表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/123

12 市場に行こう 肉を食おう

 さて、まだ日が落ちるまでは時間がありそうだ。

 この中だけでは検証が進まない。どこまで離れても出せるのかとか気になるところだ。

 外に出て街の様子を見つつスキルも調べたい。


 ただ、調べたいことの大半が爆発炎上系なので街の中では無理だろうと思う。街中で爆発は駄目だ。

 外なら良いってものでもないだろうけれど、物騒な検証は明日以降街の外でやろう。

 とりあえず、マチルダさんに見せてもらった地図にあった中央広場、あれを目指してみよう。


 マントを羽織りカバンを背負う。鏡が欲しいな。まあそんな変な格好ではないだろう。

 物置のドアを開けて、人通りがないことを確認してからストレージから出る。

 ここからだと広場は確かあっちの方向のはず。


 っと、人がいない間にどのくらいの距離で物が出せるのか試してみたいけれど、適当な出すものが思い浮かばない。

 10円くらいまでで上から落ちてきても危険がない軽いもの。

 もう、う◯い棒でいっか。


 上を見上げて、うま◯棒10円を買ってみる。

 出た。

 かなり上に出せた。別に集中とかも必要なくあっさりと。

 落ちてきたう◯い棒を拾ってカバンに入れる。あの位置に出せるならペットボトルを箱買いしたらかなりの落下エネルギーになると思う。


 油断している動物くらいなら仕留められたりするかもしれない。

 横方向は、っと人が来た。何気ない素振りでただ歩いているだけですよーっとすれ違う。

 少しずつ通りに人が増えてきた。


 たどりついた広場の一角には物を売る屋台が並んでいて市場のようになっていた。

 雑貨もあれば食べ物も並んでいる。どこかで肉を焼いているのだろうか。香ばしい匂いが漂ってくる。

 匂いに導かれるように歩いていくと、行列ができている屋台が見えてきた。

 きっと美味しいんだろう。好奇心から最後尾に並ぼうとして気づく。

 前の人の頭に猫耳がついている。思わず、口を抑えて漏れ出そうな声をこらえる。


 じゅ、獣人来たーー!!


 ただ、猫耳がついているのは可愛い女の子ではなく、薄い茶色に灰色が混じった髪色をした背の高い男性だ。冒険者なのだろうか、腰に大きな剣を下げている。

 自然と腰のあたりに漂う長くゆったりと揺れている尻尾を見つめてしまう。

 そのうす茶と灰色の縞模様の尻尾に、猫カフェで推していた猫を思い出す。マッシュくんを撫でた時のあの極上の手触りを。

 思わず見すぎてしまっていたのだろうか。視線を感じたようで男がこちらを振り返った。


「何か?」

 深い緑の瞳。目の色もそっくりだ。そして、顔が良い。顔面偏差値が高い。彫りが深い。


「っ! 申し訳ない。知り合い(の猫)に似ていて……」

「そうか」

 男はうなづいて目を細めた。その仕草も本当にマッシュくんにそっくりで思わず人差し指を差し出して指を上下に揺らし四拍子を取ってしまう。いつもこうするとマッシュくんは寄ってきてくれたのだ。


 一瞬驚いたように目を見開いた男が、ふっと笑ってかがんで指に鼻をちょこんと当てた。

 その後右手を胸に当て優雅に腰を折る。

『サンダールのジュドが猫族が受けし親愛に親愛をもって応える』

 歌うような不思議な抑揚のある言語だ。意味は翻訳さんが伝えてくれた。


「かなり親しい猫族がいるんだな。人族にされたのは初めてだ。ジュドと言う。よろしく頼む」

「サキ、です。ああ、もう会えないんだけど……。こちらこそよろしく」

 こっちの猫族への挨拶も指ちょんで良いの???

 いや、どうもあんまり一般的ではなさそうだね……

 この感じ、私がめちゃくちゃ好意を示したみたいな感じなんだろうか。


「匂いに引かれてきたんだけど、ここのは美味しいのか?」

「ああ、マーサ牛の串焼きは絶品だ」

 味を思い出したのかちろりと見えた舌が艶めかしい。


 そんなに美味しいならこれは食べてみなくては。いそいそと列に加わる。


 並んでいる人数の割に回転が早く、ジュドさんと私の順番はすぐにやってきた。

 木の串に角切りにした肉が何かの野菜と共に刺さっている。見た感じ、脂身はそれほどなく赤身主体の肉だ。

 たまらないのは匂いだ。香ばしい肉の匂いをかいでいると自然に唾液が湧いてくる。

 筋肉がすごいマッチョな親父さんに、

「1本お願い」

 と大銀貨を差し出す。


「まいどあり!」

 っと渡された串とおつりを受け取る。9枚の銀貨が返ってきたってことは1000ゴルドだね。

 少し離れた場所に腰掛ける場所があるのでそちらに向かう。テーブルの上には食べ終わった串を入れる筒と塩が置いてあった。


 熱々の肉にかぶり付くと口内にじゅわっと肉の旨味が広がった。

「うっま!!」

 思わず声が漏れる。

 隣では3本買ったジュドさんが同じく肉にかぶりついている。あ、牙が見えた。私の声を聞いて目を満足気に細めた。うん、言ってた通りほんと美味しい。


 これは肉が美味い。とても美味い。赤身なのに驚くほど柔らかくて噛むほどに濃厚な肉汁が湧いて出る。脂もしつこさはないのに旨味が濃い。

 味付けはシンプルに塩のみだ。

 それだけでびっくりするほど美味しい。幸せだ。

 ただ、なんていうかこう、もっとこうものすごいポテンシャルがこの肉にはある気がする。

 君はもっと美味しくなれる!!


 そう、3大アウトドアスパイスと言われているあれらを掛けたらすんばらしく美味しく食べられそう。絶対に美味しい。醤油かにんにくか香草か、どれが一番合うだろう。


 どれも買ったことがあるので迷うけれど、ここはにんにくを効かせたい気がする。

 使う時に確か一振り2.5円くらいだなって思った記憶があるので、2円分どばっとじゃなくふわっと全体的にかかるように出せないかやってみる。

 できてしまった!

 満遍なく綺麗に振りかけられたスパイスがとてもかぐわしい。

 テーブルに追い塩が置いてあるのだ。自分で味付けを調整するのはマナー違反ではないだろう。


 かぶり付くと、それはもう至福の味がした。魔法のスパイスだ。ほんと一振りで劇的に味が変わる。深まる。階位があがる。この挟まった野菜も美味い!

 夢中で食べてしまう。


 美味しいって幸せ!

誤字報告ありがとうございました。とても助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
個人的な感覚ではありますが、12Kgの物が10m上空から落ちてきたら、成人男性でも亡くなったり重大な怪我を負う可能性の方が高いと思います。 砂袋30Kgの方が無事だったのは、恐らく以下の要素からではな…
1日お風呂に入ってないだけで人って結構臭う。電車とかバスとかでそんなのが近くにいると結構つらい。 お風呂に入れないかの状況。獣人さんとか五感が強そうだから、速攻女性ってバレそうな気がする。
ネコチャン来たーーっ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ