25 この畑と小屋、けっこう良いのでは
なんとか程よい鉢の大きさで勘弁してもらったが、ご不満なのかルーナはちょっと不機嫌である。
まあ、移動はジュドさんにお願いすればいいのだけど、それにしてもあの大きさはちょっと。
そりゃ鉢が大きい方が沢山採れるけどね。
苗を植え付けて、水をやる。室内だと受け皿も必要だったな。まあとりあえず使ってない桶があるというのでマーサさんに出してもらった。あとから受け皿もジュドさんになんとかしてもらおう。
種まきもルーナがやってくれた。すごく真剣にひと粒ずつ種を埋めていたけれどもっと適当でも良いんだよ。すごく楽しそうだから何も言わないけど。
ルーナがここまで回復しているなら、このまま中庭で育てるのも良いかもと思ったけれど、まだあまり本調子ではないのだろう。
興奮しすぎたせいもあり、部屋に戻ると途端にルーナは眠そうな素振りを見せた。
とりあえず、窓際に鉢を置き、次のミニトマトの花が咲いたら指で優しく揺すって欲しいと伝えて、ルーナにベッドに入ってもらう。
もっとお話したいと頑張っていたが、しばらく布団の上からぽんぽんとゆっくりとしたリズムで叩いていると眠気に負けたルーナは静かになった。
眠っている顔が真面目に真剣に天使である。可愛い。お外にはみ出ていた腕を起こさないように慎重にそっと掛け布団の中に入れる。
とても可愛いがこの細すぎる腕がもっとふっくらすればいいのにと強く思う。
音を立てないように注意しながらそっと扉を開けて部屋を出た。
「眠った。これで失礼する」
台所にいたマーサさんに告げる。
「サキさん。本当にありがとうございます」
深々と頭を下げるマーサさん。そんなにしなくていいのに。本当にルーナを可愛がっているのだろう。
「また来る。ジュドにもよろしく言っておいてほしい」
帰ってきたら人参くんくんしてくれって伝言、は、しなくていいな。意味がちゃんと伝わらないだろうし。
「はい。これからどちらへ?」
「ちょっと畑を見に行こうかと。それから農業ギルドかな」
これからの予定はそんな感じで。
ルーナに伝えきれなかった苗の世話について少しマーサさんに話してお願いしておく。
水のやり過ぎ、危険だから。多分子どもだとじゃぶじゃぶにやっちゃうから。
マーサさんに見送られてジュドさんの家を出る。ドアの外まで丁寧に見送られてしまった。
なんか昔行ってたバーを思い出してしまう。最後まできっちり見送られるの久しぶりだ。
さてと、次は畑を見に行くか。
確か西門を出てすぐだったはず。
ってほんとすぐだった。わかりやすい。方向音痴ぎみなのでとても助かる。
畑3枚って個人としてみると畑としてはけっこうな広さだ。正直私一人では無理すぎる。1枚でも無理だと思う。
だが、農家の持つ畑としてはかなり狭めといえるだろう。
今は牧草を生やしているようだが、放牧地として考えると畑3枚分の広さだと牛2頭で1ヶ月で食い尽くされるんだったかな。牛はとてもよく草を食べる。1日50kgの草を食べるらしい。よだれの量はお風呂1杯分だ。すごい。
ああ、お風呂にゆっくり入りたい。連想したせいでお風呂への欲求が高まる。
でもよだれ風呂は嫌だなぁ。
牧草地となっている畑に建つ小屋を見つめる。この小屋と畑を借りることができたら、小屋の中にでっかい桶を置いてゆったりつかることができるのではないだろうか。
簡易な小屋を想像していたのだけれど、予想以上にしっかりした小屋だ。井戸もあって洗い場もある。
え、外から見た感じ小屋は6畳から8畳くらいの広さがありそう。これは完全に住めるのでは。
夢がふくらんでしまうが、問題は畑が広すぎると困ることと借り賃がいくらになるか。
牧草はクローバーっぽいやつとイネ科のツンツンしたやつが混ざっている。これ、畑にしなおすとなると最初がかなり大変だ。
ただ、いろいろな依頼が出ている冒険者ギルドを知っているので、土起こしの依頼を出せるなら最初の大変なところは人任せにできるのではないか。
ちょいと土をみてみるが、特に変わった様子はない。牧草もツヤツヤに育っているし、問題ないように思える。
柿の木は小屋の側にあって、それなりにでかい。甘柿だと嬉しいけど多分渋柿だろうな。
渋抜きをするか、干し柿にすれば食べれるから渋柿でもいいっちゃいいけど。
枇杷の木はあっちか。枇杷、あんまりこううまく育った記憶がない。種がでかいし、肥料をあまりやっていなかったせいか実が小さくて可食部が少ないんだよね。
見学してみた感じ、この畑、とても気に入った。特にこの小屋が良いです。ほんといい感じです。
お風呂、お風呂!
お風呂への期待が高まるし、流しがあるから、後なんとか火を使えるようにしたら自炊できる。
自炊できると、千円リピートの使い勝手も向上するのだ。カップラーメンより袋麺の方が安いし。
カップラーメンを食べるにもお湯どうする問題があって困っていたのだ。ジルさんのところで沸かすことはできるけれどカップラーメンをジルさんの眼の前で食べるわけには、ね。
火を使えてお湯を沸かせたり、炒めたりできるだけでもすっごく楽になると思う。
なんとか、貸してもらえると良いなぁと思いながら農業ギルドに向かった。
誤字脱字報告ありがとうございます。
あまりに誤字脱字が多くお礼が間に合わないので活動報告にてお礼を述べさせていただきました。
勝手ながら今後はあとがきにお礼を追記するのはやめようと思っています。
もう、ほぼ全部のエピソードに追記することになってしまっているので。
本当に誤字脱字報告ありがたいです。助かっています。




