44 ゴージャス中華
なにやらいろいろと気疲れしたので、なにか美味しいものを食べて復活したい。
とてもこう、身体がカロリーを求めている。
本当は、千円リピートは計画的に使うべきだとは思っているのだ。だけど、あんまりキチキチやり過ぎるのも良くないと思う。
日本でも、毎日毎日、値上がりがきつくてスーパーで買い物をする時に値段計算ばかりしていると気が滅入っていた。たまには美味しいコンビニスイーツが食べたいよね。それもまた高くなってるけど……
ということで、私は今ラーメンが食べたい! ジャンクで暴力的なカロリーを欲している。
ラーメンといえば、
うちの大学の学食には名物メニューがあった。
ゴージャス中華、通称ゴー中。
女子大にあるまじきボリュームのラーメンである。
麺は通常のラーメンの1.5倍。これは学食のおばちゃんの気分というか麺の分割のばらつきによって1.8倍くらいにまで膨れ上がることもある。
学生のためを思ってだろうか、もやしはマシマシ、ネギもたっぷり、チャーシューとかまぼことシナチクも入っていて、コーンもトッピングされている。
さらに、でかい唐揚げが2個、たまに3個のっているかなりなボリュームメニューだ。
これでお値段300円。
あまりの安さに食べた。めっちゃ食べた。毎昼食、これを食べるくらいの勢いで食べていた。女子大なのにこれがぶっちぎりで不動の人気メニューナンバーワンだったのはほんとちょっとどうかしている。
昼食時はいつも列ができていて、やばいくらいに並んでいた。ゴージャス中華専用レーンがあった気がする。その列をさばくおばちゃん達の動きもやばかった。
私の体はゴー中でできている。
そう言いたくなるくらい食べた思い出のメニューだ。
もう食べられない、いや、もしかしてまだあのメニューが学食で出続けている可能性はなくはないけれど、基本もう食べられないあの味。
思い出したら、たまらなくなって器を用意して、千円リピートで購入してしまった。
器からあふれそうなボリューミーなラーメン。
けっこう雑にゆでられて、がさっと入れられた麺はあまりほぐれておらずやや固まっているところもある。ラーメン店みたいに綺麗に入れられてはいない。でもそんなことはどうでもよい。
ずらっと並んだ購入履歴から適当にチョイスしたのだけど、この時は唐揚げが三個のっている時のやつのようだ。
唐揚げの皮の部分がカリッとなっていておいしそう。基本でかい唐揚げが二個トッピングなのだが、多分、ちょっと小さめだなとおばちゃんが思った時には三個投入されることがあるのだろう。
学生の時、あの学食で友達と話しながら食べたあのラーメンだ。
唐揚げの油と、ラーメンスープの油が合わさってかなりなこってり感がある。
それでもなぜかぺろりと食べられてしまう魔法のように美味しいラーメン。
夢中で食べ、スープをすする。
レンゲは出てこないので、底に沈んだコーンを割りばしで一粒ずつつまんで食べる。
なんかこう細かい麺の切れ端とかネギとか全部綺麗に食べたい気持ちになって探してしまう。
あと、表面の油をちょいちょいと箸でつついて大きな一個にするの、なんか好きでやってしまう。油の中に箸をつっこむとたまに油イン油みたいなのができるのも楽しい。
食べ物で遊んではいけないのはよくよくわかっているのだけど、だれしもそんなちょっとした食べ物へのマイ作法みたいなやつを持っているのではないか。
焼き魚は基本、頭を左に置くべきらしいと知っていても、私は右頭の方が食べやすいので左頭で出てくると仲間内で食べている時はひっくり返してしまう。
友人は、カレーを食べるのがすごくとても上手で、戦略を立ててごはんとルーを攻略していた。食べ終わった皿がごはんでぬぐわれて綺麗になっているのをいつもすごいなと思っていた。
手羽先を手を汚さず箸で器用に食べる子もいて、初めて見た時にはびっくりしたものだ。
懐かしい食べ物は懐かしい記憶を運んでくる。学食のあの席から窓越しに眺めた桜吹雪を思い出す。
もう食べられないはずのものが当時の値段で食べられてしまう千円リピート、最高。
お腹だけでなく、いろいろ満たされて、満腹の後の眠気が、すごい……
ちょっとお昼寝しよう。
牛になるとか言われても、この気持ち良い睡魔の誘惑には勝てない。
誰にでも思い出のあのラーメンってのがある気がするんですよね。




