第八話 栄光ある乙女
エールとフィッシュがけんかします。
チップスの優しさがわかる話です。
アーサー城の一室、王の書斎にていつもの三人がくつろいでいた。
エールはフィッシュに聞きたいことがあった。
それは彼の能力である。
気になっていたが今までの戦いからある恐怖をおぼえ聞けないでいた。
それは彼が能力を自分だけでなく彼と関わったもの全てに使っている可能性だ。
聞けば答えてくれるだろう「じっとわたしの顔を見てどうしたんです? エール」フィッシュが顔を近づけて聞く。
「聞きたいことがある、真剣な話だ。答えてくれるか?」真剣な顔のエールが聞く。
フィッシュとチップスが顔を見合わせる。
「三つ聞きたいことがある。ひとつは、君の能力。ふたつめは君はそれを悪用していないか。みっつめはそれを君の野心に使っていないかだ」エールはゆっくりといった。
しんとなる。
長い、沈黙だった。
「ひとつめ、わたしの能力はあらゆる生物の五感を支配することです。それと様々な魔法を組み合わせていますね。ふたつめ、それをいって君は信用できますか?」
「みっつめ、あなたが知るわたしにはそう見えますか?」
「僕には君がそう見えるから聞いている」エールはその言葉に静かに怒りを込めていた。
「なら、そうなんでしょう」フィッシュがため息をもらす。
この間チップスは二人に挟まれおどおどしていた。
この空気は王立騎士団と次の島を選ぶときも続いた。
「つ、次は栄光ある乙女にしようぜ。な、フィッシュ、エール……」
「はい」
「いいんじゃないですか?」
空気に耐えられないチップスがレオナルドに助けを求める。
「攻撃方法はおそらく火船攻撃だろう」
「かせん? どういう攻撃だ?」チップスが聞く。
「可燃物や爆発物を積んだ船で敵船に体当たりする攻撃方法だ」レオナルドが答える。
「迎撃や回避ができるし、せいぜいこちらを混乱させるくらいしか効果はないだろう」
「油断はできないけどな」アダムがいう。
「それでも数で来られたら厳しいけどな」騎士団のダビデ・ワトソンがいう。
「それなんだよな~」トーマスがいう。
「まあ、備えはするに越したことはないな」レオナルドがいう。
エリザベス島へとむかう。
その付近に来ると貴族のような服を着たカエルが現れた。
カエルはガーディアンドラゴンの使いであり、その力を示せと伝える。
「ウソだろ?」チップスがいう。
一面帆船が埋め尽くしていた。
その全てがこちらにむかっている。
ゲコゲコと聞こえている、乗組員はカエルだ。
「砲撃も回避も不可能だな」レオナルドが途方に暮れる。
「こんなのアリかよ」アダムがいう。
「フィッシュ」エールがいう。
「何かようですか?」フィッシュが答える。
「……君ならこの状況を脱する方法があるだろう?」
「はい?」
「エールこういうときは素直に謝ったほうがいいぞ!」チップスがいう。
「僕、全然悪くないですよね?」
「はい?」
その間もカエルの帆船たちが近づいてくる。
「俺はフィッシュもエールも信頼している! それは俺から見たふたりを俺は信じているからだ。なあ、もう仲直りしようぜ?」チップスがいう。
ゲコゲコという声がもう目の前だ。
「ありがとう、チップス。その信頼に答えますよ」フィッシュが答える。
「ぼ、僕もチップスのこと信じてます!」エールがいう。
フィッシュがふううと息をかけると味のついた炎がカエルの帆船にむかう。
カエルたちが味につられて炎に飛び込んでいく。
次々と帆船が爆発していく。
一面火の海になった。
「何か鶏肉みたいな匂いがする」チップスがおいしそうだなといいそうになる。
「カエルは鶏肉と同じ味がするそうですよ」エールがいう。
「食べる国もありますよ」フィッシュがつけたす。
「謹んでお断りします」メアリーがいう。
ガーディアンドラゴンは高貴なカエルを助け降参する。
エリザベス島につくとフランソワ城がそこにあった。
中に入るとフランソワという城の精が財宝の元へ案内する。
とても大事そうに保管されていたそれはカエルのイヤリングだった。
「今回は活躍できると思ってたのにな」レオナルドはがっかりする。
「でも、カエルのモンスターに勝っても英雄にはなれないだろ?」アダムがいう。
「あれだけの数なら十分でしょ!」リリスがいう。
エドワードへの報告も程々に王立騎士団と三人は城の食堂で食事を取る。
「フィッシュとエール、もうけんかはしないよな?」チップスが聞く。
「フィッシュ次第ですね」
「エールがわたしのことを信じてくれたらね?」
ふたりはお互いの顔を見る。
どちらともなく笑いだす。
それにつられてチップスも笑う。
三人は仲良くローストチキンを食べる。
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