表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/125

46 大きくなぁれ

 畑に小松菜、大根、カブ、キャベツ等の種をまいて、水をやった。


 ミミが頑張ってくれたので、まだまだ植えるところはたくさんある。


 さて、次はどうしようかと考えているところにジュドさんとルーナが訪ねてきてくれた。


「サキさーん!」

 ジュドさんに片手抱っこされた笑顔のルーナ。

 手に小さなかごを大事そうに持っている。


「ルーナ」

 もう、出歩いて大丈夫なのだろうか?

 ジュドさんが連れてきたってことはきっと大丈夫なのだろう。


 降ろされたルーナが近寄ってきて、腕を精一杯伸ばしてこちらにかごを差し出した。

 かごの中にはお野菜がつめられている。


「どうしても新しく育った野菜を自分で届けると言ってな……」

 ジュドさんは苦笑している。


 そろそろ様子を見に行こうと思っていたけれど、待ちきれず来てくれたわけだね。


「ルーナ。ありがとう」

 しゃがみこんで視線を合わせて言う。

 これはルーナが食べるための大切なお野菜だ。だけど、自分が育てたお野菜を喜んでくれる人にも食べてもらいたい気持ちはよくわかる。なので、笑顔で受け取る。

 多分マーサさんが詰めてくれたのだろうからちゃんとルーナの分は確保されていると思う。


「どういたしまして」

 輝く笑顔のルーナがまぶしい。太陽の下で見るときらめく銀髪もまばゆい。猫耳の薄いピンクのところが日に透けて血管が見えるところがたまらない。なんというかお外で見るとまた可愛さが際立つね。

 ジュドさんも相変わらず顔が良い。ほんと美形な兄妹だ。


 正直、ルーナからお野菜をもらえたのは助かる。

 カエンばぁのところに行くにあたって、この野菜の種ですよって見本があった方が有利だと思うので。


 ん、なんだかジュドさんの視線が肩に……


「それは?」

 ジュドさんの細められた目がミミをターゲットロックオンしているようだ。


「トカゲのミミです!」

 翻訳さん、語尾とかは適当によろしく頼む。そしてトカゲ強調でよろしく。これはトカゲです。でぃすいずあとかげ。


 あ、でもトカゲってジュドさんの本能的な興味を引いてしまったりするのだろうか。


 ミミ、大人しくしててね。


「トカゲ?」

 少し怪しまれているような気がする、が。


「トカゲです!」

 押し切ろう。


「ルーナ。ルーナの体調が大丈夫だったら、この畝とあっちの畝に『大きくなぁれ』ってやってもらえるかな?」

 話題を変え、ルーナに聞きつつジュドさんに目線をやり了解を求める。


 ジュドさんがうなずいてくれたので保護者の了解は得られた。話もそらせた!


「うん!」

 力強くお返事したルーナは、ものすごく気合を入れて、手を大きく振り動かしながら、畑に声援を送ってくれた。


【大きくなぁれ!】


 その声を受けて、さっきまいたばかりの種が芽吹いた。そして早送りのようにゆっくりと本葉を広げていく。


 こりゃすごい。


 そして、

 育ったのはお野菜だけではなかった。



 ミミの衝撃のせいですっかり頭から抜けていたキラキラの木、改め、梅の木な花香実(はなかみ)が大きくなった。まあでもキラキラの木の方がわかりやすいね。

 そして、綺麗な花を咲かせた。八重で花弁がふりふりしていて中心にいくほどピンクがほんのり濃くなるとても可愛い花だ。


 ごめん、忘れてたよ……

 そういえば、いましたね……


「なんだか、取られたの……」

 ルーナがしょんぼりしている。



 ん?

 お野菜に送ったはずのルーナの緑魔法がキラキラの木に取られた、ということかな?


 ということは。


 この畑が緑魔法が効きづらかったのってキラキラの木が原因だったり?


 なんにせよ、ルーナをしょんぼりさせるとは、いけない木だ。話が分かるやつだと思っていたのに。


 文句を言ってやらねばと、木に近づくと梅の香がした。そういえばこの木、梅になる前はゴールデンな感じに輝いていたよね。


 連想して、梅割りが飲みたくなる。 あのクセのない甲類焼酎と本当は天の羽で作るやつが好みだ。するする飲めて旨いんだよなぁ。また今度残金がある時に飲もう。


 木の前に立つ。

 翻訳さんよろしく。こやつに話が通じるのはもう知っている。

 なんて呼びかければいいかな。ラベル名でいいのか?


花香実(はなかみ)さんや。あなた、ルーナが畑にかけた緑魔法を吸い取ったの?」

そのせいでルーナが落ち込んでいるんですけど!


『……わらわはお腹が空いていたのじゃ……』

 声が聞こえた。


 えっと、わらわと来たか……

 まあ、梅の精だとすると古風なしゃべり方は許容範囲、かな。


 そして、

 なんだか嫌な予感がするんだけど。


『わらわを目覚めさせたのはそちであろう? 責任をとってほしいのじゃ』


 なんですと!?

 記憶にございません!


 勝手に生えてきたよね???


 って、もしかして鶏糞?

 鶏糞が原因なのか?

 なら、鶏糞でこの木を埋めちゃえばいいのか?


 一瞬、鶏糞でこの木を埋め立ててなかったことにしたい気持ちになるが、多分そういうわけにはいかないだろうと理性が言う。


 突然、木に話しかけた私を、ジュドさんとルーナが心配そうに見守ってくれている気配がする……


 これ、声を出して話しかけるのとテレパシー的なやつだとどっちのがマシなんだろうか。

 とりあえず今は話しかけるしかないわけだけど。


「責任って言われても……」


 ほんと、何がどうなっているの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
某大きな自動車整備みたいな枯らし方してもいいんですよ?
主人公が問いかけたら、ググれカス!とかいう反抗的キャラも欲しいなあ。勿論強がりや、カッコイイを勘違いな微笑ましい流れで。
紅〇女が宿る謎の梅の木「鶏糞で埋め立てる?なんて怖い子…。」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ