145 猫の日小話 にゃん
遅くないとおっしゃっていただけたので猫の日小話を置いておきます。
今日2月23日はきっと「にゃんこにーさんの日」
ということでジュドが出てくる話なら許される、のではないかと。
「サキか。よく来たにゃ」
なんて?
ジュドさんの家にお邪魔したら家主が迎えてくれた。
それは良いのだけど。
「えっと、こんにちは」
動揺しつつ挨拶をする。うん、挨拶は大事。
「ああ、こんにちはにゃ」
いつものごとく端正な良いお顔から聞こえてくる良い声、その語尾が……。
聞き違いじゃなかった!!
思わず目を見開いてしまう。多分瞳孔が開いていることだろう。
固まっていると、ジュドさんの背後から軽い足音が聞こえた。
あの子が駆け足でやってきているのだろう。
「サキさん、いらっしゃいませにゃん!」
ああああ、可愛い。なんだかさっきの衝撃が吹っ飛ぶ問答無用の可愛さのルーナだ。
なんなの、にゃん! ってにゃんってなんなの!?
「ルーナ、こんにちは」
「こんにちはにゃん!」
飛び切りの笑顔が輝く。ルーナの耳がぴるぴると動く。
その破壊力に膝から崩れ落ちる。
あまりにも可愛い。たまらない。可愛いがすぎる。
「サキさん、どうしたのにゃん。大丈夫にゃ?」
心配そうに目尻を下げて、手をこちらに触れて良いのか迷うように差し出すルーナが天元突破して可愛い。
「大丈夫、大丈夫だからちょっと待って……」
可愛いを咀嚼する時間が欲しい。胸を押さえる。動悸息切れがすごい。
「今日は猫族に伝わる特別な日で、語尾に『にゃ』か『にゃん』をつけることが推奨されるにゃ」
ジュドさんから説明を受ける。
えっと、今日は2月22日。
なるほど、猫の日!!
いやはやそんな伝統が!? 誰得なの? 私得!?
猫族みんな今日はこんなことになるの? 老若男女全員? ろうにゃくなんにょって言いにくいな、これに語尾がにゃだと「ろうにゃくなんにょにゃ」になって難易度があがりそうだ。
しかし、なんというか、イケメンの淡々とした『にゃ』破壊力がすごい。
ルーナの『にゃん!』とは方向性の違う破壊力がある。
「猫族さんたちみんな『にゃん』ってなるの?」
想像してしまう。渋いおじさまの『にゃん』を。うん、まあそれも良し!
「みんなじゃないんだにゃん。おばあちゃんが教えてくれたからうちでは毎年やるにゃん!」
ルーナも説明してくれた。なるほど、猫族全部がやるというわけではないのだね。信心深いというか、昔からやっている家はやる風習みたいなものか。
しめ縄も昔は自動車や自転車にもつけていたけど、今は田舎でもつけている人はまれだ。そんな感じの風習なのだろう。
一日『にゃ』や『にゃん』を語尾につけて過ごすと、ちょっとした幸運が訪れるのだそうだ。
ちょっとした幸運。
身体が弱かったルーナのためにも、その風習を続けていたのだろうか。
せっかくなのであやかりたいな。
「私もやってみようかにゃ!」
私がそう言うと、ジュドさんが手のひらを口に当てた。そこから封じきれなかったグゥという音が漏れる。肩が震えている。
うん、我ながら似合わない語尾だ。
けれど、満面の笑みでルーナが、
「嬉しいにゃん!」
と言ってくれたら今日は良い日なのだ。
もうすでにこの笑顔がちょっとした幸運だ。即効性のあるご利益だなぁ。
ちなみに、マーサさんの語尾はいつも通りだった。恥ずかしいのだそうだ。
まあ、マーサさんは人族だよね。
でも、マーサさんの『にゃん』聞いてみたかった。




