19 野菜を育てよう 農作業をしよう
ジュドさんに確認した結果、四季はあって今はやはり春の初め、聞いた感じここら辺は冬の寒さも夏の暑さもそこまで厳しくない過ごしやすい気候で、それもあって妹を連れてここに住んでいるらしい。
深く聞いてはいないが両親の話が出ないので何か事情があるのだろう。妹の面倒を見てもらうのに通いの人がいるっぽかったが今回は会えなかった。ルーナが食べられそうなものを今度相談したい。
熟考の結果、ルーナに育ててもらう野菜はミニトマトに決定した。
種からと考えると育成期間が長いけれど、苗を買ったことがあるのを忘れていたのだ。
購入したことがあるのは名無しのミニトマト苗58円とブランドミニトマト苗の値下がり品150円。
ここはブランド苗で行くべきだろう。売れ残っていただけあってもうすでに花が咲いて下葉がちょっと黄色くなっていたがミニトマトは強いのでうちでは問題なく育った苗である。
甘かったよ。フルーツではなかったけどね。トマトはトマトだった。でもトマトが苦手な私でも食べられた。
あとは甘い野菜ということでもう少ししたらサツマイモも一応植えておいたらどうかなっと思う。
あれなら袋栽培できる。時間はかかるが栽培難易度が低い。そしてお菓子に使いやすい!
約束は守らないとね。
サツマイモのツルは10本500円のと、枯れかけていて値引きされた10本100円のやつ、どっちがいいか。
枯れかけているように見えてサツマイモって強いからけっこう根付く。半分でも助かればこっちの方がお得。10本100円のを買って良さげな2本を袋栽培、残りはどっかに植えられないかな。
あとはあれですね。イチゴもいっとく?
イチゴは野菜なのか果物なのか微妙なところだけど、花も可愛いし、実も可愛い。甘くて美味しくてビタミンCもたっぷりだからね。
イチゴ苗は値引き品98円のやつしか購入履歴がないので選びようがなくこれになる。
ただ、苺はけっこう栽培難易度が高い。美味しい実を採ろうと思うとかなり苦労するし時間もかかる。これは基本観賞用にするのが良いのかもしれない。
ということでジュドさんにはミニトマト用の深めの鉢とさつまいも用のずだ袋、いちご用の可愛い鉢を用意してもらうこととした。
自分でも野菜を育てたい。ついでに花も育てたい気持ちが湧いてきたのでどうすればいいのかを考える。
そう言えば、ギルドの依頼の中に農場等での作業ってのがあった。タイミングと場所が悪くて受けたことがなかったけれど、あれを受ければ農家さんとお知り合いになれるのではないか。
「農場での作業ですか? 今ですとニア農園から割増依頼が出ていますね。土作り植え付け支柱立て等。忙しいんで誰でもいいから来てくれという切実なご依頼です」
マチルダさんに聞いてみるとけっこう近くの農園から良さげな依頼が出ていた。
ああ、春の作業がおっついてないのだろう。春から夏の野菜、支柱が必要なものが多すぎる。
「この依頼を受けたい」
場所を聞き、依頼票を出してもらって農場に向かう。
「おっしゃ、助かる。あっちに甥がいるから指示を聞いてくれ!」
ニア農園に着いて、ギルドの依頼で来たと言うととても歓迎された。農業主のドーンさんが腰を、奥さんのミリアさんが膝をやってしまって思うように動けないらしい。
言われて向った先にいたのは、
「バーン?」
街に入る時にお世話になったバーンさんだった。びっくり。え、門番の兵士じゃなかったの?
ムキムキの腕で鍬を振るっている。あっという間に畝立てが終わっていくのがすごい。早い。
「ん、ああ。えーっと」
「サキだ。この間は門で世話になった」
「ああ、あの時の。ってことはギルド依頼で来てくれたのか」
話を聞くと、叔父から頼まれて休日に手伝いに来ているらしく、やはり本職は兵士らしい。親戚の農作業が忙しいと手伝いに駆り出されるのあるあるすぎる。
「畝は立ててあるから、そこの苗植えを頼む」
ふむ、これはレタス系かな。頼んで一つバーンさんに植えてもらう。手元を見て作業を確認。
んじゃやりますか。
レタスを植えブロッコリーを植え、豆類の支柱を立てる。合間に草取りと荒起し。冬野菜の残渣の片付け。やることは山ほどある。
ドーンさんもミリアさんも腰や膝をかばいながら出来る作業をやっている。休んでいて欲しいがそういうわけにもいかないんだろう。
「手慣れてるな。種まきもいけるか? あっちの水やりも頼めるか?」
やれなくもないけど、やっていいの?
種まきと水やりは簡単そうに見えてかなり難易度が高い。この時期の野菜苗って水やりの量を間違えるとすぐに伸びちゃうし腐ってしまう。
やれと言われたらやるけどね。
ということであれやこれやの作業を言われるがままにやっていく。
「おーい! そろそろ休憩してくれ」
バーンさんから声がかかる。
肉体労働はちゃんと休憩を挟まないとやってられない。忙しい時期ほど休憩は大事である。
ミリアさんが用意してくれたお茶と軽食をつまむ。
「ほんと来てくれてありがとね。これいっぱい食べて!」
麦とたっぷりの野菜を煮込んだスープだ。
そのスープに薄く切られたライ麦パンをひたして食べる。
美味しい。確かに日本の野菜よりえぐ味や苦みもあるといえばあるが、それは味が濃いということでもあるので旨味も大きい。
大人になると、歳を重ねると、野菜をすごく美味しく感じるようになるんだよね。
子どものころ、大根の煮物が美味しいから食べろって言われて食べたら美味しくなかったことを思い出した。
今は大根の煮物は大好物だけど、子どものころは嫌いだったし、なんでこんな美味しくないものを美味しいって嘘をつくのだろうと大人を嘘つきだと思っていた。
そんなことを思い出して口元がゆるんでしまう。
「うまい」
そう言ってしみじみ味わわせてもらった。
さてと、腰痛に膝痛。私も覚えがある。とてもつらい。基本は安静だけどそうもいってられない場合、対処法はコルセットと湿布と痛み止め、となる。
腰痛で整形に行くと山ほど湿布と痛み止めが出されて様子見っていうのがセオリーだ。今は湿布枚数がちょっと制限されているらしいけど。
コルセットは千円じゃ買えないな。
湿布はフィルムとか外見がかなり異質だろうなぁ。ぬるやつも容器がちょっと。
ここは痛み止めを試してもらいたいところだけれど、どうなんだろうね。
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
ほんと助かります。