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異世界で一日千円分だけ自分が買ったことがあるものを出せる能力でなんとか生き抜きます  作者: 相内 友
第三章 千円あれば身近な人をちょこっと助けることができたりするのかも?
21/123

21 畑っていくらくらいで借りれるんですかね?

「リガルという人を呼んでほしい」


 冒険者ギルドで報告を終えてから、早速来てみた農業ギルドの受付で頼んでみる。農業ギルド、めっちゃ農協である。でっかい倉庫が本体で事務所はちっさい。


 奥の席から呼び出されたガッチリとした体型で日に焼けた男性がやってきた。


「リガルだ」

「ニア農園で聞いてきた。サキと言う。ちょっと教えて欲しいことが」


「ドーンが? 何を聞きてぇんだ?」


「農地を区切って貸す話があったと聞いたんだ、やっているのか?」

 問いかけるとリガルが片眉をくいっとあげて腕を組んだ。


「あれなぁ。いけると思ったんだが問題が起こって行き詰まってるな」


「問題?」


「元々、放棄された農地をなんとか活用しようって話でな。そのまま引き継いでくれる農家がいれば良かったんだがいなくて。そのまま荒れさせるよりは小さく区切って街の人でも試しにやってみたいという人に貸せないかってな」


「良い計画だと思う」


「だろ? だがな。その土地をちゃんと調べたらどうも緑魔法がかかりづらいことがわかってなぁ」

 今度は八の字に困り眉になる。すごく動きの激しい眉毛に目が釘付けになってしまう。


「緑魔法が土地にかからない、と?」


「ああ、緑魔法がなきゃ、育ちが悪くって大変だろ? だから放置されたんだろうな。なんで計画は頓挫。その農地はとりあえず農業ギルド管理で牧草地にしてんだ」


 ふむ。緑魔法が良くわからないけれど、話の流れからすると育ちを良くする、肥料みたいな働きがあるのだろう。農薬っぽい働きもあるのかもしれない。

 緑魔法がない世界で野菜を作っていた身からするとないとどう困るのかがわからない。なくてもいいんじゃないかね。


「ちなみに、その畑の場所と広さと賃料は?」


「なんだよ、興味あるのか? 場所は良い。西門からすぐだ。広さは3枚。もう畑としては貸せないから賃料はどうなるんだっけかな」


「1枚もいらなくて、1枚の三分の一くらいだけ借りるみたいなことができたりは?」

 1枚を一反歩と仮定すると300坪くらいだろう。そんなに管理できない。


「なるほど、そこに話が戻るってわけだな。途中まで話は上げてたからいけなくもないとは思うが」

 すぐに返事はできないって感じだね。


 まだ思いつきなので、こっちも賃料によって借りられるかどうかもわからない。

 田舎だと畑なんて基本無料でいいから使ってくれ状態だから相場も知らない。市民農園みたいなやつは年間数千円で安かった記憶だし。


 借りるのにもいろいろ決まりがあるだろうし、場所もちょっと見てからにしたい。今回はとっかかりが出来ただけで上等だろう。


「また来るから。場所だけもう少し詳しく教えてほしい」


「おぅ。っとここだな。こっちに小屋があって、枇杷と柿の木がここらにある」

 台帳を見せてもらって大体の場所を把握。小屋があるのいいな。

 見に行くのは明日以降だ。







「ジルじいさん、いるか?」

 まあ大抵いるのだけど、一応声をかける。


「おるぞ〜」

 声が聞こえる。


「野菜をもらったんだ、また借りていいか?」

「ああ、ええぞ」

 台所が綺麗になったことで、他も気になったのだろう。

 ジルさんは何回か掃除依頼を出してくれ、家がだいぶすっきりと片付いてきた。


 その時に食事を出してもらうこともあり、簡単なものを作るのを手伝っていた時に、肉がとれても調理する場所がなくて残念だと話したら台所を使っても良いと言ってくれたのだ。


 作ったものをジルじいさんにも分ければ使用料はそれでいいというありがたい申し出にちょいちょい甘えている。


 食のために、千円リピートでカセットコンロを買おうか真剣に悩んだんだけど、私が買ったことがあるカセットコンロは焼肉用のプレートがセットになった9,800円のやつだった。高いよ。


 単独なら1,980円あたりだったろうに……


 ドーンさんとミリアさんから帰り際にあれもこれもといっぱい渡されそうになった野菜だが、消費できる量にも限界というのがあるし、持てる量にも以下略。


 なんとか常識的な量にしてもらったのだが、それでもけっこうある。


 ストレージに時間停止、付けたままにしておけば良かったなと思うのはこんな時だ。自分で選んだので仕方ないのだけど。


 野菜を大量に消費したいのでスープにするか炒めるか。ジルじいさんが食べやすいのはスープかな。


 千円リピートでベーコンとコンソメを買って、適当に刻んで炒めた野菜と煮込む。コンソメは少なめにしたけど、それでもいい匂いがするなぁ。


 最後にスパイス少々を振り入れて出来上がり。


 器は片付けていたら出てきたちょっと良いものだ。

 普段遣いにはもったいないと最初渋っていたジルさんも、使い始めると気に入ったようだ。

 あることも忘れてしまい込んでいたものだし使えるうちに使った方が良いよね。


「なんか知らんがサキの作るもんは何でもうまいのう」

 うまいと食べてもらえるのは嬉しいものだ。


 一杯では足りないのか、おかわりを取りに行こうとしたジルさんが少しふらついた。


「気になっていたんだが、その足は痛むのか?」

 前から思っていたんだけれど、痛みがあるのなら鎮痛剤で楽になるのかもしれない。ただご老人にへたに薬をすすめるのは怖くて黙っていたのだ。


「いいや、普段は痛くはないんじゃ。曲げ伸ばしがしづろうての。雨の日なんかはちょっと痛むんじゃが」

「そうなのか」

「歳じゃからな」

 痛みがそんなにないのなら鎮痛剤では無理だ。関節がすり減っている系だとコンドロイチン?


 ただ、あれ系、髪の毛を食べたら髪の毛が生えるのかっていう疑問があるよね。ってコンドロイチンなんて買ったことないか。

 コラーゲンドリンクなら飲んだことがあるのと、コラーゲンって結局ゼラチンなのでゼラチンならゼリー作りに買ったことある。

 気休めだけど今度スープ作る時にはゼラチン入れてみようかな。冷めて固まった時に驚かれそうだ。


 筋肉が固まっているのならストレッチかマッサージも良いかもだけど、詳しくはないからなぁ。

 元気でいて欲しいのだけど。


 2階を片付けた時に、冗談っぽくなんなら住んでもええぞって言ってくれていたジルさんに、畑を借りるかもしれないと話しておく。賃料の相場を知っているかと聞いてみた。


「畑のことはわからん。わしゃずっと職人だったからの」

 と、言われた。


 頑固職人、ジルさんにぴったりだけどなんの職人だったのだろうか?

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― 新着の感想 ―
ストレージ物置が高温強風にできれば干し食料が作れそうだけど、エアコンの範囲かなあ
緑魔法かあ 魔法あったんだ 勇者さまとは別行動してたので忘れてた 作物にかける水かげん適当だったのはそういうことね
しつこくてごめんなさい。豆知識ですが、関節等の軟骨には血管がありません。そのため、コンドロイチンやコラーゲンを内服しても届きません。鎮痛剤でごまかすか、関節に定期的に潤滑剤のような液体を直接注射して軟…
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