいんですか?」
と言われて、現代日本の布製品との価格差にびっくりして返事が遅れる。いやそれ定価1万円しないやつだよ。
「すみません。もう少し大きいサイズだともうちょっと頑張れるんですが」
安すぎて返事がないのだと思われたようだ。
「15万ゴルドで買い取りをお願いしたい。それで、欲しいのはこれとこれなんだけど」
マントとカバンのお値段を教えて欲しい。もしかして買えないくらい高いんだろうか。
「マントが1万5000ゴルド、カバンは2万ゴルドです」
よっしゃ買える。
「ではこれとこれも」
シンプルな服の上下セットと大中小な布袋を2枚ずつ追加。
布袋分をちょっとおまけしてもらって、合計5万ゴルドということで、差し引き10万ゴルド。
金貨と大銀貨とどちらが良いか聞かれたので、使いやすそうな大銀貨と答えると、ギルドでもらった銀色のコインよりも大きなコインを10枚渡された。
なるほど、これが大銀貨。
「確かに。ありがとう」
「またよろしくお願いします」
店を出て、ほっと息を吐く。
まとまったお金を手にできてすごく安心した。
人通りの少ないところでストレージを出して、中に入る。
緊張していたのか入るなり足の力が抜けてへたり込んでしまった。
宿を探してベッドで寝たい気もするけれど、どのレベルの宿なら安心して泊まれるのかがわからない。
ギルドで雑魚寝はちょっと遠慮したい。簡易個室ってどんな感じなのかな。南京虫ってこっちにもいるんだろうか。いるとしたら怖い。全身かゆかゆになる未来が見える。
疲れた。お風呂入りたい。
せめてお湯で体を拭きたい。お湯って買ったことあったかな。あんまり買わないよね。はるか昔、小さい頃に駄菓子屋でカップラーメンを食べる時に1回5円でポットのお湯をもらっていたことがあった気がする。
そう思って「お湯」で検索をかけて出てきた履歴に驚く。
お湯(41℃)200リットル 149円。
えっと、これは一体? 200リットルってけっこうな量だし、41℃ってこれは、お風呂のお湯? お風呂のお湯って買ったことになるの? そりゃガス水道代払っていたけど。
え、てことは。
「水」で検索してみる。水だけだと水ようかんとか水溶性食物繊維が出てきてすごく見づらいリストになった。
そのリストをずずっと見ていくと、49リットル7円とか、33リットル5円とかが出てくる。
これは、水道水を買えるってこと??
水道水が買えるってことは、ガスも電気も???
誤字脱字報告どうもありがとうございます。
ほんと助かります!