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異世界で一日千円分だけ自分が買ったことがあるものを出せる能力でなんとか生き抜きます  作者: 相内 友
第四章 猫耳少女の偏食の謎

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31 お米あるんだ

 ルーナは串に刺されて砂糖の飴がけで照りっとつやつやになった苺とミニトマトを見て、目を丸くした。


 ちょうど窓から陽の光が入ってきているのもタイミングが良かった。

 やはり午前中の自然光というのは食べ物でもなんでも綺麗に見える。

 物撮りをするなら午前中がおすすめだ。


 しかしこの部屋、茂ったミニトマトの迫力がすごい。ミニトマト、けっこう大きくなるんだよね。摘芯しないとどんどん伸びる。

 本来すべき摘芯も脇芽かきもしていないのでジャングルっぽい伸び方をしている。


 そういえば、ハウスでガチにミニトマト栽培をしているところの手伝いをした時に10mは伸びるって聞いたような。つる下ろし作業かなりきつかった……


 そんな事を思いつつ、

 ベッドの脇にあるテーブルにお皿をセッティング。

 待ち切れないルーナはベッドからよいしょっと下りてきて、椅子に座る。

 椅子がまだ少し大きいのだろう。足がブラブラしているのが可愛い。

 お茶もいれるからちょっと待ってね。


「キラキラしている!」

 そう言うルーナのお目々の方が灰色にけむったアクアマリンのように輝いている。


 うん、飴がけの方はキラキラしていてとても映える。

 いちご大福の方はいちごを中に入れてしまったのでただの白い餅だからあまり見栄えはしない。もちもちしていてハムスターみたいで可愛いとは思うんだけど。ごまかチョコでお目々つければよかったかな。


 簡単いちご大福で大福に切り込みを入れていちごを差し込む方が簡単で見栄えは良いのだけど、私はいちごがあんこで包まれたいちご大福の方が好きなのだ。


 どっちも美味しいからこれは好みの問題だ。


 でもどうせなら自分がより好きな方を好きな人には食べてもらいたい。


 飴がけのミニトマトをシャクリと食べたルーナは左手でほっぺたを押さえて足をバタバタさせた。


 やったね。うん。これはいい感じの反応だ。

 全身でおいしいを表してくれるルーナにこっちも笑ってしまう。


「甘くて酸っぱくて甘くてじゅわってするの」

 おお、すごい。ルーナは食レポが上手だ。

 砂糖のあまーいところとミニトマトの甘酸っぱさがいい感じらしい。

 良かった良かった。


 苺の飴がけは安定の美味しさですね。ルーナもにっこにこだ。

「おーいーしーいー!」


 いちご大福の方は多分見慣れないからだろう。ちょっと警戒している気配がする。


 けれど、私を信頼してくれているのだろう。意を決したようにパクリと食べたルーナがまたジタバタと足を動かす。


 よしよししめしめ。


 計画通り!


 美味しいよね、いちご大福。

 苺の甘酸っぱさとあんこのこの豊かな甘み。そしてそれを包み込むもちもちの求肥、ちょっと砂糖多めにしていて柔らかさが持続するように作ってある。時間をおいても美味しいはず。

 それでも出来立てはまた格別なのである。


 あんこの中に苺を入れようって最初に考えた人は天才だ。限りない賞賛を送りたい。どっちに向けて拝んだらいいのかな。


 ただ、味見してみたところ、残念ながらしゅわしゅわはなかった。なぜだ。解せぬ。

 あれ、なんでしゅわしゅわするんだろうね。



「すっっごい、おいしかったーー!」

 満面の笑顔が眩しい。

 ほんといい顔するなぁ。周りを幸せにする笑顔だ。


 一応これで、なんとか「すっごく美味しいお野菜のお菓子」という課題はクリアかな。

 よかったぁ。

 ほっとしたよ。


 子どもに嘘をつくのはとても苦手なのだ。

 なんていうか小さい頃に裏切られた事ってずっとずっと残る気がする。


 大人の何気ない約束破りを小さな子どもはずっと覚えている。

 大人になった今でも自分の中にあの時の守られなかった約束をぎゅっと握りしめている子どもがいる。


 その子どもがふとした時に出てくるのだ。

 多分もう相手はそんな事を欠片も覚えていないのに。


 ルーナとの約束を守れたことで、自分の中にいる幼いあの子がちょっと笑ってくれた気がした。






 美味しそうに食べてくれたルーナだが、その前にマーサさんのお野菜料理もお腹に入れていたこともあり、すぐにお腹いっぱいになってしまったようだ。


「これはルーナのためのお菓子だから、食べきれなかった分は置いておいて後からまた食べるといい」

 そう言うと、ちょっと考えた後に、ルーナは首を振った。


「美味しいから、おにいちゃんとマーサにも食べて欲しい」

 おう、なんて優しい子なんだ。

 ちょっと泣けてきちゃうね。美味しい自分のものを人に分けられる子はすっごく良い子だ。間違いない。


「大丈夫。ちゃんとよけてある」

 様子をうかがっていたジュドさんとマーサさんに目配せする。


「後からちゃんといただくわ」

「ああ、楽しみだ」


 ということなので、ルーナは安心して後から食べきって欲しい。





 お腹いっぱいになって眠くなったルーナを寝かしつけ、試食会といこう。


 思えば、先に試食してもらってこっちの人の味覚ではどういう評価なのかを検証してからルーナに出すべきだったのだが、出来立てを食べてほしかった。

 仕方ない。


 ルーナに多めに食べてほしかったので、申し訳ないけれどジュドさんとマーサさんには各一個ずつしか取り置きしていない。

 まあ、味見ということで。


「まあ、掛かっているのはお砂糖かしら? すごく甘いわ。甘みがなんていうか濃いのね。トマトの酸味とよく合っているわ」

 マーサさんが串を良く確認しながら味わってくれる。

 ちょっとしまったかなと思う。


 使い慣れた材料でないと上手く作れないと思って上白糖を使ってしまったが、甘みの種類というか純度がこっちのものと違う可能性、ありか。

 まあでもカラメル一歩手前まで煮詰めてあるので白さは問題にはならない、はずだ。


「砂糖と水を混ぜて煮詰めて掛けただけだから、もし良かったらまた作ってやってくれ。大体の割合は3対1から4対1だ」

 そう頼んでおこう。ちょっと甘さは違うかも知れないけど、似たようなものにはなるだろう。


「苺、美味いな」

 苺の飴がけはジュドさんに高評価だ。甘いものいける口なんだね。


 いちご大福については、ふたりともこれは何だろうという顔をしている。

「異国の菓子で見慣れないだろうが、いちごを豆のジャムで包んだものをさらに米という穀物でできた皮で包んだものだ」

 この説明で通じるのかどうかは知らない。翻訳さん頑張ってくれ。


「米と言うと、飼料に混ざっているあれか?」

 米、通じたし、あるんだ。

 そして飼料用なんだね。品種の問題なのか、食べ方が知られてないのか。



 米があるのは日本人として素直に嬉しい。

 良かった。


 田舎で、親戚や知り合いがお米を作ってる人あるあるで、米を買った記憶がないのだ。


 米はもらうもの!

 と最近まで思っていた。


 ただ近年米作りをやめる人も多くて、もらえるお米も減ってきた。

 今年は買わなきゃなぁ、米ってこんなに高いんだ……

 とスーパーのお米の値段を見て思った。高いよ、お米。

 買う立場からするとどうしてもそう思ってしまう。

 ただ、農作業の過酷さを知っているので、これでも安いんだろうなとも思う。

 米作り、聞いてるだけで本当に大変だし、機械への投資がエグいのだ。

読んでいただき本当にありがとうございます。



とても嬉しいレビューをいただきました。

嬉しくて、舞茸を発見した昔の人みたいに舞い踊っています。

ありがとうございます。

m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
米は短米種でもピラフや焼き飯系にすれば長所としてあいます。 酒にして5〜6回程蒸留して梅干を漬ける。氷砂糖の代わりにビーツでやれば梅酒が出来るかなぁ
苺大福食べたくなった。 お米は収穫時期に農家さんにうちの分確保してもらってるけど、スーパーだと凄まじく高いですよね。 お米取りに行くのが間に合わなくてたまに買うけど、値段が倍以上するのに美味しくないか…
イチゴ大福か 美味そう
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