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異世界で一日千円分だけ自分が買ったことがあるものを出せる能力でなんとか生き抜きます  作者: 相内 友
第十章 勇者、来襲!

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126/131

126 誕生日プレゼント

 実験的に、一連のトルマリンのビーズを二回買って、並びを全く同じにしたブレスレットを作ってみた。


 私では時間がかかりすぎるので、ジルじいに作ってもらったら……。何あの速さ。怖い。ものすごい速さで正確に精密にメガネ留めされていく、機械みたい。見てて楽しい。素晴らしい。ブラボー! 今度コツを教えてほしい。弟子入りしたい。


 結果、数を増やしたことで共鳴力があがったのだろうか。


 昼間でもなんとか通信可能になった。これはなんというか、ラジオというより、簡易トランシーバー? みたいな。昼間は聞こえにくく、途切れることもあるけど、まあなんとか聞こえる。夜だとすごくクリアだ。

 ネックレスにすればもっとはっきり聞こえるのかな。でもあまり長いと邪魔かなぁ。そこらへんはまだ要研究だ。


 いろいろ試してわかったのは、スイッチとなるのは相手を強く思い浮かべること、のようだ。確実なのは名前の呼びかけ。双方のトルマリンブレスレットが肌に触れている状態で呼びかけると繋がるみたい。


 ラジオもなぜがアンテナに自分が触れてる時だけ雑音が減ったりするよね。あんな感じなのだろうか。


 ちなみに、同じように別のビーズ、ブラックスピネルで試してみたけれど、こっちは反応がなかった。ふむ、通信に向いているのはトルマリンだけなのだろうか。蛍石、フローライトあたりもいけそうな気はするけれど、フローライトのビーズは買ったことがない。


 あ、でも。

 百均で売ってたね。フローライト。300円商品だったけど。そして石としてじゃなくてディフューザーとして。


 へいかい? 違うな、なんだっけ、あの八面体に割れる性質、あれをやってみたくて買ったことがある。

 あと、磨いてみたくて!


 ということで出してみたフローライトの原石? を見たジルじいが目を見開く。

「サキ、それは光石か!?」

「蛍石、だけど、光るかと言われると光る?」


 確か、熱すると光るんだっけか。ブラックライトで蛍光するから蛍石、なんだよね。

「光属性の魔石は貴重じゃ。しかもけっこう大きいのう……」


 驚いているところ申し訳ないけど、これ、百均製品だから多分そんなに品質は良くないと思う。


 それに大きさでいうなら、昔どっかの博物館で見た蛍石はものすっごく大きかった。なにあれ? ってくらい、本当に大きかったので記憶にすごく残っている。50センチ以上あったのではなかろうか。


「しかも、それ、紫が混ざっとるの。他ではあまり見せん方がええぞ」

「そうなの!?」

 そんな貴重なの? 低品質でも?


「ん、宝石としての需要より、触媒としての需要が高いんじゃ」

 つまり、透明度とかはあまり関係ないのか。純度が問題だろうけど、純度が低くても量で押せばいいわけで、大きい光石は価値が高い、と。


「了解。じゃあジルじい、これお願いして良い? よろしく」

 持っているのが怖いから、ジルじいに蛍石を渡す。

 私では加工もできないし、ジルじいが割るなり削るなり磨くなりして使ってほしい。


「ほいって渡されても困るんじゃがのう……」

 眉間にしわをぎゅぎゅっと寄せられた。ジルじい基本顔がちょっといかついからそんな顔をすると怖いよ。眉間のしわって指でのばしたくなるよね。のびろー跡になるなーっていつも思う。

「通信機に使えないかと思って出したので、なんとかこう実験に使ってもろて……」

「仕方ないのう。そうじゃ、この通信できる魔道具もかなりな危険物じゃぞ。わかっておるのか?」


 なんとなくだけど、うん。それは。

 通信って戦略的に重要なものだよね。こちらの世界に電話はないらしいし。通信は基本お手紙。一応モールス信号のような、魔道具でごくごく短い文を伝える方法はあるようなのだけど。


 それを使うよりテイマーがテイムした動物や魔物に手紙を運んでもらう方が一般的だ。伝書鳩の高速版みたいなのがある、ってことだね。


 そういえば伝書鳩? レース鳩? 昔は宅配便で送れたらしい。そんな話を聞いたことがある。専用の箱もあったとか。


 今でも生き物とはちょっと違うけど植物は少しお得な料金で送る方法があったりするからその一種だったのかな。


 あ、生き物カテゴリだと、蚕の卵も第四種で送れるよね。興味はあったので一度買いたい気はしていたのだけど、買ったことはない。封筒で送られてくる卵、見てみたかった。っと思考が飛んだ。えっと通信の重要性だよね。わかっている。わかってる。


「秘密で! でもきっと役に立つからこっそり身内で使いたい、なっと……」

 ジルじいにため息をつかれた。でもほら、勇者たちと定期的に連絡が取れたら良いなっと思うのだ。黄野くんが来てくれるのを待っているだけ、というのはなんというか気持ちがほら。心配になるから、ね。


 お願いしたらちゃんと作ってくれるジルじい、好き。頼りにしている。


 それに、ジルじいも嫌いじゃないよね、こういうの実験して開発するのは。そう言うと「それはそうじゃ。好きでなければやっとらん」と、にやりといたずらっぽい笑みが返ってきたので、うん、問題なし!




 ジルじいにこっそり作ってもらったトルマリンブレスレット通信機を、桃瀬さんに差し出す。


 いつも全員だと私が大変だろうからと、勇者たちは気を使ってかバラけて来ることも多い。そんな気にしなくていいのだけど。ただ、桃瀬さんだけの方が、桃瀬さんが楽な時もあるだろうなと思うので、そこは勇者たちの調整にまかせている。


 桃瀬さんに渡すに当たって、ブレスレット通信機はピンク系統のトルマリンで作った。可愛いよねピンクトルマリン。


 ブレスレットを見た桃瀬さんが目を丸くしている。あっ!

「もしかして、ピンクトルマリンは苦手だったりする?」


 女の子といえばピンクという連想はちょっとあれだよね。桃瀬さんの名前からも連想しやすいけど、好きな色は違う可能性もあった! だめだねぇ。古い考えに凝り固まっているのは。

「お姉さま、これは……? ピンクトリマリンって、私の誕生石をご存知で?」

 うるっとした眼でみつめられて心臓がトクンっとなった。美少女の眼力、とても強い。あ、良かった。驚いていただけっぽい?


 えっ、そうなの? 私も10月生まれだけど、桃瀬さんも? 10月の誕生石はトルマリンとオパール。トルマリンとだけなっているものもあるけど、ピンクトルマリンとなっていることも多い。


「10月生まれなんだ。何日?」

「10日です」

「ああ、体育の日」

「?」

 怪訝な顔をされた。そういえば、もう体育の日ではないのだっけ。え、もしかして桃瀬さんくらいの年齢だと、生まれてからずっと体育の日って10日じゃないのか。 

 なんだかショックだ。


「め、目の日だね!」

「あ、はい」

 ごまかせた! 目の日? 眼鏡の日? 桃瀬さん、きっと眼鏡も似合うと思う。うん。あ、眼鏡の日は10月1日だった?


 そういえば、こちらの一年は360日だ。一年を12に分けているのは一緒だけど、一年で一番日が短い日が1月1日らしい。1ヶ月は30日、そして一週間は10日だ。


 つまり、こちらの世界と日本とでは10日±αくらいのズレがある。まあ大体同じだからそんなに違和感なくなじめている。ここらへんの気候が日本の温暖な地域と似通っているのもありがたい点だ。


「えっと、まだなんだかよくわからないんだけど、同じものをつけていて呼びかけると通信ができる魔道具? が偶然できて。だからテスト的に持っていてほしい。ちょうど良いから誕生日プレゼントだね」


 こっちの日付だともう10日は過ぎてしまっている。でもこの日付を日本に直すとちょうど桃瀬さんの誕生日あたりじゃなかろうか。

「!! 嬉しい。つけてください」

 ぱぁっと花が咲いたような明るい笑顔で白い腕を差し出される。手首ほっそ。

 こんなついでじゃなくて、ちゃんとしたプレゼントあげたいなぁ。でも今の子が喜ぶもの、さっぱり想像がつかない。日本ならゲーム機とかだよね、きっと……。


 まあ、これで連絡が取れるようになったので何事もなければ夜に定期連絡してもらうことに。ダンジョンに入っていたらどうなるのかとかも、テストだね。

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― 新着の感想 ―
年末年始に仕込むとその辺りに生まれるのよね……自分もですけど。
へき開と言えばダイヤモンドを詐欺する話を思い出しますね
トゥンクしちゃったかな
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