32 安い野菜の種
「多分。品種は違うと思うが」
飼料にしてるのは、多分もち米ではないんじゃないかな。
とうもろこしだって飼料用と普段食べてるやつは全然違うはず。
お米もいろいろある。酒米ってのもあったっけ?
とりあえず食べてみてくれといちご大福をすすめてみる。
「ふむ、旨い」
あ、ジュドさんの、一口食べてからが早いやつ。これは気に入ってくれたんだろう。
「とてももっちりしているのね。美味しいわ」
マーサさんは求肥を気に入ってくれたみたい。
「この白い粉は何かしら?」
求肥を扱いやすくするためにまぶしてある片栗粉かな。
片栗粉、通じるのかな。カタクリから採った粉って翻訳されるとちょっと意味が違うぞ。まあそこら辺はちゃんとしてくれると翻訳さんを信じているが、ちょっと表現は変えてみるか。
今まで無意識でしゃべっていたのに、ちょっと気になると気になってしまう。ん? あれ、なんか翻訳さんに妙な違和感がある。けどまあいっか。
「ジャガイモから作った粉だ」
そういえば、ジャガイモ論争? ジャガイモ警察? みたいなのを聞いたことある。
この世界にはジャガイモがあるみたいだけど、植生ってどうなっているんだろう。
「とうもろこしの粉とはまた違うのかしら」
おや、コーンスターチはあるのかな?
求肥を扱う時の粉、ほんとはコーンスターチの方がいいんだろうけど、片栗粉の方が家にあるから。
というか、コーンスターチ、買った記憶がない。いやまて、餅とり粉って名前で売ってるのがコーンスターチだったっけ?
記憶が曖昧だ。
「ジャガイモをすって水にさらすんだったかな……」
理科の実験か何かでやったような気がする。
わらび餅を作ろう!
みたいなやつ。
なぜそんな事を気にするのかと思ったら、ルーナがなんとか問題なく食べている主食。なるだけ白っぽいパンと、とうもろこしから作った白い粉をねって作った団子だったらしい。
なのでマーサさんは、ルーナが食べられそうなものに反応したのだろう。
ほんと、炭水化物で生きていたんだな。というか、不調を抱えながらもそれだけで生きてこられたって不思議すぎる。ルーナは確かに細くて小さいが、そこまでガリガリだったり病的ではないのだ。エルフの生態に関わることなんだろうか。謎は解けたと思ったけれど細かい謎はけっこう残っている。
まあ、そんなこんなで試食会は終った。
とりあえず、今後もルーナが自分でお野菜を育てられるように野菜の種をジュドさんに預けておこうと思う。
野菜の種を買うには、有名な2つの会社があるのだけれど、ちょっと変わった種や安い種が欲しい場合にたどり着く、知る人ぞ知るなところがあったりする。
今ちょっと名前が出てこない。あそこですよあそこ。
大阪の、元々は菊作りの会社らしいのだけど、今はちょっと値上がりしているのだけれど、昔は一袋50円で花や野菜の種を売ってくれていて、8袋だったかな、10袋だったかな。まとめて買うと送料すら無料という太っ腹なところ。
そう言われたら送料無料になるまで買いたくなるのが消費者の心というものだろう。
その履歴があるので、けっこういろいろな野菜の種が50円で買える。
ただ、安いのには理由があって、タネ袋に写真がなくて一律の紙袋だったり、たま〜に中身が間違っていたりする。本当にあったのだ、育ててみたら違うものが育ったことが!
コールラビとかのちょっとおもしろげなお野菜をためすにはいいのだけど、ね。でも安いからね。仕方ないよね。
100均でも2袋100円種が売っているけれど、あれより入っている量が多いのだ。
昔は今より量が多く入っていて、開けた時に、
これ絶対量らずに適当に入れたなっていうくらい書いてある内容量より多く入っていた。
ほんと、昔は安かったし、量が多かったなぁ。
畑が借りられたからと準備のために昨日の残額で買っておいた分を渡しておこう。
ブロッコリーとほうれん草とキャベツとニンジン位を育てれば、もうトマトはあるんだし、栄養的にはいい感じではなかろうか。
あ、ベビーリーフの種ってけっこう量が入っていて、野菜の種類が豊富だから種をより分けてまくのもあり、かも。
こっちの野菜の種ってどこで買うのか。やっぱり農業ギルドだろうか。
自家採種してる可能性、高いよなぁ。
今度リガルさんに聞いてみよう。
あの大きな鉢もそのまま中庭で野菜を育てるのに使えば良いと思う。
無駄にならなくて良かった。
マーサさんが食器を下げて洗ってくれている間に、千円リピートでクラフト紙を買って、切って種を包んでいく。また薬包みでいいかね。こっちの布袋だと種がこぼれる可能性があるし、出しにくいし。
野菜の名前を書いてっと。
もしかしてこのボールペンもこの世界だと売るとヤバいものなのかなぁ。
このペン先の小さいボールすごいよね。
100均だと10本入りが買えたりしたけれど。
ただ、10本入りはかなり品質がやばかった。受付に置いたら使いにくさにクレームの嵐だった。
すまん、だって受付のボールペンすぐ消えるから、とりあえず間に合わせに置いてみたんだよ。自腹で……
できあがったタネ袋をジュドさんに託し、また様子を見に来ることを約束して、ジュドさんの家を出た。
いえ、マーサさん、もう見送りはいいので、気にせず仕事してて。
とりあえず冒険者ギルドに顔を出してみる。
畑の荒起しは農業ギルドの職員が手の空いた時にやるという条件で格安にしてもらった。つまりいつ耕しておいてくれるかは不明だ。
それまでに準備をしたり、少しでも稼いだりしておきたい。
「あら、サキさん」
入っていくと目ざとく見つけてくれたマチルダさんに笑顔で呼ばれる。
ん? 何だろう
近寄ると、ちょっと声をひそめて、マチルダさんがいたずらっぽく言う。
「指名依頼ではないのですが、指名依頼っぽいものが入ってます」
なんですと?
全然話が進まなくて説明ばっかりで申し訳ないのですが、
千円リピートで農業チートしようと思ったら種が高くて買えない問題が発生です。
なので安い種を買いますねっていう説明です。
多分これを読んでいる都会の方とか家庭菜園に興味がない方はあまりご存じないと思うのですが、お野菜の種で美味しい品種ってすごくとても値段が高くて、更に今は高騰していて。種の量も減っていて。
カボチャの種って1粒100円くらいしますし、そら豆の種も、美味しい枝豆の種もたっかいので、千円だと昔の値段にしても広い畑になかなか種がまけないのです……
玉ねぎの苗も高いし、ほんと農家さんはなんであんな価格でお野菜を売っているのか意味わからない!
と思います。
あとこれからはできるだけ企業名を伏せようと思うのですが、そしたらなぞなぞみたいになっていて我ながら面白いです。
わかる人にはわかるはず!
主人公は説明時になかなか名前が出てこなくて、ついでにカタカナにすごく弱いので企業名を間違って覚えているという設定にしたいと思います!
以前の分は時間がある時にちょこちょこ直そうとは思っていますが、多分ゆっくりまったり直すので、ここそのままだなって思っても読んでくださっている人の脳内で適当に読み替えて伏せておいてください。よろしくお願いします(他力本願)