13 やらかした のでそのまま協力要請
美味しい夢中で食べて至福に浸っていたのだけれど、現実に戻る時間がやってきた。
そう、こちらを見るジュドさんの眼に冷静さが帰ってきた。
あっ、これはやらかしたやつ?
色々細かく考える割に途中でもういいやってなるのと、良い思いつきだと思うとやるまで止まらなくなるのが私の悪いくせなのだ。これで何度失敗してきたことか。
だけどいつもならもっと警戒していた。マッシュくんに似ているジュドさんが悪い。なんか知らないけど警戒心が溶けるのだ。大丈夫な気がするのだ。
「魔法のスパイス。必要か?」
こうなったら開き直ろう。
戸惑いつつも頷いたジュドさんの串に手をかざして、ふと迷う。
「ニンニクやハーブは大丈夫?」
猫ちゃんってネギやにんにく駄目なのでは?
あれ? でもこのお肉に挟まってるお野菜玉ねぎ系だよね。食べてたよね。
「この姿なら問題ない」
なんかよくわからないけど問題ないらしい。じゃあいっか。
ジュドさんの串も美味しくなーれ!
2円分ぽちっとな。
お湯をチョロチョロ出すのはかなりな難易度だったのに、スパイスをふわっと全体的に出すのはすごく簡単だ。
この能力お料理にむいているのではないか。
魔法のスパイスが振りかけられた串をじっと見たジュドさんが慎重な手つきで串を口に持っていく。
一口食べてかっと目を見開いた後、すごい勢いで肉が口内に消えていく。
うんうん、美味しいよね。いやーこのマーサ牛すっごいうまい。美味しい。語彙がないのがつらい。
「旨かった」
親指で唇を拭い、もう肉のない串を名残惜しそうに見やってから筒の中に串を捨てたジュドさんがこちらを見る。
おそまつさまでした。
「が、さっきのは一体なんだ?」
やっぱり、聞かれるよね。もう正直にぶっちゃけましょう。
声を潜めて口の前に指を立てる。教えるけど内緒にしてね。
「妙なスキルがいきなり生えて、いろいろな物が少し出せるがよくわからない。さっきのはかければ全てのものがうまくなる魔法の粉。以上」
いやほんとそんな感じなので。
目立つの駄目絶対って思っていたけど、この世界魔法があるわけだし、魔法があればなんでもありなのではなかろうか。きっとなんか物が出せる魔法もあるでしょう。この世界にもありそうなものなら出しても問題なし。塩と香辛料を混ぜたものはセーフセーフ。
「特殊スキルか」
私に合わせて声を潜めてくれた。優しいな。
「いろいろ検証したいのだけど、よくわからなすぎて扱いかねていて……。広くて人目につかず多少爆発しても問題ない場所を知らないか?」
その優しさに頼らせてもらいたい。ほんと検証したいんだけど爆発しても良いところってどこよ。
「爆発!? するのか?」
うん、多分……
「可能性が、ある……」
考え込んだジュドさんだが、しばらくすると、
「明日でいいなら、案内できる」
と言ってくれた。
いやー頼んでみるものだね。協力者ゲットだ。
明日の朝、冒険者ギルド前で待ち合わせということで解散。
引き続き市場を見て歩く。
私は、ストレージの居心地を改善すべく、寝る時に下に敷くものを求めている!
マットレスっぽいもの、売ってないかな。
そう思っていたら毛皮を取り扱っている店が目についた。
もっふもふが沢山ある。
立派な一枚ものの毛皮はお高いだろうけれど、私でも買えるものもあったりしないだろうか。
「すまない。このあたりの毛皮の値段は? あと、触っても?」
パッチワークな感じで色々な色の毛皮を継いである敷物が入った籠を発見して尋ねる。
「触る前に聞いてくれるなんて珍しい人だねぇ。いいよ、触って触って。そっちのはツノウサギの毛皮の端切れであたしが作ったのさ。小さいやつは2000ゴルド、大きめのが5000ゴルドだよ」
ふわふわの気持ち良い手触りに撫でる手がとまらない。この手触りでそのお値段はお買い得なのではないか。パッチワークするのに手間暇かかっているだろうに。
「この小さいのを2枚、もらいたい」
2枚並べれば寝るのに十分だろう。
「ありがと! これはおまけだよ」
おまけに革で出来た小袋がついてきた。キュッと口を縛れるタイプで小銭入れにちょうどいい大きさだ。
こんな袋ほしかった!
いい買い物ができたとほくほくの気分で足を進める。次に手に入れておきたいのが容器だ。
ちょっと考えたのだけど、ハンバーガーの時は何も思わずに出したけれど、牛丼を買ったらどうなるのか。テイクアウトで買っていれば問題ないだろう。けれど、
店内で食べたものってどうやって出てくるの?
買ったと言えるのは中身のみではなかろうか。だって器は返すんだし。箸はもらおうと思えば持って帰れるだろうから買ったと言える?
試すなら器を用意してからの方が安全な気がする。とてもする。
もっと早く気がついていたらジルじいさんに交渉できたのに。
器はどこだーっと探していると、フリーマーケットのように雑多なものを並べているところがあった。
食器もならんでいる。
木の器があったので手に取る。軽くて割れないのが良い気がする。
丼くらいの大きさのものと、コップ状のもの、お皿、最低限あったら便利なのはこの3つだろうか。丼は2つあった方がいいかな。4つで800ゴルドだった。
とりあえず、欲しいものが手に入ったので市場を後にして人通りが少なそうな方向に進む。物陰に隠れ、ストレージを出して中に入った。
洗濯物はもうけっこう乾きかけていた。
さっそく、もふもふな敷物を置いてみる。段ボールよりもかなりグレードアップした寝床だ。
今日の残額は510円。
これを消費してしまおう。
明日は検証に残しておきたいので、明日使いそうなものを出しておくのが吉か。あと、できれば礼になりそうなもの。
とりあえず、朝食用に食パン出そうか。食パンなら半額食パン買ったことあるからえっと98円の半額で49円か。
サンドイッチでも作りたいところだけど、今から出して明日食べるとなると食材に悩む。あっ、それこそラン◯パックやス◯ックサンドという手があるのではないか。
ツナマヨとたまごとピーナッツの3種類を買っておけば間違いない!
検索するとどれも98円で買ったことがある。3種類で294円。
あとはスパイスを小分けで渡せるように準備しておこうか。あの味気に入ってくれてたようだし。
えっと何に入れるかな。紙で薬包みにしちゃえばいっか。
クラフト紙を3枚6円で購入して切って、スパイス2円分をちまちまと包んでいく。10包くらいあればいいかな。
残りはとりあえずレーズン買って消費しておこう。レーズン美味いし、人にあげやすい!
千円リピート購入物
手ぬぐい 110円
ニットキャップ 110円
食器用洗剤 5円
重曹 10円
OPPテープ 1円
45リットルゴミ袋 4円
お湯(41℃) 7円
ショーツ 49円
スポーツブラ 108円
靴下 29円
石鹸 33円
45リットルゴミ袋 4円
水道水 1円
荷造り紐 5円
う◯い棒 10円
スパイス 4円
半額食パン 49円
ラン◯パック3種類 294円
クラフト紙3枚 6円
スパイス 10円
レーズン 151円
本日の残額 0円
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。