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106 第一回勇者たちをお腹いっぱいにしよう会の終了

「みんな、良い能力を選んでるね」


 ちょっと遠距離攻撃力に欠ける気はするけれど、安定感があって良いパーティだと思う。きっと着実に事を進めるだろう。


 ただ、実際の勇者たちを見てしまうと。

 この子達高校生だよね。魔王をなんとかして欲しいという気持ちはあって、そのためにできるサポートをはするつもりだったのだけど。この子達だけに任せて良いのだろうか。


「ねぇ。黄野くん。転移って六人でもできる?」

「えっ、はい」

 そうか、じゃあもう覚悟を決めよう。六人目の勇者じゃないけど転移者としてこの子達についていこうと思う。


 だって、子分を守るのは親分の仕事だよね。守ると言っても見守ることと少しのサポートしかできないけれど。なんだかいろいろゴタゴタがありそうだけど。

「じゃあ、一緒について行ってもいいかな?」

「お姉さま……」


 桃瀬さんが少し目を潤ませた。えっと、緑川くんが二年生で、他三人が一年生だったんだよね、召喚時。桃瀬さん、一番年上で委員長でずっと気を張っていたのではなかろうか。今までつらかったよね。


 しかし、桃瀬さんはハッとした顔になって、他の勇者たちにアイコンタクトを取った。勇者たちが真剣な顔をして頷きあう。


「サキさん、僕と同じで基本、攻撃力はないんですよね。だったら、あなたを失いたくない。安全な場所にいて欲しい。そして、たまにでいいので、本当にたまにでいいので日本食を食べさせてほしい」

 青井くんにとても冷静に真剣に頼まれる。


「結界で守る、けど。うん…」

 と、緑川くんも青井くんに同意。

「オレからも頼む」

 赤井くんにも言われて。


「あーやっぱり遠距離だと五人が限界かも。俺の転移能力……」

 と斜め上に目をそらした黄野くんが言う。

 それ、絶対嘘だよね。


「お姉さまがカレーを作って待っていてくれるなら、私、頑張れます!」

 良い子達だな。本当に。


 わかった。

 いつでも待ってる。転移で食べに帰ってきてね。そしていっぱい料理を作って、ストレージにもたせよう。

 あと、私で役に立つことがあるなら本当についていくから。ポテチとハンバーガーを盾にとれば、黄野くんは多分私の言うことを聞いてくれると思う。


 とりあえず、黄野くんに定期的に連絡に来て欲しい。だって心配だから!


 テーブルの上に出した料理の残りは、話している間に復活した高校生たちの胃袋に結局綺麗に収められた。

 あんなにグロッキーになっていた三人も少し休めば「まだ入る!隙間ができた」って復活していたのでやはり高校生の胃袋はすごいもののようだ。

 あれだね。台風とか線状降水帯で一気に雨が降るのは大変だけど、断続的に降ってくれれば大丈夫、みたいな。



「今日のこの食事会に協力してくれた、私のこっちでの大事な人達を紹介してもいいかな?」

 最初は勇者たちに接触するのは私だけの方がいいかなと思ってそうした。けど、勇者たちの人となりもかなりわかったし、問題ないと思うのだ。


 私の言葉に顔を見合わせる勇者たち。

 代表して桃瀬さんが答えてくれた。

「もちろんです。このお料理、作ってくださった方もいるんですよね? ぜひお礼が言いたいです」


 うん、流石に私だけが作ったわけじゃないのはわかるよね。実際、昨日から今朝にかけて下ごしらえは私もした。最初のカレーは私が作った。けど、今日の実際の最終工程というか揚げたりなんだりの調理はマーサさんがほぼやってくれたのだ。


 少しの説明でやりたいことをわかってくれるマーサさんあらためて有能すぎる。初めて扱う調味料だろうに、ちょっと味見してもらっただけで同じように味付けも再現してくれて、神かと思った。


「使い魔? の人達?」

 黄野くんに聞かれる。うん、ミミとキララもルーナと共に手伝ってくれた。

 ジュドさんは勇者たちが来ているということで一応周りを警戒してくれている。

 もともとこの家、ルーナがいるから警備システム? みたいな仕掛けがあるみたいなんだよね。盗聴防止、侵入防止みたいな。

 だからあそこまで、この家を会場にすることをおすすめしてくれたのだろう。


 というわけで、

「家主のジュドさん。いっぱい助けてもらっている」

「助けられたのはこっちなんだが……」

 てな感じにみんなに軽く紹介して。ルーナの可愛さにどよめきが起こるのを楽しんだりして。


 最後に紹介した、今回の大功労者のマーサさん。

「こんにちは。残りのお料理、持ち帰れるように準備しているから少し待っててね」

 にこやかに言うマーサさんに勇者たちが顔を輝かせ、深々と頭を下げて口々に礼を言う。


 かくして、マーサさんにもマーサさんを慕う子分が五人できたわけだね。


 お土産にと思ってラリーさんに頼んで焼いてもらったカレーパンと甘い豆パンは五つに分けてある。残りの料理もマーサさんが持ち帰れるようにしてくれるので、ストレージに入れてゆっくり味わって欲しい。


「あ、桃瀬さん、ちょっとこっちに来て」

 そう言って桃瀬さんを隣室に。

「えこひいきになりそうなんだけど。これ」

 こそっと桃瀬さんに渡したのは、今まで私が千円リピートに余裕がある時に買って備蓄してあった自分用の化粧水とかシャンプーとかその他もろもろだ。


 私には女子力がないので本当に最低限のものしかない。化粧品なんてほんとごめん。百均のスリムなアイブロウペンシルとかだよ。だって超極細芯がほんと細くてめっちゃ描きやすいから……

 でも桃瀬さんは元がとても良いので最低限でも大丈夫だと思う。きっと。


「どうしても要るもの、あるよね。言ってくれたら次回までになんとかできるものは出しておくから」

「本当に助かります。こっちのものはなんていうか……」

 だよね。わかる。えこひいきだろうが、女の子は特別です。男どもはちょっと我慢してほしい。余裕があったらできるだけ希望は聞くけど。



 そんなこんなで、第一回勇者たちをお腹いっぱいにしよう会は成功に終わった。


 とりあえず、黄野くんという勇者直通ラインを手に入れたわけだし、救援物資を作ろう! 調味料備蓄しとこう! 

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― 新着の感想 ―
生半可じゃ無い遠距離攻撃手段ある事を説明しないと …いや、勇者の戦力的には生半可なのかな? ミミ、キララも合わせて戦力的にどれくらいの位置にいるんだろ? 出来かけダンジョンのスタンピード(?)抑えたり…
 ああ日本製のあれを見た時は確かに衝撃的だった、海外の僻地に居ると普通に布とかを利用するし水も貴重だったりしたからなぁ(遠い目
「その他もろもろ」に、最重要物資(生理用品)が含まれていますように。
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