69 小話 アメーの思い出
カレーについて語っているだけの小話です。
カレーパンを食べたせいで、カレーの思い出が色々とよみがえってしまった。
マーサさんのカレーはとてもすごく美味しいのだけど、うちのいつものカレーも食べたくなってしまった。
学生の時に食べていた牛丼も美味しい木ハム屋のカレー、友達と行ったカレーバイキングで食べたどこを探してもエビの姿はないのに味が濃厚にエビの海鮮カレー、焼肉屋さんのまかないの良い肉の端っこがこれでもかとぶち込まれたカレー、どれも違ってどれも良い。
ちょっとカレーについて語らせていただきたい。
声に出して語りたい!
相手がいないと不審人物になりそうなので、キララとミミに相槌をお願いした。
「ごめんだけど、今からちょっと早口で語るけど、適当に『うんうん』とか『そうなんだー』って言ってくれる?」
「わかったのじゃ」
『うんうん』
よし、行くぞ。
「まず、うちのカレーはちょっと高級なカレーなんだよね。なぜかというとルーが高い。カレーのルーって安いやつで安かった時だと一箱100円を切るくらいで買えた記憶。
しかし、うちで使っていたカレールーは安い時でも248円くらいだったの。
今だと安くても300円台、税込みだと400円を超える。怖い。びっくりする。でももううちではそのカレールーじゃなきゃだめ……
ちょっと、かなりお高い。その分ブイヨン? なんだか出汁みたいなやつが別添えで入っていてそれを入れるとうま味アップなんだよ。
これがまあ、めちゃくちゃ美味しくできる。香りがなんだか違うのよ。
材料が適当でも美味しいんだけど、材料に凝るとまたうまい。お肉をね、ちょっと高級なお肉にするの。そうするとめちゃくちゃ美味しくなる。
なるんだけど高級肉をカレーに投入するたびに、どこかで見た知らない人の『焼いて塩ふっただけで肉のうまみを味わえる良い肉を、すき焼きなどの濃い味付けで食べる人、信じられない!』っていう書き込みを思い出しちゃう。
うちでは高級牛肉カレーに入れちゃいますけど!? って思う。
そういえば、カレーを一番美味しく作るには、パッケージをよく見て、パッケージに書いてある材料で書いてある通りに作ると良いらしいよ。
だけど、人はカレーを作る時に、自分なりのアレンジを加えたいと思うものだよね。そういうものだと思うの。
いろいろあるよね。コーヒーを入れてみたり、チョコレートをひとかけ入れてみたり、にんにくをすりおろして入れるとか、リンゴをすりおろして入れるとか、はちみつを足すとか。いろいろある。
あ、はちみつで思い出したのだけど、学生時代に友人がカレーをね、作ってくれようとしたの。
その時に仕上げにはちみつを入れたわけなんだけど、どばって、はちみつがどばって入っちゃったの」
「……これ、どこで『うんうん』って言うんじゃ?……」
「……むーり、だよね……」
「そのカレーを味見した友人がおもむろに首を振り、『すまない。これは食べさせることはできない』っていうのよね。
こっちはお腹を空かせて出来上がるのを待っていたというのに。
おなかが減ってるから『いいからよこせ』って言うのに『ダメ、これはもうカレーじゃなくてアメーだ!』とか言うわけよ。
思わず鍋に手を伸ばしても、鍋を持ったまま逃げられてね。そのままコタツの周りを二人でくるくるして、面白くなって大笑いしちゃった。
最終的にはなんとか食べさせてもらったのだけど、あれほど甘いカレーを食べたのは初めてだったし、あれを超えるアメーにはいまだ出会えてないの」
「ここじゃ!」
『「うんうん!!」』
「カレーと言えば給食の思い出もあるよね。給食のカレーはすっごく美味しい。なんだろうね、あのうまさ。異常に美味い。
ばっかん? しょっかん?なんだっけあのスープ類が入っていたでっかいばけつみたいな入れ物。あれにカレーが入っていて、開けるといい匂いがするわけですよ。
その給食のカレーの思い出で忘れられないのが、小学校、何年生の時だったかな。
多分四年生くらいの時、給食当番の子があの銀色の容器にカレーを慎重に、足らないことがないようにでもあまり過ぎないように注いでいたら、なんだっけあのすくうやつ、お玉? にひっかかるものがあったのね。よくよく見てみたその子はおどろいた。『ハンバーグが入ってる!?』って。
給食のカレーなんて具なんてあまり入ってなくて玉ねぎと人参が主だったからみんな驚いて。
みんなでどうするか相談して、その一個しかないハンバーグは先生にあげよう! ってなって先生の器に盛りつけたのね。
先生も大感激。『もしかしたらカレーの出汁を取るために入れられた特別なハンバーグかもしれないね。それを僕にくれるなんて、君たちはなんていい子たちなんだ』って言っていた」
『「そ、そうな」』
「でね。おもむろに先生がそのハンバーグを食べようと箸を入れたら、パカって割れたそれ、カレー粉の塊だったの。
その塊が入っていたことにより周辺のカレーの辛みが増していたのか、その前の感激のせいか、先生はちょっと泣きながらそのカレーを食べてた。
ちょっと感激屋のおもしろい良い先生だったなぁ」
『「んだー」』
「ふう、すっきりした。ありがとう!」
「ど、どういたしまして、なのじゃ……」
語り終えて、ほんとすっきりした。カレーっていろいろな思い出があるよね。あ、また思い出したことがある。あるんだけど。どうもキララもミミもなぜかお疲れのようだ。
ミミが細めていた目を開き、きゅるりんと可愛い顔をして言う。
『今日の晩御飯はカレーで決まりだね!』
と。
いやいや、ミミさんや、私の腹筋そんなルーみたいにバッキバキじゃないから……
てか、どうしてそんなちょいマニアックなマッスル掛け声を知っているのだ。私の知識をあさっているのか?
でも、作ろうか。
ルーちょっとお高いけどいつものうちのカレーを。
ちゃんと甘口で作るよ。キララにも食べられるように。
はちみつは、うん、キララのやつにたっぷり入れてあげよう。
きっとアメーみたいに甘くなるよ。
ルーが溶け残らないように注意しなきゃね……
多分カレーって思い出と結びつきやすいんですよね
ストーリーに関係ない語り小話は、作者がバタバタしている時に作成されております……