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72 マチルダさんへの貢物 3 もうこのまま帰ってもいいのではないか

今回も虫回です。いっぱい出ます。


苦手な方は飛ばしてください。

 森の中を進み、多分この辺りがマチルダさんの言っていた異常発生しているあたりだろうという場所にたどり着く。


 なるほど、いる。


 でっかい虫が、まあそのあの虫そっくりででかいやつが木の幹に張り付いていたり、もぞもぞと落ち葉のあたりを這っている。


 でかいので見つけやすいのは良いところだ。この距離で気づけると、まだ向こうから警戒されていないのか、逃げようとしたりこちらに飛びかかってくる様子はない。


 ということは、1円分の殺虫剤を虫のあたりにふわっと出せば。


 あ、なんかすごい。


 えっと、その。日本の殺虫剤は良く効くのか。それともこの世界には当然ながら殺虫成分への耐性を持った虫がいないからか。


 狙っていた、その虫、もうGでいいっか。狙っていたG以外の近くにいたGも巻き添えでぼとぼと落ちた。そしてすぐに動きを止めた。


 これ、適化スキルによる私の無意識での能力追加も発生している?


 そりゃ虫と言えば殺虫剤だし、Gにはこの殺虫剤とても良く効くと思っている。

 それにしてもすごい効き目だ。


 というか、ここまですごい効果だと、なんというか森の環境破壊も気になってしまう。他の昆虫にも悪影響が出そうだ。でもこのGほんといっぱいいるから、駆除は、それなりにすべきだと思う。


「キララ、大丈夫そう?」

 あと、心配していたのがこれだ。ミミを連れてこなかった理由でもある。


「最初に言ったであろう。わらわの本体はあの樹じゃ。問題ない。それにわらわが見た感じ、多少かかっても植物には影響なさそうじゃ」


「気分が悪くなったり、髪の色が変わったりとかは?」


「大丈夫じゃ」


 良かった。キララは大丈夫そうだ。森の木もキララに聞いた感じ大丈夫っぽい。


 庭にくるスズメバチに殺虫剤をかける時にどうしても庭木にかかることがあって、その度に大丈夫かなって心配になっていたのだ。


 多分、スプレーに含まれる油分とか、あと冷たくなるのが植物には悪いんじゃないかと思うんだよね。そこらへんも適化してくれているのだろうか。



 となると、やはり問題としては虫を虐殺してしまうことなのだけど、これについてはある程度仕方ないと割り切るしかない、だろう。

 森は広いし、一部で虐殺しても多分他からまた流入してくるだろうから……


 ということで、できる限り、見つけ次第Gを虐殺していく。


 今ほどこの千円リピートの、視線が通っていれば出せる能力に感謝したことはない。


 視線が通っていれば遠くから、向こうに気づかれる前に仕留められる。


 そして、キララがすごいのだ。


「結界じゃ!」

 と張ってくれた結界。Gが突撃してきても跳ね返してくれる。

 いくら遠距離攻撃が可能とはいえ、こっちに向かって飛びかかられることもある。その度にぎゃーっと声をあげている。あげているのだけれど直接張り付かれることがないというのがこれほど安心感があるとは。キララはすごい。素敵。


 そして、討伐部位なのだけど、このヒゲを集める作業が地味につらい。

 あと、魔石があるにしてもこれを解体したくない。解体しても魔石がなかった時のダメージがでかいのにないことの方が圧倒的に多いのだ。もう魔石は捨てよう。無理だ。


 なるほど、この討伐依頼に人気がないわけだ……


 つくづく納得した。


 そうして、キララとGを倒して回っていたのだけれど。




「おかしいのう」


 倒しても倒しても、湧き出るようにいつの間にかいる。


 なにこれ? どこから来ているのだ。


「ん、かすかじゃが、あっちから妙な気配じゃ」

 と鼻をひくつかせたキララが言う。気配って匂うの?


 えっとそれは、その、なんだか厄介ごとの予感というやつ?


「あっちじゃ」

 確信を持ってとある方向を示すキララ。


「それって、確認、しなきゃ、駄目だよね……」

 すごく行きたくない気はするけれど、何がどうなっているのかの確認は必要だろう。


 キララの誘導について行く。確かに、行くに従ってGが多くなっている。殺虫剤大活躍で大殺戮だ……


 その発生源は、ぽかっと開いた小さめの穴だった。そこからGが這い出てきている。


「何この穴……」


 これが、巣というやつなのだろうか。なんだかこう嫌な感じがするのだけれど。


 これ、殺虫剤をこの穴からプシューっとしてよいものだろうか。


 考えていると、同じく穴を観察していたキララが言う。

「できかけのダンジョンじゃ……」


 ちょいとキララさん、詳しく説明をお願いしたい。


「どういう意味なのか、そこ詳しく!」

 ダンジョンって何? っていうかあるの? ダンジョン。


「わらわは幼いからの。詳しくは知らぬ。あるのは共有の知識じゃ。んんー説明が難しいのじゃ」


 そこをなんとか。なんとかなだめすかして聞くと、聖樹ネットワークみたいな感じの繋がりが各地聖樹にはあるらしい。なにそれ初耳。


 なにやら共通のサーバーのようなものがあって、そこに蓄えられた知識が必要な時に流れてくるらしい。自動的にダウンロードされる? のか。


 ちなみに、キララからは「ルオクドすっごく美味しい」という知識がアップロードされているらしい。そんな無駄知識が……


 よくわからないが、この穴の中はダンジョン化しかかっているらしい。

 そしてこの穴の中、のすぐそこにたまたまGの巣があるのだろうと。


 できかけのダンジョンはダンジョン空間と通常空間との境がまだあやふやなので発生した魔物の出入りが可能なのだそうだ。

 ちなみにちゃんとしたダンジョンになれば空間が分かれて出てこなくなるらしい。


 初期ダンジョンであれば沸いている雑魚モンスターを間引けばダンジョン化も止まることが多いとのこと。つまりこのGを何とかすればよい。多分。



 というわけで、これはもうあれを仕掛けることにした。


 燻煙殺虫剤バルフォー! 煙がもくもく出るタイプのあれだ。履歴をあさると253円のがあったのでとりあえずこれでよかろう。


「キララ、結界でこの穴をふさぐことって可能かな?」

 穴が開いたそのままでやると、ここから噴き出すように出てくる可能性が、ある。

 それはちょっと……


「隙間なく張るのじゃ。見たくないから色も付けるのじゃ」

 どうなるかわかっているのだろう。重々しくキララが結界をちゃんと張ってくれると言う。


 ということで、一旦穴付近に殺虫剤をふわっと出して出てくるGをしとめて空間を確保してから置き型の燻煙殺虫剤を仕掛ける。

 もくもくと煙があがってきたところでキララに強固な結界でみっちりすきまなく穴をふさいでもらう。


 真っ黒い結界に何かがコツンと当たる音がする気がするけど私は何も見えてないし聞いていない。でも思ったより音が少ないな。これもしかしてものすごい効果でほぼ瞬殺しているのでは?



 さて、一時間くらいはかかるだろうから、どうしようかね。

 いや、これ、確認するの怖いからもうそのまま帰っちゃってもいいかな?


 いいよね!


 そんで、

 明日、片付けに森に来てくれるかな?


 いいともー!

 

 ということにしよう。

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― 新着の感想 ―
沈黙の春を読んだことあるが、農薬は最初なんて素晴らしいでバンバン使われて、、、だったからなあ。最近は蜂さんが大変らしいし。まあ、殺虫剤適度にで!
口に入って来なければ、別に? 証明に必要なら、丸ごと持って行けば良いのに。途中まではゴミ袋で部屋に押し込んで。
いいともー(笑)
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