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16 異世界人って別にこう気にしなくても良かったり?

「つまり、サキは異世界から来て、一日に1000ゴルド分くらいの異世界のものを出せる、と」

 一通りの説明を聞いてジュドさんがとりまとめてくれた。


 うん、まあつまりはそういう感じなのだ。

「こちらでそれがどう扱われるかわからなくて不安に思っている?」

 その通り。


 ふむ、と顎に手を当てたジュドさんが話し始める。

「まず、異世界から勇者が召喚されることはみな知っている。俺はじいさんから昔話として聞いたな。最近魔物の活動が異常になってきていて、そろそろなんじゃないかと冒険者の間で言われていたが、そうかもう行われていたんだな」


「昔話としてとは?」


「異世界から来た勇者が魔王を封印して世界に平和を取り戻す英雄譚だ。美しい姫と結ばれて末永く幸せになりました、ってやつだ」


「なるほど。勇者は異世界に還ったりはしてないんだな」


「ああ、戻った勇者の話は聞いたことがない。勇者は庶民にとっては貴族や王族と同じようなものだな。関わりになるとは思ってないし、遠い世界の偉い人枠だ」

 まあ、言われてみればそうかも知れない。昔話の英雄をどう思うかって聞かれても自分に関わるとは思わない。


「異世界人というのも、眼の前にいたとしても、へーそうなのか? ほんとに? くらいの反応になるな。実際そんな気持ちだ。ただ、中にはこう勇者を神聖視するような団体もあるし、研究者的にはものすごく興味があるかもしれないが」

 勇者を崇めるような団体さん、いらっしゃるんだ……

 思わず顔をしかめてしまう。


「なので、まあ、よくわからないものを出しているところから見て、そう言うなら異世界人ということもあるのかもしれないとは思うが」

 あ、これはなんていうかあまりこう信じられない感じですかね。思えば日本で私は宇宙人だと言われたとして、信じるかって言われると微妙な気がする。なんかわからない物を持っていたとしても詐欺師とかちょっと変わった人の可能性を考えるよね。


「そういう特殊スキルだと言われたら、そうなのかと思うくらいだな。あとは奇術で出しているのかと思うな」

 言われてみると、魔法があるのだから、いろいろ不思議現象はあるわけで、おかしなものが出せるというのもある程度許容される下地があるのだろうか。あと獣人がいるのだからエルフとかドワーフがいるとすると異世界人だからといってそこまでこう特殊性がないのかもしれない。


「となると、あまり気にする必要は、もしかしてないのか?」

 ちょっと拍子抜けしてしまうが、それはそれで生きやすくなるので助かる。


「ものすごく貴重な価値あるものが際限なく出せるのであれば問題だと思うが、制限があるのだろう? 1日1000ゴルド程度というと大したものが出せるとも思えないが」

 そうなのだ、1日千円分だと大したものなど出せない!

「そうだな」

 ちょっと明るい気持ちになったので声もはずんでしまう。


「ああ、だが、爆発はしていたな……」

 あ、はい。爆発物も少々出せます……


「まあ、火魔法の一種と言われれば」

「押し通せなくもないと!」

 押し通す方向性で頑張りたい。

「さっきの白いパンはちょっとおやっと思ったな。本当に見慣れないものよりも知っている物が変わっている方が気になる」

「つまり、食料品系統は違和感を抱かれやすいと」

 言われてみれば、知らない物の特異性はわかりにくい。知っているものの異常さはわかりやすい。日持ちのしない食べ物はやはり取り扱い注意なのか。でも1000円で出せるもので有用なものって食品系統に偏る気がする。難しいな。基本食べ物系は自分で食べるか信頼できそうな人のみに限るべきか。


「まとめると、庶民にとっては異世界人というのはけっこうどうでも良いが、本当だった場合、一部の人からどう思われるかはわからん。なので異世界人ということは基本伏せるか、逆にホラ話的に異世界人を名乗る奇術師や、変わった研究家発明家枠で行くのが無難ってところだな」


 なるほど、下手に隠すよりホラ話っぽく名乗ってしまうというのも手なのか。怪しければ怪しいほど信憑性がなくなっていい感じかもしれない。マジシャンが超能力者と名乗るみたいなものだね。


「ありがとう。気が楽になった」

 お礼を言う。

「どういたしまして」

 ジュドさんがおどけたように大げさにお辞儀した。つられて揺れる尻尾がとてもチャーミングだ。


「変わった研究家としては、白くて美味しいパンを開発したりするわけなのだが、明日以降であれば渡せ、あっ、少々固くても良いなら今ある」

 朝食に食べた半額食パンの残りが4枚ある。食品関係を出すのはちょっと微妙とはいえジュドさん相手ならそう問題はないだろう。

「この包装が多分ちょっと問題になる気がするので他に見られないようにして食べたら燃やしてもらえると助かる。あとこれもついでに渡しておく。あのスパイスだ」

「ありがとう」

 食パンよりもやはり包装の袋が問題だよなぁと改めて思う。スパイスは紙で包み直してあるけどパンを乾燥させないような入れ物、思いつかない。


 てか紙も問題だったりするのか?


「ちなみにこの世界の紙ってどんな扱いなんだ?」

 コピー用紙が一番安い紙なんだけど白すぎます?


「紙? 普通に使っているが?」

 そう言われれば依頼票とか地図とか紙でしたね。真っ白ではなかったように思うけど。

「特段高級だったりはしない?」

「高い紙もある。普段使っている紙は再利用品のものだな。詳しくは知らないが植物性の繊維や使い古しの紙をスライム溶液に混ぜて漉きなおすんだったか」

 おお、スライム出てきた。いいよねスライム、夢があって。再利用品なので白くないのかな。物によっては白いものもあるのならコピー用紙使えるかな。ただ、なんで高級品よりな紙をこんな用途に使ってるんだっていう疑念を生む可能性はある。

 まあそこはエキセントリックな発明家なので! ということで。


 そんなこんなで、思いついた疑問に答えてもらいながら街に戻って解散となった。


 帰り道に聞いた感じ、妹さん、多分絶対栄養足りてない気がする。

 ちょいと思いついたことがあるので、時間はかかりそうだが準備をしたいと思う。

誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。

ほんと助かります。

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― 新着の感想 ―
>多分絶対栄養足りてない気がする。 多分なのか絶対なのか!ニュアンスはわかるけど。
ジュドさんのイメージは猫の恩返しのバロン(笑)
慎重だったのが一気に異世界人公開か 自重もなくなってくんだろうな。
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