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24 同じ人参なのに何が違うのか

 持ってきた野菜をマーサさんに料理してもらう。

 私が持ってきた野菜のみを使ったものと、他の野菜を使ったものを分けて作ってもらえないかとお願いしてみた。


 マーサさんが見慣れない野菜はサツマイモのようだ。芋類なんだけどジャガイモよりは扱いとしてはカボチャと同じような感じで甘くて美味しい野菜だと説明する。

 蒸したり揚げたりすると美味しいよねサツマイモ。味噌汁に入れるのも私は好きだ。


 手際よく刻まれた玉ねぎ、人参、じゃがいも、カボチャが炒められ、その後加えられたスパイスもじっくりと炒めた後、煮込まれていく。

 この匂い、カレーっぽい。クミンの匂いだ。食欲をそそる良い匂いが立ちこめる。

 サツマイモとカボチャは、シンプルに蒸してからさっと焼いて煮込みに添えられた。


 もう一品は温野菜のサラダだ。

 ブロッコリーの緑と人参のオレンジで彩りが良い。キャベツと大根と共にドレッシングでさっと和えて完成。


 少しずつ皿に盛り付けて、ルーナが食べられるかどうか試してみる。


 マーサさんと見つめる中、ルーナは煮込みに手を伸ばした。


「苦くない!」

 口に入れ、ぱっと顔を輝かせて、そう言う。添えられたカボチャとサツマイモも美味しそうにもぐもぐしている。ほっぺが膨らんでいるのが可愛い。


 温野菜の方は見ようともしない。


「ルーナ、こっちも食べられる?」


 ルーナはちらっと皿に目をやってふるふると首を振った。

「嫌!」


 2つの皿を見比べる。野菜の種類や料理法で食べないという可能性もある?

 同条件で試してみるべきだったか?

 今回の2皿に共通して入っているのは人参だね。


「こっちのオレンジなのは食べられる?」

 煮込みの人参を指さして聞く。


「うん!」

 人参をぱくりと口に運ぶルーナ。


「こっちのオレンジは?」

 温野菜サラダの人参を指差す。


「それは食べたくないの」

 へにょりと眉毛がさがる。耳もへたりと平らにさがった。

 ごめんごめんと撫でたくなるしょんぼりさだ。


 同じ人参なのに、何が違うのか。


 マーサさんに同じものをよそってもらって食べさせてもらったが、マーサさんの味付けは絶妙でどっちも美味しい。お店が出せる味だと思う。


 ただ、農園でもらってきた人参には良く味わうと確かに臭みがちょっとある。真剣に人参だけを執拗に舌でころがせばわかる程度だ。

 けれど、私が出した人参も特売の1本18円のやつだから、こっちにも人参臭さはあるのである。

 ほぼほぼ同じだと思うんだけど。というか、どっちも苦くはない。私が買った人参も特に甘いわけではない。

 首をかしげる。


 そう、人参も買ったことがあるのは特売品だけだったのだ。

 人参も基本自分の家で作ったものを食べていたので高い人参を買うことはなかった。甘い人参、作ったやつで買ったことなかったよ。

 同じく、玉ねぎもジャガイモも別に特段美味しいというわけでもない、スーパーの安売りの時に買ったごくごく一般的なやつだ。

 正直甘い野菜としての本命はカボチャとサツマイモで、人参や玉ねぎをルーナに食べてもらえるとは思っていなかった。


 少しとはいえ野菜を食べたので、その後慎重にルーナの様子を見ていたが特に体調がおかしくなる様子はない。

 マーサさんの目は少し赤くなっている。自分が作ったものをこんなに美味しそうに食べるルーナを見たのは初めてだったそうだ。いつも食べないともたないからと無理に最低限の量を食べさせていたらしい。


 とりあえず、私が出した野菜なら食べられそうだということがわかったので、また持ってくることをマーサさんに約束する。


 見た目も味もほぼ同じ人参。違うのは産地だけど、どういうことだろう。

 食べる前から嫌がっていたのだ。問題は味ではないっぽい。匂い?


 匂いをかいでみるけど違いがわからない。近くに犬科の獣人さんはいないものか。

 そうだ猫でも人間より嗅覚は優れているはずだ。ジュドさんが帰ってきたらかいでみてもらった方がいいのか?

 でも、兄妹だけどジュドさんはお野菜食べられるよねぇ。

 ん? 何かが脳裏をちらっと横切ったけど捕まえきれない。


 うーん。あとは可能性としては、こっちの野菜からは何かが出ているのだろうか?

 体調を崩すアレルギー的な何かが。

 アレルギーであれば人によって違うから、兄妹でも反応したりしなかったりするよね。


 考えてもよくわからないのでまた今度ジュドさんがいる時に確認してみよう。 




 とりあえず、ここに来た目的であるミニトマト苗といちご苗をルーナに渡す。

「これを育てて欲しいんだ」


「もうお花が咲いてる!」

 ミニトマト苗は花が咲いてから定植すると失敗しにくい。まあこの苗は値下げ品なので花は咲いているし下葉がちょっと黄色い。


「鉢は中庭にありますよ」

 ジュドさんが用意してくれていた鉢は中庭に置いてあるとマーサさん案内してくれる。

 植えて持ってこようと思ったが、

「私が植えたい!」

 とルーナが主張するのでお願いすることにした。


 サツマイモ植え付けは気候的にもうちょっと後の方がいいだろう。ミニトマトも本来はもうちょっと後だが、室内ならそんなに気温が下がることもないだろう。


 そのかわり、育ちの早い小松菜とベビーリーフを追加で種まきしてもらおう。

 日本の野菜なら別に甘くなくても食べられる可能性が出てきたから。種なので10円分くらいずつで十分な量が出せる。


 幸い、ジュドさんがどの鉢が良いのか迷ったのか頼んだ数以上の鉢がある。


 張り切ったルーナはものすごくでっかい鉢を指さしてこれが良いと満面の笑顔だ。


 ルーナ、室内で育てるから小さめの鉢にしておこうね。その鉢、私じゃ持てないよ……

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― 新着の感想 ―
ただの偏食じゃなかったのか 獣人とフラグと緑魔法が効きにくい農地というのがここにかかってくるんですね。 魔法の影響が強い野菜が拒否感が出る。獣人の定番である魔法関係の素養が少ないとかいうのにつながりそ…
偏食が原因ではなかった!??
イチゴの花は白くて小さくて可愛らしいですね トマトの花はどんなのかな
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