6 冒険者ギルド登録です
「サキ、行こうか」
話がついた門番にうながされる。
「ありがとう。えっと…」
名前って聞いていいものか。
「ああ、バーンだ。付いてきてくれ」
「バーンさん、冒険者ギルドとは?」
「バーンでいい。あー、身分証がない場合に基本的に登録するところだ。冒険者とついているが職業斡旋所に近い。商業ギルドや錬金術ギルドに登録したら抜ける事が多いな」
聞いてみると、冒険者ギルドは国営で、他のギルドに入っていないものが入るギルドらしい。最低限の身分証として使える。いろいろな仕事を紹介していて、その中に魔物退治とかの冒険者仕事もあると。
多分あれですね。保険証のシステムみたいな感じなんだろう。会社の保険を抜けたら国保に入って、いつでも何らかの保険に入った状態にしとけ、みたいな。
きちんとした街に入るには身分証が必要で、山村だと必要ない。村育ちだと持ってない人もいるのでたまに登録業務につきあうことがあるそうだ。
めったにないことだが、冒険者ギルドで登録できないとなると門の外に出さないといけないから登録できるまでは確認が必要だと。
あの街道は山村に通じる道で普段からあまり人通りはないらしい。道理で観察しようにも人が通る気配を感じなかったわけだ。
話を聞いているうちに冒険者ギルドについた。
バーンさんに看板を示される。
盾に剣が交差しているとてもわかりやすいマークが描かれていた。
バーンさんの後についてドアをくぐり、いくつかある受付の一つに向かう。
「バーンさん。いらっしゃいませ」
受付にいたのは落ち着いた仕事ができそうな女性だ。まとめ髪から一筋垂らした髪がお辞儀に合わせて揺れた。
「こっちのサキに説明と登録を頼む。身分証はあるが読めない」
紹介されて受付に近づく。受付の女性に目で促されたので椅子に座る。
「わかりました。今回担当させていただくマチルダです。こちらは冒険者ギルドです。登録者に冒険者カードを発行し、仕事の斡旋をしております」
マチルダさんの説明を聞く。
話を聞く感じ、バーンさんに聞いていた通りハローワークに近い。
紹介する仕事が冒険者業務や長期就職だけでなく、日雇いや、便利屋みたいな業務に及んでいる感じ。
登録に料金はかからない。
ランクによって受けられる仕事と料金体系。
依頼失敗時のペナルティ。
採集や討伐の素材等の買取や販売をしていること。
提携の宿屋や道具屋での割引制度。
他にもいろいろ説明されたが、流れるような説明に全部飲み込めたかというと……
「以上が説明になります。ご登録に身分証をお預かりしても?」
にっこりと笑うマチルダさんに運転免許証を渡す。
水晶道具にピピッと読み込まれて、画面が出る。
ほんとなんで読めるのか不思議すぎる。画面に触れるとふわりと光った。
「確かに、御本人のカードです。登録情報はありますが、読めませんね。こちらのカードに情報追加はうちではできないようです。新たに冒険者カードを作成して、備考にこちらの情報を転記でよろしいでしょうか?」
「お願いしたい」
よくわからないけどそれで!
渡された書類の必要事項を埋めていく。
代筆も可能と言われたけれど、ゆっくりなら書けるので聞きながら書いていく。
使える魔法を書く欄がある。ここはどうしたら?
聞いたら、名前以外は空欄でも良いっぽくて、そんなんでいいのか?
と思ったけれど、どうも登録の目的は個人を特定する魔力を登録することとその魔力パターンを使った犯罪歴チェックらしい。
思えば保険証も免許証も、管理番号と名前と住所と生年月日くらいしか書いてないよね。
住所は冒険者の場合不定の人が多いだろうし、生年月日も不明な人、多いよね。そう考えると納得。
書いた書類をマチルダさんに渡し、カードが出来るのを待つ。
できたカードの右下にあるICチップそっくりなキラキラに指を当てて念を込める。
魔力登録できろー
ふわりと光ったカードにこれでいいのかとマチルダさんを見るとうなずかれたのでカードを渡す。
カードを水晶道具チェックに掛けられて、開いた画面にタッチ。
光と共にこちらの言語で書かれた情報が表れる。下の方に日本語の免許証情報もそのまま載っている。
「はい。犯罪者履歴照合反応なしです。これで登録させてもらいますね」
無事に登録できたらしい。ほっと肩の力が抜ける。
「よし! 登録できたな。確認できたんで俺の仕事はここまでだ」
「バーン、ありがとう」
とても助かった。
「大体門にいるから、何かあれば相談に来い」
バーンさんはそう言って手をひらひらさせながら出ていった。
余裕ができたらお礼に行こう。
バーンさんを見送ってマチルダさんに向きなおる。
「どういう仕事があるのか聞いても?」
登録してすぐの私でもできる日雇い仕事ってあるんでしょうか?
誤字報告ありがとうございました。助かります!
ほんと助かります。いっぱい誤字っていて恥ずかしい……