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異世界で一日千円分だけ自分が買ったことがあるものを出せる能力でなんとか生き抜きます  作者: 相内 友
第十章 勇者、来襲!

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114 ロックタートルの一番美味しいところを味わおう会

 マーサさんの言う通り、ロックタートルさんのお肉は、食べやすい大きさに切って、ちょっと良い塩を振って焼くだけですっごく美味しかった。


 お塩、こだわって良いやつを買いがち。そしてもったいなくて使いこなせなかったりする。ヒマラヤピンクソルトとか買うよね。あとピラミッド型のサクサクのお塩とか!


 お塩ならこっちにもあるから、私が能力を使って出したことは桃瀬さんにバレにくくて良い。

 能力を使って高いところからパラパラと均等にまぶされたお塩。千円リピート能力の微妙な進化。それによってより繊細な、ふわっとパラパラが可能になったことがこんなところに生きるとは。至高の塩加減、極めた気がする。


 ロックタートルのお肉は綺麗なピンク色をしていた。焼いても少し茶色くなるけれどそのままピンクだったので、これちゃんと火が通ってる? と思ったけれどこの色でちゃんと火が通っているようだ。


 最初に口に入れた時の味わいは鶏肉に近い感じ。鶏肉の旨味が濃厚になったような。でもちょっと赤身のお魚、マグロとかカツオみたいな感じもあって面白い。とにかく旨味が濃厚で、ぷりぷりとしたコラーゲンっぽい食感もあって噛み応えがある。

 かめばかむほど味が出てくる感じ。カメなだけに。


 スープにもとろとろのコラーゲン? が溶け込んでいて、これはお肌に良さそうですねっていうウマウマスープだ。ルーナが丁寧にアクをとってくれたのとマーサさん特製のブーケガルニによって臭みはない。いろいろな部位のお肉も煮込まれたことによってほとんどは柔らかく蕩けるようで、舌で押すだけでとろりとほどけるお肉、うまし。


 中には煮込んでも少しコリコリとした食感を残す部位もあってそれはそれでおもしろい、美味しい。

 一度すべての旨味をスープに放出したお肉が、そのスープのエキスをスポンジのように再度吸い取って最高に旨くなるこの感じ、煮込み料理のいいところだよね。じゅぶじゅぶに美味しくなったお肉、大好き。


 このスープをベースに、美味しいお肉もたっぷり足して作ったカレーは、そりゃあ美味しくなるしかない。

 あれですよ。蕎麦屋のカレーがうまい理由と、焼肉屋のカレーが美味しい理由があわさったような。


 蕎麦屋のカレー、妙に美味いのは出汁が美味いからだよね。ちゃんとしたお出汁がカレーの旨さを何段階かあげちゃうやつ。焼肉屋のカレーが美味いのは、良いお肉の切り落としを使っちゃうからで。


 さらに、マーサさんは日本のカレールーの味を学習したことにより、スパイスカレー寄りだったカレーを、日本のカレーに近づけてくれたのだ。


「多分、あの味はかなり油脂が多めね。このスープを使えばとろみはけっこう付くけれど。もう少しだけとろみをつけたいからじゃがいもを煮溶かす? それとも炒めた小麦粉を入れた方が……。少しまろやかさも欲しいから、んー」


 味見をしながら、魔法の様にささっと加えられるアレンジ。あっという間になんとも懐かしいカレーに近づいていく。びっくりだ。


 そうやってマーサさんとルーナと共に作った料理で開催された「ロックタートルの一番美味しいところを味わおう会」がどうなってしまったかというと。


「え、ロックタートルのスープ、すっごい美味しい。想像を超えた」

 スープにこだわっていた黄野くんは、お味にびっくりしたようだ。もうちょっと違う味を想像していたのだろうか。

「ん、うん。一応言ってもいい? これは本当にロックタートルのスープですか?」

 喉の調子を整えて、作った声で問われたのでつきあってあげよう。


「はい。ロックタートルのスープで間違いありません」

 って、黄野くんがこれ以前にロックタートル(仮)のスープを食べるシチュエーションはありえないのでこの茶番に意味はない。食べたこと、ないよね? ないはずだ。

「美味しくて目が回りそう」

 そう言って瞬きの回数が増えた黄野くんのまつ毛がばっさばっさ揺れてこっちに風が来そう。てか明らかにまつ毛増えてない? 伸びてない? 


「うまい」

 ロックタートルのスープはジュドさんにも好評だ。当然である。すごい勢いで飲んでくれている。

 わくわくと肩に力を入れて感想を待っていたルーナが全開の笑顔になった。アク取りがんばってくれたもんね。

「ありがとう」

 ルーナの頭をくしゃりと撫でる少し骨ばった大きな手が、ルーナへのご褒美だ。ルーナの銀髪はサラサラなのでくしゃくしゃにはならない。つるっつるに指から抜けていて触り心地が抜群であることが察せられる。くすぐったそうにぴるると揺れるお耳もたまらない。かわいい。

 なんていうか、二人の世界な感じはもはや絵画のようだ。顔が良い。顔面が強い。いつまでも見ていられる。


 ロックタートルの塩を振って焼いただけのお肉に魅了された男子高校生は肉の山を攻略している。

 緑川くんはひたすら無言で咀嚼。かめばかむほど旨味が出るお肉だけど、そんなガムの様にかまなくても、とは思う。

 シンプルなだけに旨味がよくわかるよね。焼いただけのお肉。刺し身でも食べられるという最高な牛肉をもらったことがあるけど、私は焼いて食べた。くれた人には申し訳ないけど焼いた肉最高だった。


「なんというか、身体に染み入る」

 青井くんが感想を述べる。そうなんだよね。身体が欲しているものを補ってくれている感がある。力がつくってのがよくわかる気がする。

 その言葉に頷いた赤木くん。

「肉ならなんでもいいと思っていたが、これはすごい。違う」

 男子高生、多分質より量なところはあるだろう。その体を維持するならタンパク質たくさん要りそうだし。そんな量派な赤木くんを違いが分かる男にする亀肉すごいな。


「しあわせ……」

 ってほわわんとしている桃瀬さん。目がとろりんとしていてカレーに酔っ払っているみたいになっている。ちょっとまって。ロックタートルのお肉、アルコールみたいな成分あったりする!?

 食べたばかりなのに、目は潤んでるし、上気した頬がなまめかしいし、こころなしか髪の艶も肌の艶も増していて、ロックタートルさんの強壮効果兼美容効果って即効性なの? って思うくらいだ。


 ロックタートルカレーほんと美味しい。とろっとろに煮込まれたお肉も美味しいし、追加でこれでもかと入れた良いお肉がまた。


 そういえば、カレーに使うスパイスも薬効があるわけで。


 なんだか、こう、みんな肌はぴかぴかだし、髪もつややかになって。筋肉質な人はこころなしかバルクアップしたみたいに見えるのだけど、食べて暑くて代謝がよくなっただけ、ってわけではなさそうだね。聞いていたより美容効果がすごい気がするのだけど、これは素材の美貌が関係する、とかあるのだろうか……



 そうして、体力をしこたまつけた勇者たちは元気に旅立っていった。

 とは言っても黄野くんの転移能力でちょこちょこ戻ってきてくれるので様子が聞けて、救援物資も渡せるので安心できて良い。

 その時にもらうお土産の話を聞く感じ、なんだかものすごい勢いで突き進んでいるっぽいのだけど、無理してない? ちゃんと寝てる? 御飯食べる? 

 私がそう言うと、みんなは「また言っている」という顔をして笑う。そしてご飯は食べてくれる。

 笑えて、ご飯が食べられている間は大丈夫だろう。だから、みんなが美味しそうにご飯を食べてくれるとほっとする。いっぱい食べて。ストレージにも詰め込んでいって欲しい。

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― 新着の感想 ―
 昔になぜか川にいたウミガメ?を捕まえて食べたけどデカいから甲羅を鍋に煮込んでも4時間かかるのがくそだったなぁ、丸々煮込むんじゃなく小さく切ればよかったのかな?ただかなり旨かった。
ここは商人から成りあがった男爵が、金の鍋を持って勝負を挑んで欲しい
なんて羨ましい効果…。
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