84 小話 なつかしのアイス
今日は暑い! とても暑い。
ムシムシしている。
「おめめが回る……」
暑さに弱いのかミミがくったりしている。
トカゲ姿よりは人の姿の方が楽みたいだ。
大丈夫? おひさまにあたって干からびたりしない?
と、ちょっとトラウマが刺激される。
なんだろうね。気温の急な変動はつらいよね。
キララはそこまでこたえてはいないようだけれど、谷間の汗が不快なようだ。
「汗かくんだ?」
と聞くと、
「気孔みたいなものじゃ」
とのこと。なる、ほど?
暑いときには冷たいものが食べたい。冷たいものを食べるとその時だけ涼しくなるから。
そして、今こそ私の千円リピートが大活躍する時なのではないか?
というのも、昔のアイスは安かったのだ。
思い返すと、ソーダアイスで有名な齧る音のアイスは昔は50円だった。
さらに、今は多分もうない、二本にパキンと割るタイプのソーダソーダという氷菓。あれも50円で買えていたはずだ。
ついでに、ソーダソーダによく似たアイスで、多分ローカルなアイスだったんだろうけど、30円で買えたソーダアイスもあった。
ソーダアイスで検索すると30円の履歴があったので、多分これだと思う。
千円リピートで購入するとパッケージにイソップ寓話の酸っぱい葡萄の話が書いてある。狐と葡萄の絵をみて、ああ、これだ、と懐かしく思う。
「ミミ、キララこれをパッキンするから食べて」
袋の上からパキンと折る。これ系、袋から出してからだとうまく割れなかったりする。
そして、割れた時にどっちに真ん中の部分がより多くつくかによって、二人で食べる時にもめたりする。
今回は私権限で、真ん中の多い方をミミに、少ない方をキララに渡した。
青いソーダバーを力なく口に含んだミミが、
「冷たい! 美味しい!」
と一気に復活した。シャリッと割れるのが楽しくて美味しいらしい。
キララも、
「汗が引くのう」
と目を細めて堪能している。
パッキンと折ったことで、私が思い出したのはパッキンアイスだ。チューチューとも言うし、他にも地域で呼び名が違うらしい。
これまた折る時にちゃんと折れなくて片方が盃みたいになってしまう、あれだ。
ねじ切る方法もあるんだけど、それはそれでねじねじしたところがもさもさっと口の中にあたるのでちょっと不愉快になる。
パッキンアイス食べたいけれど、あれは袋入りの常温で買って冷凍するやつだから、冷凍状態を買った記憶がないように思う。残念。
パッキンアイスは折り曲げた後は自立してくれない。分け合う人がいない時に、半分に折った片方をソファーの隙間に挟んだり、どこかに立てかけて置いておいたりする。そして、忘れてしまってアリさんが来たりして悲鳴を上げたことを思い出す。あれは危険な食べ物だ。
私も何かアイスを食べたい。何を食べようか。
安いアイスと言えば、野球用語のついたバニラアイスがあった気がする。これまた30円くらいで買えた記憶なので、検索してみる。
あった!
やっぱり30円だ。銀紙で包まれた四角いアイス。
懐かしく思いながら買ってみた。
甘いミルクの味が口内に広がる。
あああ、美味しい!
「食べちゃった……」
ソーダアイスを食べ終わって悲しそうな顔になっているミミに、何か他のアイスを出してあげよう。
あ、分け合えるやつ、思い出した。
検索して出てきたアイスを買って、懐かしく見る。
袋の中に棒に刺さったシャーベットアイスが5本入っている。チューリップみたいな一口アイスが花束のようになった氷菓だ。とても美味しいのだ。
私は一本でいいな。
「二本ずつ、食べて」
と言う。
「何色がおいしいのかな?」
「わらわはピンクが良い!」
と相談しながら分けている。
うん、多分、味はそんなに変わらないと思う。安いから無果汁だろうし。
それから、メロンやみかんの形をした容器に入ったアイスや、水風船みたいになっていて先を破って吸うバニラアイスなど、懐かしのアイスを堪能した。
あんまり食べすぎると、今度は頭が痛くなったり、お腹を壊すから、今日はこの辺で勘弁してあげよう。
「美味しかったー!」
ミミも復活して元気になってくれたからね。
昔のアイス、出すと霜がいっぱいついていたりしてとても懐かしかった。
昔の冷凍庫、霜がすごくて削って遊んでいた。削らないとアイスが取れなかったから。
アイスを買うよりロックアイスを買う方が安いけれど、かき氷機は買った記憶がないのが残念だ。
どこかで作ってもらえないかな。
かき氷に梅シロップをかけたやつ、とても好きだったのだけど。
多分、ミミの夏バテに良いと思うのだけどなぁ。