表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/61

接触

「あー……疲れた」


 学園散策が終わり、ようやく解散。

 シャドウはヒナタと部屋に戻るなり、椅子に深く腰掛けた。

 そして、やや愚痴っぽく言う。


「悪意のない邪魔って本当にあるんだな……クオルデン王国の第二王子とアルマス王国第一王女が並んで、そこに何故か俺とヒナタ……目立ちたくないのに、嫌でも目立つ」

「そうですね……まさか、第一王女ラウラがこちらに接触してくるとは」

「……第一王女が『黄昏旅団』の可能性は?」

「ゼロではありませんが、限りなくゼロです」

「……殿下は?」

「そちらはまだ未調査です。明日、調べて参ります」

「ああ。ったく……何を目の敵にしてるのか、何かあるたびに話しかけてくる第一王女から守るように、俺の間に入ってくる」


 明確な敵意ではない、微妙な敵意……恋敵と言えばいいのか。

 シャドウは、ユアンから微妙に嫌われていると感じていた。


「とりあえず、今後のことを話そう」

「はい」


 シャドウはヒナタに椅子を勧め、ヒナタは座る。


「まず、俺たちは学園に入学した。明日から授業もある」

「はい」

「学生を演じつつ、『黄昏旅団』のメンバーを探す……そして、見つけたら暗殺する。それが厳しいようなら、正面から殺す」

「……はい」

「ヒナタ、お前には苦労を掛けると思うけど……情報収集は頼む。俺も、できる限りやるから」

「お任せください。むしろ、私はそちらが専門です」


 ヒナタは胸に手を当てて、力強く頷いた。

 

「まず最初。ヒナタはゲルニカ先生について調べてくれ。いいか……あいつの勘は鋭い。ヘタに近づきすぎると、気付かれるぞ」

「わかりました」

「よし、話はここまで。とりあえず、明日に備えて休むか」

「はい。ところで、房中術の方ですが」

「ま、まだ無理だな。もうちょい待ってくれ」


 シャドウは誤魔化し、早々にベッドに入るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 その日の夜。

 シャドウは気配を殺し、アサシン服に着替え寮の窓から飛び出した。

 そして、地面に着地し印を結び、土に触れる。


「擬遁、『土塊分身の術』」


 土で人型を作り、幻影を投射し『シャドウ』を作る。そして作り出した『人形』を操り、ベッドに寝かせることで寮から出たことを偽装した。

 シャドウは屋根に上り、ヒナタの部屋の窓を見る。


「……あいつも調査に向かった。俺も、寝る前に行ってみるか」


 向かうべきは、二学年の使っていた訓練場。

 不思議と、そこに行くべきだとシャドウの勘が告げていた。

 屋根を伝い、訓練場に到着……やはり、誰もいないし、静まり返っていた。


「…………」


 シャドウは柱の影から訓練場を眺める。

 間違いなく、気配はない。

 だが───……シャドウの勘は、当たっていた。


『……いるのでしょう?』


 どこからか、声が聞こえてきた。

 ゆっくりと、闇の中から現れたのは……漆黒のフードを被った『何者か』だった。

 顔は見えない。声も掠れたような、男と女の声を合わせたような声。

 訓練場の中央に立つ何者かは、言葉を紡ぐ。


『黄昏旅団所属『死神(デス)』……ラムエルテ。どうです? この名を聞き、話を聞く気にはなりませんか?』

「───……」


 シャドウはフードを被り、マスクで顔を隠し……ラムエルテと名乗った人物に向けて手裏剣を投げた。

 すると、手裏剣は『黒いモヤ』に包まれ、ボロボロに崩れて消える。


『我は話をしたいだけ。いずれ殺す、殺されるとしても……それくらいなら、いいでしょう?』

「…………」


 大事なのは情報。

 シャドウは柱の影から出ると、中央にいるラムエルテの傍まで向かう。

 互いに、十メートルほどの距離を取り、シャドウは言う。


「……学園には三人の『黄昏旅団』がいる。残りの二人はどこだ」

『これはこれは……面白いですね』


 ラムエルテはパチパチ手を叩くと、シャドウに右人差し指を向ける。


『狙いは、我輩の……いや、ワタクシたちの暗殺、ですか。フフフ……つい先日、『(ストレングス)』が死亡したとありましたが、アナタも関係していますね?』

「…………」


 シャドウは無視。ラムエルテに情報を与えるつもりはない。


『答えの前に、あなたも名乗っていただけませんか? いいでしょう? ボクも名乗ったんですから』


 一人称が安定しない。喋り方もどこかおかしかった。

 恐らく、喋り方や喋りクセで、身元が割れるのを特定させないため。

 だからシャドウは言う。


「風魔七忍所属暗殺者(アサシン)、ハンゾウだ」

『……!!』


 動揺したのを、シャドウは見逃さなかった。

 すると、シャドウの周囲に黒いモヤが集まり出す。

 シャドウは高速で印を結び、右手を突き上げた。


「風遁、『竜巻の術』!!」


 自分を中心に、竜巻を発生させる忍術。

 黒いモヤが吹き飛ぶと、シャドウは苦無を抜いて投げ、同時に腰に差す『夢幻』を抜刀しラムエルテに接近する。

 そして、ラムエルテを両断……だが、ラムエルテの身体がモヤとなり、斬撃が無効化された。


『……その名。あなたはまさか……く、ハハハッ!! そうですかそうですか、アナタ……あのハンゾウの弟子ですか。なるほどなるほど……パワーズはハンゾウと相打ち、『女教皇(ハイプリエステス)』が首を持ち帰ったと聞きましたが……どうやら彼女、マドカにも話を聞く必要がありそうだ』

「…………」

『忍術。まさか、その力を使える者がいるとは……覚えておきましょう。ハンゾウの意志を継ぐ者』

「……逃げるつもりか?」

『いいえ。準備です。お互いに暗殺者……寝首を掻くならご自由に』

「俺は、お前らを全員始末するからな」

『ええ。楽しみにしていますよ……それでは、よき夜を』


 そう言い、ラムエルテは消えた。

 今度こそ、完全に消えた。


「…………」


 黄昏旅団『死神(デス)』のラムエルテ。

 ゲルニカの正体である可能性、全くの別人である可能性。

 シャドウには判断できない。だが……シャドウは『風魔七忍』の名を出し、敵と接触した。

 つまり、暗殺者として『黄昏旅団』を狙っていると、バレてしまった。

 

「……だからどうした」


 喧嘩を売った。

 命懸けで、暗殺者として。

 シャドウは訓練場から出て、寮に戻る。そして分身を解除し、ベッドに入る。


「……大丈夫。俺は、やれる」


 高鳴る鼓動を抑えるよう、シャドウはベッドで目をつぶるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです


お読みいただき有難うございます!
最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ