表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/96

87 小話 シャボン玉に映る世界

 ふいにシャボン玉が吹きたくなった。


 大人になるとちと恥ずかしいのだけれど、シャボン玉を吹くのはとても楽しいので百均で買って常備していた。

 人がいない時に庭で吹くと花の咲いた庭にシャボン玉が飛ぶのを眺めることができる。人に見られたらとても恥ずかしいのだけれど、シャボン玉が空に飛んでいく姿を見るのはとても綺麗で楽しい。


 思い出したらやりたくなったので千円リピートでシャボン玉セットを買った。

 なんの変哲もない、昔ながらの乳酸菌飲料の容器がややダイエットしたみたいな容器に入ったシャボン玉液と吹くやつのセット。


 液の蓋を取り、吹き口を液につける。この量が大切でつけすぎもつけなさすぎも良くない。


 深く息を吸う。吹き口を咥えた。ゆっくりと吐いた一吹きでたくさんのシャボン玉ができて空を舞う。とても綺麗な光景だ。


 ミミとキララにも渡して吹いてもらう。

「なんなのじゃこれは。水魔法と光魔法と風魔法の混合魔法か!?」

 と驚くキララが虹色に輝くシャボン玉を見つめる。いや、そんな高度そうな魔法では……


 こっちにはこの遊びはないのだろうか。

 ああ、あったとしても日本製のこのシャボン玉液の壊れなさ、連続シャボン玉排出性能はすごいからね。

 飛んでいくシャボン玉を追いかけて軽やかにキララが駆ける。

 そういえば、何故かシャボン玉って追いかけたくなる。


「でっかいのできた!」

 ミミはどれだけ大きいシャボン玉を作れるかに夢中になっている。

 あまり大きくしようとすると液をたくさんつけることになるので下向きに吹く方が有利だが、玉がのびちゃうんだよね。液が多いと破裂した時の飛沫も多く、

「きゃっ!」

 かかったのか、驚いている。弾けるようにミミが笑う。


 次々と作りだされるシャボン玉。最初は虹色だったシャボン玉が、液が薄くなるほどに虹色が薄くなっていき、最後にはモノクロみたいなシャボン玉ができる。

 ゆっくりと一定の速度で息を吐くと同じ大きさのシャボン玉が次々できるのが楽しい。


 ふわりふわりと漂ったシャボン玉が、だんだん薄くなっていき、シュワッと消滅する。物にあたって破裂するのとは違っている。空中をただよいながらだんだんと薄くうすーくとその存在感を弱めていくシャボン玉はなにやらおもむきがありすぎて、何かのまじないのようだ。


 世界を映すシャボン玉が消える時に、もしかしたらとてもとても短命な世界が一つ消えているのかもしれない。



 このシャボン玉液を作っているのは確か福岡の会社だ。


 昔、テレビのドキュメント番組かなにかで見たのだけれど、震災の時に、このシャボン玉を被災地に送ったことがあるそうだ。


 私の記憶だと、驚くことに送った相手はただの一般人。その人はなにかの理由でそのシャボン玉液を取り寄せをした。その人の住所を見て被災地だとわかったシャボン玉会社の人が「もしよければ配ってくれないか」と多数のシャボン玉セットをその人に送ったらしい。


 その人は避難所にそのシャボン玉液を、配った。


 シャボン玉遊びをする時は外だ。そして雨の日にはしない。


 ほぼ晴れた日の野外で飛んでいくシャボン玉を、空を、眺めることになる。

 子どもたちはそのシャボン玉を見て笑うだろう。


 それがどれだけ気持ちを楽にしてくれたことだろう。



 こんなに簡単なことなのに。

 下を向かず、ただ空を見上げることは普段の生活ではとても難しい。

 シャボン玉を吹くと、そのことを思い出す。


 一日一羽以上空を飛ぶ鳥を見つけることをルーティンにしている都会の社長さんの話も聞いたことがある気がするが、田舎だと玄関開けたら達成してしまうので、あまり心に残っていない。


 まあ、なんにせよ。空を見上げるのなんだか良い。

 あと、多分、シャボン玉を吹くと深呼吸をすることになるのも良い気がする。

 深く吸ってゆっくり一定に息を吐くから。


 そして、青空を眺めてちょっと感動する。

 飛蚊症も治っている!

 若返りを感じる。


 病気で一時つらい思いをしただろう子どもたちに、私もシャボン玉液を贈れたらいいのだけど。

 吹き口はストロー状の物があればいいから、麦わらでもいけるかな。

 量が必要だと、液が問題だけど、自作したこと、あった気がする。壊れにくくするためにはお砂糖を入れるんだったかな。食器用洗剤を渡しちゃうことになるのは問題かなぁ。遊び道具だからそんなに問題にならないと思うんだけど。


 今度ルーナが来たら、ルーナにも遊んでみてほしいな。ジュドさんが吹いてくれるかは未知数だけど、ルーナが誘えば吹いてくれるだろう。


 シャボン玉液で手をベトベトにしながら笑顔で遊ぶ二人を見ながら思う。


 いつか弾け飛ぶものだったとしても、確かにここにあるのだから、これが幸いというものだ、と。


 とりあえず、遊び疲れたら手を洗おうか。そしておやつを食べよう。

このお話、書きかけでずっと置いてあったのですが、

今記憶を頼りに調べたら2025年6月8日 日曜 0:55 -1:30 長崎国際テレビ1で作中で触れたドキュメント番組をやるみたいなのです。


発見らくちゃく!「“シャボン玉に願いを…”東北と福岡を結んだ絆SP」


調べてびっくりしたので、放映前に投稿します。



コメントで教えていただいたのですが、

アマプラで見れたり、TVerで1週間後、多分2025年6月15日から見れたりするみたいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
話が逸れますが、サトウキビが増殖しやすい季節になってきましたね。 なーんとなく、キララとミミちゃん達が張り切って凄い事やらかしそうですよね。 今の時期栽培したい野菜だったらトマトとかも、ソースに出来…
調べてみたらTVerでも1週間遅れで見られる様です。
シャボン玉の番組、アマゾンプライムビデオで見たことがあります。今も見られるようですよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ