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59 ゴンパチのきんぴら





 冒険者ギルトの薬草採取依頼には葉っぱを取るものもあれば根っこを掘るものもある。


 掘るやつは大変だから避けていたのだけど。


 掘るのが得意な子がうちにはいるのではないか?

 とひらめいてしまった。


「森の中ならわらわに任せるが良い!」

 と言ってくれる子もいるので3人? で行くことにした。

 正直「森怖い! おうちにいる!」に、なりかけていたので助かる。


 くまさん怖い……








「はい。イタドーリ・ゴンパチ・タジヒ・タジイ・タンジ・サイタヅマ・サイタナ・サイシンゴ・スカンポ・イタンコ・イタズリ・スッポン・カッポン・イタンポ・ユタンコ・イタズイコの根塊採取依頼ですね。これで受付完了です」


 なんて???


 マチルダさんに告げられた、あまりに長い薬草名にびっくりする。

 学名でもそんなに長いことある??


 こんなの覚えるの無理では?



 どうやらとても有用な薬草で各地に生えているため、その土地土地で呼び名が違うのだそうだ。


 出身地がさまざまな冒険者に説明していったらこうなったらしい。そしてまだ増える予定があるらしい。それ、なんかもうみんな面白がってない?


 とりあえず、イタドーリだけ覚えておけばなんとかなるとのこと。


 だよね。そんな長い名前、覚えるの無理だよ。


 痛みを取ってくれるからイタドーリ。覚えやすくて良いというか、なんだか聞き覚えがある由来だし、見せてもらった見本を見るに、どう見ても虎杖(いたどり)である。

 この字、難読なのになぜか最近はすらすら読める人が多いよね。

 私は最初「こじょう」だと思っていた。 


 葉っぱも薬効があるけれど、採取依頼が出されるのは圧倒的に根っこである。


 日当たりの良い土手とか河原によく生えていて、森の側の川の辺りがおすすめ採取ポイントらしい。


「このイタドーリ、新芽や茎を食べても問題ない、ですよね?」

 マチルダさんに確認してみる。


 だってイタドリだよね? ゴンパチだよね?


 怪訝(けげん)な顔をしたマチルダさんに、

「飲用に使う薬草ですので、少量であれば食べても問題ないと思います。でも、大量摂取は、どうなんでしょう?」

 と言われてしまった。


 イタドリ食べないの?

 美味しいのに。


 薬草だけど毒草カテゴリ、というわけではなさそうだということがわかっただけでもいいかな。


 薬草と毒草、紙一重なところがあるから。


 よし、頑張って採取しよう。根っこと新芽の茎を!

 幸いにも昨日は雨だった。

 イタドリ取りには良い日取りだ。








 採取では想像以上にミミが無双した。


 掘り出すのが速い速い。しかもすごく綺麗に丁寧に掘ってくれる。

 すごいよ、ミミ。

 畑にごぼう植えてもいいかな?

 あれ、いつも掘るのに苦労するんだ。

「すごいよ、ミミ。キレてるね! 肩にショベルカーを乗せてるみたいだ!」

 褒めると掘る速さが増した。キレすぎている……


 私とキララで新芽をパキポキ折り取ってから掘ってもらっているのだけど、掘るのがあまりに速すぎてせかされてしまう。


『まーだ?』

 と。

 待って、まだそこに太いのが出てるから!


「ポキッと折れるのが気持ち良いのじゃ!」

 キララがご機嫌だ。

 だよね。このイタドリを折る時の、楽しさはやったことがない人には伝えづらい。


 パキッというかポキッというか、ポンっていうか。なんかそんな感じに折れる。


 楽しくてかなり大量に採ってしまった。

 雨上がりなのでよく伸びていたのだ。

 太くて長いやつを見つけるとすごくテンションが上がる。

 直径2cmくらいあると嬉しい。長さも30cmはないとねぇ。


 でも、下ごしらえがちと面倒だから今日はこのあたりで勘弁してあげよう。


 ミミの掘ってくれた根っこも、もうかなりな量だし。







「すごい量ですね。助かります。イタドーリ・ゴンパチ・スイバ・タジヒ・タジイ・タンジ・サイタヅマ・サイタナ・サイシンゴ・スカンポ・イタンコ・イタズリ・スッポン・カッポン・イタンポ・ユタンコ・イタズイコ・ハータナの根塊を確認させていただきました。これで依頼完了です」

「ありがとう」

 なんか名前が増えてる気がするけどもうよくわからない……







 さてと、とってきたイタドリを処理しよう。

 とりあえず、まずは潰す。皮はむく人もいるけど、私はものすごく太くなければそのままだ。


 かまどで湯を沸かして塩を入れて茹でる。


 茹で時間は1分くらいかな。2分も茹でると柔らかすぎになってしまう。


 茹でたら湯からすぐに上げて、桶に新しい水を入れてさらしておく。


 最低一晩はさらしておきたい。水を換えつつ一日くらいは置いておく。アクが多いからね。


 イタドリを生でそのままかじったり、砂糖をつけて食べるところもあるらしい。うちでは下処理をしてから、きんぴらか煮ものが定番料理だった。


 私はきんぴらが好き。


 春の味だ。


 翌日、水から出したイタドリを、3センチ幅くらいに切って、油で炒める。

 いつも大体一回に300gくらいを調理するのだけど、まあ量は適当だ。


 酒30g

 みりん35g

 を千円リピートで出して投入。

 多分みりんは水より軽かったはず。


 しばらく炒めてから、

 砂糖20g

 醤油35g

 を入れる。


 こういうのは適当で、味を見て足らなければ足していく。うちは甘めでちょい濃いめの味付けだ。


 煮汁が減るまで炒めたら最後にごま油を4g入れて、いりごまを2gくらいまぶして完成!


 異世界産イタドーリ・ゴンパチ・スイバなんちゃらのきんぴらだ。


 さて、食べよう。


 うん、おいしーい! これはイタドリだ。間違いない。


 生だと酸っぱいけど茹でて水にさらしておくと酸っぱさはほぼない。

 エグみもほとんど抜けている。さらしが足らないとちょっと歯にキシキシするんだよね。


 シャキシャキとした歯ごたえが良くて味も美味しい。

 なんでこれを食べないのだろう?


 美味しいね、美味しいね、とミミとキララにも大好評なのに。


「また取りに行くのじゃ!」

「また掘るよー」


 楽しかったからまた採取に行こうね。結構取りつくしてしまったからまた雨の後に行こう。



 たくさん採取したので、イタドーリのキンピラは、強引に皆に少量ずつおすそわけをさせてもらった。イタドーリだと言うと変な顔をされたけど、食べてもらうとかなり好評だったので、イタドーリを食べることがこっちでも広がればいいのに。


 でも、マーサさんやミリアさんに作り方を聞かれて困ったりした……


 酒とみりんと醤油って、どっかにないのかな。


 東の島国から輸入してくれていたりしないものか。


 でも、麹菌ってかなりチートで特殊なんだよなぁ。何故か毒素を作らない変異体なんでしょ、あれ。


 ゆくゆくは自作、すべきなのか。


 麹、買ったことは、ある、ね。

 塩麹が流行った時に確か買った。


 味噌作りは一回体験に行って仕込んだことがある、と思う。あんまり覚えてないけど。


 日本酒は作ったことがない。でも、作り方は部分部分は見たことある。

 どぶろくくらいなら作れるかなぁ。


 みりんの作り方は日本酒より謎だ。

 どうやってるんだろう。


 異世界で、知識チートできる人ってすごいよね。

 私は雑学はある方だと思うけど、具体的にどうしたらいいのかはよくわからない。

 全部ふわっとした知識だ。


 山菜を調理するくらいが精一杯である。

 ゴンパチのきんぴら本当に美味しい。しばらくはこの味を楽しみたい。

 いや、ほんと、食べない人にはそこら辺の草にしか見えないだろうけど美味しいので!


もしかしなくても、イタドリって食べない人の方が多いのでしょうか?

美味しいのでいざという時のために食べ方を覚えておくと何かの役に立つかもしれません……

ふきと筍と一緒に炊くのも美味しいです。



いつもいつも誤字脱字報告ありがとうございます。

ちまちま見直して直したところがまた間違っていたりして、本当に申し訳ありません。

いつも本当に助かっています。


時間がなくて返信できていませんが、感想もとても楽しく読ませていただいています。

ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
イタドリって、カッポンだったハズ。 子供の頃、道端に生えてるカッポン採って、その侭皮を剥いて食べてましたよ。 あれ、炒めるんだ。 生でしか食べたことありません(^^;;
 イタドリを最近聞いたのは、某健康食品?のCMでイタドリの成分を抽出し云々ってヤツ。わざわざ採ったりはしない私でも「いや、結構その辺に生えてるのでは? お金を出して買うなんて馬鹿々々しい」と思ってた。…
ああ、ショッパグサですか。 その名前の長さはスイバの呼称の多さが由来ですかね? いまでもショッパグサとか山菜系統はお爺ちゃんの家に寄った時に食べさせてもらってます
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