38 小話 遠くにいる
これはいきなりの小話です。
前の話とまったく! 繋がっておりません!!
今夜の残額は112円だ。
さて。
ストレージの中で考える。
本来は備蓄食料を増やしたり、ブルーシートや銀色のうっすい緊急用の、あれ名前なんだったっけ?えまんじぇんしー?な毛布を買ったりするべきだと思う。
だが、私は酒を飲みたい。
今日はなぜかとても飲みたい気分である。
もともとそんなに飲む方ではない。嗜む程度というやつだ。
でもたまに飲みたい気分になる時がある。
112円で、飲めるお酒を考えようではないか。
まあ、飲むだけなら98円でチューハイを買った記憶があるからそれを買えば良い。でも今日はチューハイの気分ではない。
やすい酒、イ◯ンのトップ◯リュなウイスキーが思い浮かぶ。素晴らしいレビューを読んで、とてもとても味への興味はあったものの買ったことはない。
イ◯ンで買ったことがある安い酒。安い酒。
ズブ□ッカか。ズブ□ッカでええか。
今のお値段は知らないが、943円で買った記録がある。多分昔の、瓶の肩が丸いやつだろう。500mlで943円ということは、112円で60mlくらい飲めてしまう。ちょいと飲んで寝るにはいい感じだ。
あーでも冷やさないと飲みにくいよね。本当は冷凍庫に突っ込んでおきたいお酒だ。
なので用意したコップに2円分の氷と110円分のズブ□ッカを購入。
つまみはどうしようかな。
こないだ買っておいたこっちの黒パンでいっか。黒パンは保存がきくのが良い。
できるだけ薄くそいだ黒パンは酸味があって、噛めば噛むほど滋味深い。
かったいパン、嫌いじゃないのだ。顎は痛くなるけれど。チーズ載っけて焼くと美味いよねぇこの手のパン。
コップを回して早く冷えますようにと願う。もういいかな。
口に含むとふわっと桜餅みたいな香りが口内を抜けた。ついでに強いアルコール臭も。
あーこの味、懐かしい。昔通っていたバーでよく飲んだ思い出の酒だ。
その店では、瓶に1本刺さった香る草を、瓶が空くたびに別の空き瓶に移し替えていた。いつのまにか束のようになった草が入った空ビンが棚に並んでいたのだ。バイソングラスだったっけ? あの草。楊枝みたいに咥えたい気持ちになるやつ。
まだ中身が入っている瓶は冷凍庫に仕舞われていて、注いでもらうとキンキンに冷たくて舌触りがとろっとしていた。
その舌触りを思い出しながら飲むが、氷で冷やすだけではああはならない。アルコールもどぎつく感じる。
それでも黒パンの酸味とよく合う酒だ。旨い。
そういえば、ズブ□ッカをグレープフルーツジュースで割って、何かを足してもらったやつ、なぜかポカリ◯エットっぽい味がした気がする。
何を足してもらったんだったかなぁ。
一緒に飲んで、似てる似てると笑いあった友人の顔が浮かぶ。
そこまで日本に未練はないが、友人と離れてしまったことはそれなりにとてもさみしい。
ただ、自分にとって距離はあまり関係なく、友人は友人だし、亡くなった人も、ただ遠くにいて会えないだけだと思ってしまう。
会えないのはさみしいが、別に何も失ってはいないと思う。
おじいちゃんもおばあちゃんも両親も、早くにいってしまった友人も。この間訃報を聞いた恩師も。
遠くにいて会えないだけだろう。
見えない相手と乾杯をするようにコップを掲げてからちびちびと飲む。
喉を焼いて胃に落ちるアルコール。その流れにそって体内に熱がこもる様に力が満ちた気がした。
今日は、とてもよく眠れそうだと思った。
ちょっと続きが難産で。更新遅れます。
小話ってどうやって投稿すればいいんでしょうかね。
こんな続いている話のまっただなかに入れるものではない気がとてもします。