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学園散策

 部屋のドアがノックされ、シャドウとヒナタは顔を見合わせた。

 ヒナタは隣の部屋に移動し、シャドウは急いで制服に着替え、ドアを開ける。


「はーい……あれ? あなたは、ラウラ王女殿下」

「はいダメです。やりなおし」

「……え」

「王女殿下、は必要ありません!! 先生も言ってたじゃないですか、学園では三等魔法師として扱うって……だからシャドウくんも、ラウラって呼んでください!!」


 いきなりすぎて事態が飲み込みにくいシャドウ。何となくラウラの背後に立っているソニアを見ると、しかめっ面をしながら口を結んでいた。

 すると、使用人室のドアが開き、ヒナタが出てくる。


「ラウラ王女殿下。何か御用でしょうか?」

「ヒナタちゃんもダメ!! 王女殿下、っていうのはナシで!!」

「え、えっと……」

「お嬢様、やはりいきなりは難しいのでは?」

「むー……ソニアの《お嬢様》が最大の譲歩だからね。まさか、シャドウくんたちにお嬢様って呼んでもらうわけにはいかないしー」

「……あの、それで、何か用事ですか?」

「うん。学園を一緒に回ろうと思って!!」

「……はい?」


 驚くシャドウ……これは、誘われているのだろうか?

 何となくまたソニアを見ると、ため息を吐きつつ説明する。


「……とにかく、一緒に行きましょう。あなたを誘うためだけに、お嬢様は殿下やハーフィンクス公爵令嬢のお誘いを断ったのですよ」

「…………え」


 ソニア曰く。

 『わたし、シャドウくんと一緒に周りますので!! あ、シェリアちゃんとユアンくん、一緒に回ったらどうかな?』

 と……いきなり『くん付け』と『ちゃん付け』でシェリアとユアンを呼び、さらにシャドウを誘うためだけに二人の誘いを断ったらしい。

 シャドウは頭を抱えたくなった。

 強者とは別に、こうも任務の障害となる誘い、悪意無き邪魔が存在することを知ることができて、ある意味運がいいと考えることにした。

 なんとも断りにくくなった。


(このお姫様、シェリアとユアン殿下の誘いを断って俺のところに来たのか……このまま俺が誘いを断れば、俺が周りから何を言われるか。誘いを受けたら受けたで、どうなるか……ああもう、このお姫様、これも演技で本当は『黄昏旅団』の関係者なのか?)


 しばし考え込んでいると。


「あの~……ご迷惑でしたか?」

「あ、いや」


 これまた、断りにくい。

 シャドウは曖昧に微笑みつつ、ペコっと頭を下げた。


「で、では……ご一緒させて、いただきます」


 ◇◇◇◇◇◇


 シャドウ、ラウラ、ソニア、ヒナタ。

 四人は寮から出て、まずは図書館に向かった。


「ここの図書館、王都で二番目に大きい大図書館らしいですよ」

「へえ……」


 図書館に到着。

 中はかなり広い。円形の塔であり、各階層ごとにジャンル別の本が並んでいる。

 塔は二十階建て。上まで行くのにかなり苦労しそうだ。


「わたし、アルマス王国でここの図書館の話は聞いてましたので、ぜひ来てみたかったんです」


 ラウラが図書館を見上げながら言う。空洞の塔なので、見上げると高い天井までよく見えた。

 

「……読書、好きなんですか?」

「はい!!」


 シャドウは思わず聞いてみたが、ラウラが嬉しそうに笑う。


「小さい頃から魔法の練習ばかりで……空いた時間はずっと、読書をして過ごしていました。なので、本は大好きです」

「…………」


 ハーフィンクス家では、読書ですら許可が必要だったシャドウ。

 楽しそうに本について語るラウラを見て、少しだけ羨ましいと思ってしまった。

 図書館ばかりでは、とソニアが言い、次に向かったのは地下ショッピングモール。


「この学園、購買や飲食店関係は全部、地下にあるんですよね」

「いろいろな店があります。えっと……確か、地下ショッピングモールには二百以上の店が入っているとか」


 ラウラ、ソニアが説明してくれる。

 ちなみにシャドウ、ヒナタから地下の店についても聞いていた。

 ソニアがヒナタに言う。


「主が望む物を買いにいくなら、中央にある総合スーパーマーケットがおススメだ。大抵のものはそこで手に入る」

「なるほど……覚えておきます」


 と───総合スーパーマーケットに向かおうとした時だった。


「あ……ら、ラウラさん」

「あれっ、ユアンくん!! どうしたのかな?」


 第二王子ユアンが、従者の少女と一緒にいた。

 シャドウはユアンに向かって頭を下げる。


「あ、あの……奇遇だね」

「うんうん。あ、さっきはごめんね、お誘い断っちゃって」

「いいんだ。その……よかったら、みんなで一緒に回らないかい? その、そっちの彼も良ければだけど」

「俺は構いませんよ」

「じゃあ、みんなで回ろっか」


 ラウラがポンと手を叩き、ユアンが合流。さりげなくラウラの隣に並ぶと、モジモジしながらラウラに話しかけていた。

 シャドウはその後ろを歩くと、ソニアが隣に並ぶ。


「……ユアン殿下は、お嬢様の幼馴染でもあるんだ」

「そうなんだ」

「うむ。まぁ、その……見ての通りだ」


 恋する少年と、鈍感な少女にしか見えない。

 そして、シャドウは気付いた。

 ユアンの護衛の少女が、どこか寂しそうにユアンを見ていることに。


「……あちらの護衛の方は?」

「ユアン殿下の護衛だ。私と同じ騎士で、アルトアイネス騎士爵家から来た騎士ファリンだ」

「……へえ」


 なんとなく、ユアンに気がありそうな気がした。

 すると、ラウラがいきなり振り返る。


「ね、シャドウくんもこっち来てよ。ユアンくんと挨拶、してないよね?」

「え、ああ……」


 ラウラではなく、ユアンの隣に移動すると、ユアンが笑う。


「初めまして。ユアンです」

「……シャドウ・クサナギです。よろしくお願いします」


 何となく、ラウラと接する時は注意した方がいい……そんな気にさせる気配を感じた。


(というか……目立ちたくないのに、なんでこんなことになってるんだ)


 第二王子ユアン、アルマス王国第一王女ラウラ。その二人と一緒に行動……どう考えても、目立たないわけがなかった。

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