151 プリンを作ろう 中
あとは低温でじっくり加熱すればプリンは固まる。
問題はあれだ。いちご大福を作ろうとした時も同じ問題にぶちあたったのだけど。
私は電子レンジでプリンを作っていたのだ……。
少量なら電子レンジの方が楽だし、調整しやすいから。大きなタッパーに湯を入れてプリン容器をその中に入れて湯煎状態でチンすると上手くできるので一時期ハマっていた。
ああ、電子レンジが欲しすぎる。
魔道具で電子レンジって難しいのかな。難しいだろうね。あればとても便利なのに。
仮にもし作るとしたら水魔法なのだろうか? 多分、水分子に働きかけないといけない、よね? 水系統の魔石があって、的確に水分子を振動させることができればいける? まあ今ここにないものは仕方ない。
茶碗蒸しは母が昔、底が分厚くて深いフライパンで湯煎焼きしていたから、同じようにすればいける、はずなんだけど。
茶碗蒸しって具材の準備が面倒だからね……。私は作ったことがない!
いや、ある。あった! 中学校の時の調理実習で作った気がする。手順をあまり覚えていないけれど、確か、あれは蒸し器で作ったんだったな。蒸し器、ないね……。
よし、湯煎焼きで行こう。きっとなんとかなる。
母のやり方を思い出す。
弱火で加熱して、火を切って余熱で仕上げていたはずだ。
弱火10分、余熱10分くらいでやっていたような。
まあ、やってみるしかないだろう。
「これは、なんというか、んむ。美味しい、のじゃ……」
できあがったプリンを試食したキララがそう言ってくれるが、その顔が言葉を裏切っている。んんん?という微妙な顔。
うん、プリンをすくった断面を見たらわかる。すが入っちゃった。ぽこぽこと開いた穴。そこにカラメルが入り込んで穴をより目立たせている。これがあると食感がとても残念になる。
材料が良いので味は間違いなく良いのに、すごく良いのにぽそぽそ口当たりが悪い。見た目はカラメルが掛かって美味しそうなのに! 見た目だけなら満点なのに!
プリン、簡単なようで難しいのは火加減、加熱の加減だ。
なめらか食感にするには温度管理重要。100度では高すぎる。70度から80度くらいの温度帯をいかにキープするかが肝。
これはもう仕方ない。道具によってもプリン液の量によっても、熱源によっても加減が違う。
何回かやって身体で覚えるしかないやつ。
「予告しておくけど、しばらくおやつはプリンだから」
宣言して、ふふふと笑う。
凝り性が発動すると、気がすむまで、そればっかり作ってしまう。
昔、至高のチーズケーキを追い求めるゲームがあったけれど、その気持はよく分かる。少しの手順や材料の違いで味に違いが出てしまうのだ。そりゃ追求したくなる。
ただ、私は捨てる気はないので全部食べるつもりだ。
「キララ、『味見はまかせるのじゃ』と言ったその言葉、頼りにしているよ」
逃さないからね、と目に力を込める。
「も、もちろん……まかせるのじゃ……」
「食べるよー」
少し逃げ腰のキララはともかく、ミミは良質のタンパク質にご機嫌なので、とても頼りになりそうである。
試作を繰り返すこと、何回目だろう。もう数を数えるのをやめた。
いやほんと奥が深いぞ、プリン。
カラメルも難しいし、プリン液の卵と牛乳と砂糖の配合、温度、試すたびに少しずつ味が違う。何度も繰り返し、なんとなくコツが掴めてきた。
やっといい感じのプリンができるようになって私は嬉しい!
「なめらかで優しい甘さでぷるぷるなのじゃ! もうこれで良いと思うのじゃ!」
キララも喜んでくれた。連日の味見にちょっと多分飽きちゃってるんだよね。仕方ない。
「でもこれ、ちょっと上に穴があるよ?」
ミミの指摘はとても鋭くて頼りになる。うん、ちょっとだけ温度が高かったかー。
しかし、かなり美味しいプリンができるようになったので、ここらへんで手打ちとしたい。
うん、なめらかだけどしっかりしていていい感じだ。苦めのカラメルがまたたまらない。我ながら美味しいプリンができた。
気がすんだので、クレープでも焼こうか? 牛乳卵砂糖、そして小麦粉があれば焼けるからね。
久しぶりにプリン以外のおやつを作ったので、キララのテンションが目に見えて上がって面白かった。
こうしてできた魅惑のプリンは嚥下に問題があるご年配の方の栄養状態を改善するのに役立った。
つまり、メーベルさんもとても元気になった。
メーベルさんの体重が増えたと大喜びの息子さんが、白くて薄くて丈夫で耐熱で落としても割れないプリンカップを量産。容器が統一されていれば、プリン液の量も同じにしやすくなり、加熱時間等も目安がたてやすい。
レシピを他の人にも伝えやすくなったわけだ。
解せないのは、私が苦労して完成したこのレシピ、とても簡単に再現された。マーサさんに再現されるのは、まあ仕方ないなと思うのだけど、ミリアさんにもあっさりと。
すぐにすが入らない適切な火加減と加熱時間をものにしていた。すごいね。
このプリン、ルーナや勇者たちにももちろん好評だった。
そして、予想外に大好評というか、魅惑してしまったのが……。
「ラムがこんなに喜んでいるのを見るのははじめてなのでーす」
ぷるぷるする様子が似てるよねーと思って何気なく、ミィールさんに卵と牛乳のお礼としてプリンを持っていったのだ。
プリンの縁を押してから容器をひっくり返し、くるりんとその場で容器ごと自分が一回転することでうまく容器から出せたプリン。
そのプリンをラムにもと差し出してプルプル揺らしてみたところ、ものすごい反応があった。
プリンにとてもなんというか激しい反応をなさっているラムにこちらがびっくりだ。
プルプルとふるえるプリンに合わせてラムも揺れる。ぴったりと揺れを合わせてダンスを踊るように情熱的にプリンにアプローチするラム。
つまり、なんていうか。一目惚れ?
「喜んでもらえて嬉しいのだけど」
嬉しいのだけど、これは。
「求愛行動、ですねー」
ミィールさんの目がキラリと光り、研究者の眼になった。
「ここはあれでーす。あとは若い二人にまかせるのでーす!」
「ちょっと待って! まかせてどうなるの!?」




