第九話 ブランデー漬けの名誉
レオナルドはあせっていた。
冒険の任務に就いてから実績が二ことに。
このままではジェイコブに予算を削減されてしまう。
「本の城」で島のことを調べていると、闇騎士レイに声をかけられる。
チップス「無理するなよ、レオナルド」
レオナルド「騎士団長の実力をみせてあげよう!」
レオナルドは悩んでいた。
全然この冒険で活躍できてない、と。
ここ最近ジェイコブが王立騎士団のことに口を出してくる。
「王家の十二の財宝島」の件では活躍できてないようだから、予算の削減をしたいと。
何か実績が必要だ。
今まではモンスター相手に戦ってきたからこういう戦いが苦手だとか通じる相手ではない。
彼は「本の城」で調べ物をしていた。
「こちらの歴史書はいかがでしょう?」闇騎士レイだった。
いつもジェイコブの傍にいる騎士で闇騎士一族の天才剣士。
レオナルドはためらう。
しかし、今はわらにもすがる思いだ、受け取るしかない。
「これだ!」レオナルドは叫び、司書に注意される。
「次に向かう島はアン島にするぞ!」レオナルドは力強くいう。
「ど、どうしたんだ。レオナルド」チップスが聞く。
「今回の島では海兵隊との戦闘になる。海兵隊とは陸戦兵器を専門とする海上勤務の部隊だ。敵船に乗り移って剣や槍による近接戦闘、船上からの魔法攻撃などの戦闘をする」
「近接戦闘は我々王立騎士団の最も得意とするところだ」レオナルドはいい終わると水を飲んだ。
「カエルのときみたいに物量戦に持ち込まれたらどうするの?」騎士団のアン・テイラーがいう。
「以前ヘンリー島から逃げたガーディアンドラゴンがアン島にいるとレイから聞いた」レオナルドがいう。
「おそらく、今回はドラゴン二体を相手にすることになるだろう」
「二手に分かれて戦うってことですか」エールがいう。
「無理するなよ? レオナルド」チップスがいう。
「騎士団長の実力をみせてあげよう!」レオナルドが宣言する。
アン島に無事に着いたことが怖い。
「ふははは、ヘンリー島での屈辱たっぷりとはらしてやる!」ヘンリー島のガーディアンドラゴンがいった。
「じゃあ、俺は王立騎士団と戦うか」アン島のガーディアンドラゴンがケーキを食べながらいう。
「は? 一緒に戦うんだぞ?」ヘンリー島のドラゴンがケーキをとりあげていう。
「わかったから、ケーキ返せ」
海兵隊との戦闘が始まった。
ズバッ
うめき声をあげ敵兵が倒れる。
ザシュッ キーン ザザザ ドーン
斬り合いと剣が弾かれる音、そして魔法攻撃。
それがあちこちから聞こえる。
ん? 剣が弾かれる? レオナルドはそちらを見る。
アダムのピンチだった。
「アダム、動かないでよ!」
バリバリバリィッ
電撃がアダムのすぐ横をかすめる。
敵兵に直撃し消える。
「あっぶねーな! 当たったらどうする」アダムが後ろをふり向いていう。
「動かないでっていったでしょ!」
ビリビリッとアダムの後ろにいた敵兵に当たる。
ふたりのやり取りに安心していると、大きな影が現れた。
ふりかえると巨体の敵兵が大剣を今にもふりおろそうとしていた。
レオナルドはよける。
ドスッドスッ
動きのにぶさから簡単に倒せると彼は思った。
ザシュッ
その敵兵に弓が刺さる、あれは福の矢だ!
ザシュザシュザシュッ
目では確認できない速さで斬られた。
目の前の敵兵とは違う。
剣がその手からなくなっていた。
剣は浮いていた。
そうか、剣もモンスターだったんだとレオナルドは気付く。
「また、矢の匂いをかぐとか言う技を使うんだろ? そう何度も効かないからな!」ドラゴンは羽の生えた人間の姿で胸をそらす。
「ははは、そうですね。この帯にお気づきですか?」フィッシュがいう。
「へっ、 帯がどうしたっていうんだ」
それは光の帯だった。
しゅるしゅるとドラゴンを包み最後にリボンをつけて仕上げをする。
「一体目のドラゴンを捕獲しましたよ、レオ。そちらもお願いしますね」フィッシュがいう。
「はい! これであの厄介な矢がないぶん戦えるぞ」
剣は真っ直ぐに突っ込んでくる。
キーン
弾く、そしてバランスを失った剣を真っ二つに斬る。
剣は動かなくなり、けむりがでてアン島の丸々としたドラゴンが現れる。
「は~、こりゃもう使えないな。仕方ない、俺が戦うか」ドラゴンはすらりとした美形の人間の姿になる。
「ウソだろ、何で体型が変わるんだ?」レオナルドがいう。
「俺はブランデー漬けフルーツケーキで脂肪として力を蓄えてるんだ。だから、本来の力を出すときはこういう体型なんだ」ドラゴンは説明する。
「顔が美形になるのは」レオナルドは聞く。
「ブランデーには美容効果があるんだよ」ドラゴンはいい終わると炎をふく、それが剣の形になる。
「剣で勝負といこうじゃないか?」
「ああ、望むところだ!」レオナルドは先手必勝と攻撃をする。
剣で受け止められる。
熱い、剣が溶けそうだ。
「レオ! 受け取ってください」フィッシュが福の矢を飛ばす。
レオナルドはそれを受け止めると彼の剣が変化する。
より強く、よりかっこいい姿になる。
ドラゴンが変化しきる前に攻撃しようとする。
しかし、間に合わなかった。
空のように青い剣はドラゴンの剣を受け止める。
「この一撃で決めさせてもらうぞ!」
レオナルドは剣を弾き、ドラゴンの胸をつらぬく。
シュウウウッ
音をたててドラゴンが消えていく。
「終わったか」レオナルドはメアリーを呼び、治療を受ける。
「――というわけで、今回は王立騎士団は大活躍したんですよ、ジェイコブ」レオナルドはいう。
エドワードへの報告に今回からはジェイコブがついてくることになった。
「レイのおかげだろう? 様をつけろ、予算削減するぞ」ジャイコブが返す。
「これがガーディアンドラゴンですか」エドワードがドラゴンを興味津々でみる。
「ううう、捕虜だから仕方ないんだ~」くやしさを隠さないドラゴン。
「この功績は勲章ものですね」
後日、エドワードはその言葉通り王立騎士団に聖ルイ勲章を与える。
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