63 梅仕事 下 じっくり時間をかけて熟成したら美味しくなるよね
※注 作中に□ビン×ンクルーソーのネタバレがあります。まだ読んだことがない方でネタバレ絶対ダメ! って方は読まないようにしてください。
梅ジャムはとてもとても美味しくできた。梅ジャム、さわやかな梅の香りとちょっと酸味があるところが良いよね。
「美味しいのじゃ!」
キララが、梅ジャムを気に入って容器を抱え込んでいる。共食いだけど大丈夫みたいだね。でも食べすぎは良くないと思う。それ、キララ専用にしていいけど食べきったらしばらく次は渡さないよ?
しばらくしてからできた梅シロップも甘くてすっぱくてとても美味しい。梅のエキスたっぷりである。水で割ってもおいしいし。炭酸で割るとこれまた美味い。夏にかき氷にかけて食べるのもおいしいよね。
「これ、好き」
と、梅ジュースをこくりこくりと大事に飲んでいるミミが可愛い。
美味しいよねー。
その後、完熟梅で梅干しも漬けた。完熟梅のシロップも作った。完熟梅のジャムも作った。完熟梅の匂いが最高に良い。青梅も完熟梅も大好き。
ミミもキララも私も、もう熟練の竹串さばきでへたを取ったし、洗ったし、水けを拭いた。
お店でも出すのかってくらい作ってしまった。だってそこに梅があるから。
梅ジャムはほんとうにいろんな種類ができてしまった。梅から作る梅ジャムはもちろんだけど、梅シロップの梅や梅エキスづくりで絞った後の梅の再利用梅ジャム。これはこれでちょっとずつ風味が違っていて、みんな違ってみんな良い!
種を果肉から取り出すのが面倒なんだけど、その面倒さに報いてくれる美味しさだ。
再利用の梅ジャムはちょっと色がね、色が悪いけれど味は最高に美味しいのである。
酸味や、やや苦みが残るものもあったけれど、それもまた個性があって良い。
自重などしなかった。
梅ジャム大好き。パンにたっぷり塗って食べるこの幸せ。梅ジャム、白いパンにももちろん合うんだけど、酸味があるライ麦パンとの相性もとても良い。
ヨーグルトに入れて食べるのも好きなので、千円リピートでヨーグルトを買って入れて食べてしまった。甘酸っぱい。美味しい。至福!
新鮮な牛乳が手に入るなら、ヨーグルトを種菌に入れれば増やせるのかなぁ。やったことないからちょっと不安がある。手作りヨーグルトメーカーも流行ったけれど、これ系は衛生管理が難しいよね。
パン作りにはまって凝りだすと、酵母を起こすことに手を出す。
私も手を出したのだけど、レーズンやりんごやいちごやバジルとか、いろいろやったのだけれど、衛生管理がちょっと不安になることがある。
この発酵してるやつ、本当に大丈夫な菌かな?
って。
いろいろやって、最終的にドライイーストに戻ってきた。ドライイーストはすごい。私はちょっとひねくれているので一般的な、赤とか青とか金があるやつではなくて、オランダの会社が開発したとかいう赤にちょい金のパッケージのドライイーストを使っていた。まあ、ほとんど買いやすくて使いやすい赤のあれと一緒なんだけど。こういうのは気分だよね。
ドライイースト、冷凍するとけっこう持つ。逆に言うと常温保存だと弱るのが早い。
ちょっと弱ったやつの方がハードなパンを長時間熟成で作るには良かったりしておもしろい。
パン、焼きたいなぁ。ピザ窯作ったらパンも焼けるかな。
一人の船乗りが遭難して無人島で何十年も生き抜くお話。小さいころに夢中で読んだあの話に、石の上で焚火をして温めてから焚火をよけてパンだねを置いてボウルか何かをかぶせて周りに熾火を置いてパンを焼くやつ、あったよね。
あ、ちょっと待って。鳥の餌。鳥の餌から麦!
あのお話でパンを作れたのって鳥の餌の袋からこぼれたやつから偶然麦が生えたからだった。
穀物の種、買ったことないと思っていたけど、買ったことあるのでは?
鶏の餌とかハムスターの餌とかに穀物混じっている?
そういえばひまわりの種、花の種として買うと高いけどハムスターの餌だととても安い。
猫草ってもしかしなくてもオートミールな燕麦?
お米に混ぜて炊くタイプの雑穀米の雑穀も、もしかして育てられなくもない?
そう考えていくと、もしかしなくても豆類ってあれは種ではないのか。
大豆って基本F1品種ではない、と聞いたことがある。F1品種、交配して親の良いところどりをした雑種でないということは、原種だということだ。つまり種としてまいたら同じ豆が採れる、はず。
大豆、黒豆、金時豆、小豆、ひよこ豆、レンズ豆、とりあえず買ったことがある豆ってこれくらい?
落ち着いたら畑を広げて、ちょっと蒔いてみるのも良いかもしれない。
そうして梅仕事にいそしんで、できあがったあれこれは、多分どうも、なんだかすごいことになってしまったようなのだ。
しかし、私は適化スキルのおかげで基本体調は良好だし、聖樹なキララが食べても、魔物なミミが食べても、美味しいね、美味しいねとは言った。けど、そこまでびっくりするほどの効能はなかったのだ。というか、ないように見えたというか……
疲れがふっとんだり、元気が出たり、お肌が綺麗になったりはそりゃあした。
私の若返りが加速した気もする。
だけどこう、心配していたほど劇的な効果はないように見えたのである。
お高い栄養ドリンク、ユンナグルエンペラーを飲んだくらいな感じ?
十分すごいのだけど、とても元気になるのだけど。
これならまあ、身内で食べる分には大丈夫じゃないかなって安心して、そして熟成させた方がおいしいから梅酒やらなにやら、ほとんどをしまい込んだのである。
あ、忘れてた。このたくさんの梅仕事の成果をどこに置いておこうかと悩んでいたら、ミミが床下収納を掘ってくれたのだ。
もともと小屋の土間のところに板が渡してあって、その板をよけたらイモ壺みたいになっていた。いもつぼ、穴を掘って、おがくずとかもみ殻でイモを保存するあれだ。
友達のおばあちゃんの家にあった! そこからイモを取ってきて、友人のお父さんが一斗缶で焼き芋にしてくれて食べていた。美味しかったなぁ。記憶だとたまに混じってた人参みたいに中がオレンジのサツマイモが一番美味しかった。
そのイモ壺をミミが掘ってほってめちゃくちゃ拡張して部屋を作ってくれた。だから、うちの保存庫はすごい。広い。
掘った土を利用して、壁を補強したり、部屋を増築もしてくれた。
ミミすごい。ナイスバルクだ。
その広い保存庫に保存容器を並べて置いたのだ。出来立ても良いけど、年を経た梅酒美味しいよね。
地下なのでばっちり冷暗所である。じっくり熟成するが良い!
梅仕事をしていたら、びわの実も成りだしたので、これも食べるよね。ジャムにするよねぇ。お酒に漬けるよね。
びわの葉茶も作ろう。
そんなこんなで、梅仕事をしてみっちり溜め込んだ。
それら、梅仕事の成果が後になってどういうことになるかなんて考えもせずに……
ちょっと作者も忘れかけていたのですが、この畑、枇杷の木と柿の木が生えています。
なんかどうにも、書いていたら、なし崩し的に第二部から出てくるはずの人は出てくるし、
キーになるものができてしまうしで、構成どうしたらいいのかわからないのですが、
もう好き勝手に書こうと思います。