表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

最終話 それから

季節は3月。まだ肌寒さが残る中、ボクはスーツの上にコートを着用して、ある会社に向かっている。


色々なところに応募をしてようやく1社、面接まで進むことができた。


しかし緊張する。ここまでは女性が電話越しで優しく面接してくれたけど、最後の最後に圧迫面接とかだったらどうしよう。否が応でもネガティブな妄想が頭の中で展開されてしまう。


「えーっと、ここか・・・」


そこはボロボロのビル。まるで廃墟のような建物だが、一応ここの6階にその会社はあるはずだけど・・・。


「・・・本当にここ?ボク、場所を間違えてないかな?」


会社のホームページには綺麗なオフィスの写真があったけど、あれもしかして嘘?


首を傾げながらボクは、時間を確認するためにスマホを開いたのだが、いつもの癖でそのままSNSにもしばし目を通す。


「あ、今日も更新されてる」


そこにあったのは綺麗な風景画。たまたまネットで話題になっていたから自分もフォローしたのだが、不思議とこのアカウントが投稿している絵を見ると心が落ち着く。行ったことがないはずの場所だろうけど、どこか懐かしさも感じる。


「い、いやこんなことしてる場合じゃない。もうすぐ時間か・・・。緊張するけどドタキャンするわけにもいかないし、面接を頑張るしか・・・」


そう言ってスマホをコートのポケットに入れ、ビルに入ろうとした瞬間。


ギシギシと音が鳴るエレベーターが1階に着き、中から体格の良い金髪の若い男性と青を基調としたメイド服姿の女性が降りてくる。


あ。ヤバい。


彼らを見て直観的にそう感じる。どうしよう、確実にボクは騙された。ここヤバい会社だ。


近づいてくる。逃げなきゃ。どうしよう。また騙された・・・。


「おい、大丈夫か?寒かったろ」


「え、え?」


震えているボクをよそに、金髪の男性は缶コーヒーをこちらに投げて渡して、女性の方は深々と頭を下げてきた。


「俺が面接官、そしてここの代表だ。寒いから部屋に入ろうぜ。積もる話はそれからだ」


ぱっと見はボクよりも若い男性は、満面の笑みを浮かべてこう話す。


しかしその口ぶりとその雰囲気はどこか自分よりも長い年月を生きているように思えて。


「安心しろ。俺はお前のことを騙したあのセミナーのオベティラムとはレベルが違う。俺はお前と“同じ”だ。ほら、さっさと行くぞ」


不思議と一瞬で憧れを感じてしまうような、そんな人だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ