142 チョコを配ろう
チョコレート
それは魅惑の食べ物である。
もうすぐこちらでの2月14日をむかえる。
バレンタインデーだ。こちらにはない風習ではあろうけれど。
チョコを食べたい。そして一人で食べるのは気が引けるので、
友チョコ、配りたいこの気持ち。
イベント事には乗っておくのが吉である、と思う。
昔むかし、何気なく小学校の校長先生にもチョコを配ったら、ホワイトデーになぜかブランデーが返ってきたことがあった。
どうして小学生にブランデーを返してきたのか本当に謎すぎた。
当然飲めるはずもなく、ずっと実家のカップボードに飾られていた。多分ジャズゴで買ったんじゃないかな、と思われるそのお酒を思い出す。
そういえば、お酒が中に入ったチョコもあるよね。ウイスキーボンボンってどうやって作っているのだろう。液体を中に? どうやって?
中から液体がぴゅっと出てくるといえば小籠包だけど、あれは煮凝りを入れるらしい。ウイスキーにも煮凝りってあるのだろうか。
まあ、ルーナにも渡したいからアルコールは不可だ。
ここはチ□ルチョコでもばら撒くかなーと思った。けど、食べたことがない人にはチョコってなんていうか、多分食べるのに勇気がいるよね。黒だったり茶色だったりのブロックってあまり食べ物っぽくない、気がする。
見慣れているとなんとも思わないけど、初見だとあのビジュアルはちょっとどうなんだろう。美味しそうとは思えない気がする。
そういえば、昔オンラインゲームをやっていた時に、ファンタジーなオンラインゲーム内にチョコなんてないので、ブロンズインゴットを配ってみたことがある。
取引画面でインゴットを一つだけ渡された相手が困惑していたのが面白かった。
食べれないけど、見た目はチョコに一番近いと思ったのだ!
その後にやった冒険したり交易したり戦闘したりするゲームでもチョコがなくて、あったのはカカオを使った飲み物だった。
香辛料入りのカカオドリンク、史実的には正しいんだろうけど、チョコかと問われるとちょっと違う気がするね。
そのオンランゲームではカカオ自体は買えたのだけど、カカオをそのまま渡すのはどうなのだろうと思った記憶。
昔の漫画で、バレンタインに野生的な少女が海を泳いでカカオの実を取りに行って手作りチョコを作るのを読んでから、カカオからチョコを自作するのに憧れがあった。
けれど、カカオ豆からの作り方を調べてみて絶望した。
無理だ。読んでるだけでひたすら面倒だった。特に口当たりをなめらかにするためには本当に細かくすり潰さないといけないらしい。無理。
世の中のチョコレートは手間ひまがかかりすぎている。
テンパリングって言葉は聞いたことがあったけど、私がやったらテンパるからテンパリングなのかなって思った。
っと、カフィ豆があったのだからこの世界にもきっとどこかにカカオ豆もあるのだろうと思う。
多分、これまた薬の材料とかなんだろうなと。
もともとは薬だしね。チョコも。
コーヒーについてはたままた桃瀬さんが極めていたからなんとかなったけど、さすがにチョコも極めているということはないだろう。ないよね?
定期通信の時に一応桃瀬さんに聞いてみた。
「チョコを自作、ですか? ブラウニーなら作ったことがあります! どうぞ」
うん、ブラウニー美味いよね。レシピ覚えてないけど。
「えっとそうじゃなくて。豆から?」
「カカオからチョコを作ったことがある日本人、かなりレアだと思いますよ?」
私は作ったことありません。と言われた。だよね。いや、コーヒーに詳しかったからもしかしてと思っただけだ。
ブラウニー、誰に作ったのかちょっと気になるけど、そこは聞かないでおこう。
んー、まあ元より無理だろう自作はさっくりとあきらめて、私に出せるチョコで食べやすそうなものを考えようか。
って、チョコを自作じゃなくて、ブラウニーみたいなチョコ菓子を自作ならいける?
見た目も少し茶色くなるけど、チョコそのものよりはとっつきやすいだろう。
いつも作っているごまクラッカーレシピのごま部分をカカオパウダーにすればチョコ味のクラッカーになるかなぁ。
てか、カカオパウダーをOKとするなら、カカオ味で良ければ出せるお菓子の範囲が広がる。
ああ!
思えばルオクドもカカオ風味、だった。
千円リピートでルオクドを出す。サクサクのクレープ生地をチョコクリームでコーティングしたこのとても美味しいお菓子。
これだ!
私の能力がバレてる相手にはもうこれで良いのではなかろうか。
バレてなさそうな人にはココア入りのクラッカーということで。
勇者たちにはどうしようか。安くて美味しいチョコ。
業務用スーパーで買っていたドイツ産のチョコにしようか。
安い割に美味しいんだよね。
でも食べ慣れたものの方が良いのかな。チ□ルチョコか、あとなんだっけ、あれ、義理だと分かるチョコ?とか。
そういえば、受験のお守りに、語呂合わせで選ばれるチョコは、勇者たちにもぴったりだね。
コンビニで買えるひとくちチョコも美味しいやつあるし。迷うなぁ。
ちょっとずついろいろ出しちゃおうか。
毎日少しずつ千円リピートで出して準備した。
14日当日。
チョコに想いを載せて渡せるこの行事は国や地域によって少しずつ違う。
だから、ここで私がマイルールでやっても良いだろうと思う。
いろんなチョコレートを少しずつ詰め合わせたものを黄野くんに託す。
自分の分をさっそく開けた黄野くんが奇声を上げて喜んでくれた。
「ぎゃー!! チョコ!! 俺、黒雷大好き! 嬉しい」
良い笑顔だ。ふむ、黄野くんは黒雷好きかー。
青井くんがアーモンドチョコを好きなのは聞いていたからアーモンドチョコも入れておいた。事前にそれぞれ好きなチョコを聞いてから作れば良かったかなぁ。
まあ、チョコを渡すことに意味がある。食べてくれたまえ。
キララの前にルオクドを供える。
「いつもありがとう! キララ」
拝んで感謝する。
キラキラと目を輝かせたキララ。
「こんなに食べても良いのか?」
「いいよ。いっぱい食べて。他にもあるよ」
今日は特別だ。
ルオクド以外にも勇者たちのために少しずついろんなチョコを出してみたから沢山種類がある。
「ミミもいつもありがとう。ミミはどれがいいかな?」
ミミにもルオクドを供えて拝みつつ聞いてみる。いろいろ味見して、ミミが特に気に入ったのは麦チョコのようだ。
「これ、おいしい」
ひと粒ずつ、食感を楽しみながら大事に食べている。
麦チョコ美味しいよね。麦チョコを食べるたびに思い出す漫画があったりする。
「ジルじいー。お茶しよう!」
ジルじいの家に押しかけてお茶をねだる。良い茶葉を持っているのは知っているのだ。
「ええぞ」
ジルじいが丁寧に淹れてくれたお茶。そのお茶請けにルオクドを出して食べてもらう。
温かいお茶に気持ちがほっこりする。美味しいお茶だなぁ。
「なんじゃこりゃ。うますぎじゃ」
サクサクのルオクドはジルじいも気に入ってくれたようだ。少しこぼしながらも完食。
思えば、私がこの世界のものを最初に飲食したのは、ジルじいが淹れてくれたお茶と出してくれた焼き込みパンだった。
とても美味しかった。
あの時、物がいっぱいだった台所は今はとても整頓されて使いやすくなっている。ミミやキララと共に来ることも多いのでいつの間にか小さな椅子が増えた。それを嬉しいと思う。
その後も、あちこちに自作のごまクラッカーとココアクラッカーを配って。
そして、ジュドさんの家にも突撃。
ルーナにルオクドを食べてもらおう。以前食べているから抵抗はなかろう。そしてどうせならフランス王朝菓子の他の種類も堪能してもらおうではないか。
あのシリーズ、基本チョコを使っているから。ホワイトチョコ系ならそこまで抵抗はないだろうし、チョコの色が濃いものも、クッキー生地と一緒なら、ステップアップに良いのではないか。
案の定、ルーナはあまり抵抗感なく、いろんな種類の王朝菓子を食べてくれた。
「どれも美味しい! サキさん大好き!」
ほっぺたを押さえて笑うルーナはとてもご機嫌だ。美味しいものは幸せだね。
どうやらホワイトチョコがお気に召したようだ。甘くて美味しいもんね。見た目もルーナによく似合っている。
「うまいな」
ジュドさんはチョコビスケット派か。なるほど。猫ちゃんにチョコは禁忌だが、人型なら問題ないらしいから問題ない、うむ。この感じなら板チョコとかも食べれそうだね。
「あらまあ。どれもびっくりするほど美味しいわ。でも、どうやって作っているのかさっぱりわからないわね」
うん、私にもさっぱりわからない、素晴らしい技術の数々だ。でもマーサさんなら再現してしまいそうな気がするけど。
たくさんあったチョコ菓子はみなにもらってもらって綺麗になくなった。
ハッピーバレンタイン。
この異世界で私を受け入れてくれた人達に感謝を!
214に間に合いませんでした……。
でも142話がチョコ話なのはなんだかいい感じな気がします。
いつも応援いただきありがとうございます。
「異世界、一日千円で生き抜きます」書影も公開されています。
口絵もAmazonさんで見れます。
活動報告にリンクを張りましたので、ご覧いただけたら嬉しいです。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2699784/blogkey/3578982/
ミニトマト飴が美味しそうすぎです。とてもつやつやです。




