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炎竜ヴライヤ②

 仕切り直し。

 シャドウは印を結び、右腕を掲げる。

 すると、周囲に大量の『水の玉』が浮かび、辺りに浮かんだ。

 

「ルクレのおかげで見えてきた……さあ、来やがれ」

『……餓鬼が、生意気な』


 ヴライヤは翼を広げ、前傾姿勢になり両足で踏ん張る。

 そして、口を大きく開けた。


「シャドウ!! さっきの攻撃が来るぞ!!」

「シャドウ様!!」


 ライザー、ヒナタが叫ぶ。

 だがシャドウは冷静だった。周囲に浮かぶ水の玉は、シャドウと同じくらい落ち着いたように浮かんでおり、そこには焦りや困惑など感じられない。

 そしてシャドウは印を結ぶ。右手と左手の親指と中指で輪を作り、その手を合わせる。


「あれは……説法印」

「な、なんだそりゃ」

「混合忍術を使うための『繋ぎ』です。『忍道二十一印』とは別の、魔法式を構築するための印で、二十一印の繋ぎ印の一つ……説法印は三種混合忍術の繋ぎ」


 以前、シャドウは七属性の忍術を同時に行使したことがある。

 だがそれはあくまで、一つ一つを発動させて組み合わせた忍術。だが今から行うのは属性そのものを組み合わせ、一つの忍術として発動する技だ。

 三種混合。シャドウは印を完成させ、説法印を構えたまま言う。


「さあ、来やがれ」

『───……フン。消し炭となれ!!』


 ヴライヤは『熱線』を放つ。

 ルクレが受けた熱線よりも太く、熱が籠った一撃。

 シャドウは説法印を組んだまま叫んだ。


「水、風、雷混合……鏡遁、『蓮華氷鏡の術』」


 水の玉が凍り付き、雷で研磨され無数の『鏡』となる。

 そして、鏡の一つが熱線を受けた。

 そのまま貫通、砕け散るかと思った瞬間……なんと、鏡が角度を変え、熱線を弾いたのだ。

 そして、弾かれた熱線が別の鏡へ、再び熱線が反射。

 反射、反射、反射を繰り返し───熱線が向かった先は。


『なっ』

「おかえしだ!!」


 無数に反射した熱線は、ヴライヤに向かって飛ぶ。

 そして、熱線がヴライヤの頭に直撃すると、鎧のような外殻が砕けヴライヤが吹き飛び、そのまま壁に激突して崩れ落ちた。

 驚愕し、声も出ないライザーとヒナタ。

 シャドウは説法印のまま、大汗を流し肩で息をする。

 そして、ヴライヤがゆっくり起き上がる……その頭部からは、真っ赤な血が流れ落ちていた。


『貴様……吾輩の攻撃を利用するとは……!!』

「俺の忍術がどれも通用しない気がしたからな。だったら、お前の攻撃を利用して跳ね返し、ぶつけてやろうと思ったんだ……!!」


 鏡はまだ浮かんでいる。

 

「さあ、何発でも付き合ってやる……かかって来い!!」


 シャドウは笑う。

 鏡がクルクル回転し、威嚇するように周囲を回る。

 

『…………ハッ』


 すると、ヴライヤは口を歪めた。


『ハハハ……ハッハッハッハッハ!!』


 ヴライヤは笑い、自分の頭を撫でる……手に付いた血を見て、さらに笑った。


『面白い!! 貴様、面白いぞ!!』

「……そりゃどうも」

『このまま続けるのも一興だが……いいだろう。小僧、名は』

「……シャドウ」

『シャドウ。その名、覚えたぞ……戦いは終わりだ。もう貴様を殺そうとは思わん』


 ヴライヤは翼を閉じ、再び身体を丸めて寝転んだ。

 シャドウは鏡を解除……戦闘解除ではない、鏡を維持することができなかった。

 そして、ライザーとヒナタが駆け寄り、ルクレとシャドウを支える。

 シャドウは、肩で息をしながらヴライヤを見た。


「……もう、戦わないのか?」

『ああ。それと……先程の非礼を詫びる。ハンゾウの弟子よ』

「うん……もういいや」

『うむ。さて、シャドウとその仲間たち……貴様らに興味が沸いた。吾輩を仲間にするというのなら受けてもよいぞ』

「え……マジで?」


 驚くシャドウ。ヴライヤは口元を歪ませ、にやりと笑う。


『貴様ら人間の寿命は百年ほどだろう? 善戦した褒美だ。その程度の時間、くれてやる』

「ま、マジか……で、伝説の竜種が、味方かよ」

「……ハンゾウ様ですら成し得なかったことを、シャドウ様が」

「……ははっ」


 シャドウは笑い……ヴライヤに言う。


「よし。ヴライヤ、お前は今日から『風魔七忍』の五人目だ……あ、人じゃないけどな」

『よかろう。ではシャドウ……これを受け取れ』


 ヴライヤは、口の中から小さなガラス玉を出し、シャドウに向かって投げる。

 地面を転がるとシャドウの前で割れ、その中には一枚の羊皮紙があった。


「これは……?」

『ハンゾウとの戦い後、奴が吾輩に寄越した物だ。いずれ必要になるとな』

「……ははっ、さすが師匠」


 シャドウは羊皮紙を眺め、感心していた。

 ハンゾウは一体、どこまで想定していたのか。そこに書かれていたことに驚き、笑う。

 羊皮紙を見ようとしたライザーだが、シャドウが隠してしまう。


「お、おい。見せろよ」

「だめだめ。少なくとも今はまだ、な」

「はあ?」

「ん~……あれ? あ、シャドウくん!!」

「お、起きたかルクレ。お前のおかげで助かったよ、ありがとな」

「えっと……って、あの赤いトカゲさん!! わわわっ!!」

『誰がトカゲだ!! 食らうぞ娘!!』

「ひいいいいい!? あう……」


 ルクレはまた気を失ってしまった。

 ヒナタが苦笑してルクレをおんぶする。

 ライザーは、気になったのか聞いてみた。


「あの、ヴライヤ、聞いていいか? お前……なんでこんな初級のダンジョンに住んでるんだ?」

『初級だの、ダンジョンだのは知らん。ここは昔から、吾輩の寝床だ。たまに人間の声がするがな』

「そ、そうなのかー……おいシャドウ。こーいう時って普通は学園に報告だけどよ」

「するわけないだろ」

「だよなー……」


 ライザーは肩を竦める。

 ルクレを抱っこするヒナタが言う。


「あの、シャドウ様……そろそろ戻らないといけません」

「あ、そっか」

『む、お前たち……下に向かうなら、そこの通路を行け。一番下まで行ける』

「おお、ありがたい。ありがとなヴライヤ」

『フン……では行け。何かあればまた来るといい』

「ああ、またな」


 シャドウたちは、ヴライヤの近くにある入口から下へ向かう。

 そこは階段になっており、螺旋階段を進むと一気に最下層まで行けた。

 隠し通路になっているのか、一番下に到着すると隠しドアがあり、外を探りつつ慎重に開ける。


「最下層……すごいな、あっという間に到着したぞ」


 シャドウが外に出て、他の三人も外へ。

 ドアをゆっくり閉め、隠しドアがバレないようにさりげなく瓦礫でドアの前を塞ぐ。

 周囲を見ると、そこは狭い通路の一つだった。壁もボロボロなので、隠しドアがあるとは初見で見ることはできないだろう。

 そのまま四人で、最下層にある『証』を取りに行こうとした時だった。


「……うえ、なんでお兄ちゃんが」

「あ、シャドウくんたち!!」

「…………」


 曲がり角から現れたのは……シェリア。

 そして、ユアンとレスティアの三人と遭遇するのだった。

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はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!
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お読みいただき有難うございます!
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