第三話 王立騎士団
王立騎士団団長のレオナルド・マーティンです。彼は騎士の名門の出で天才。
エールと戦います。
エールくんの秘密とフィッシュの経歴が開かされます。
「僕、けっこう強いですよ?」のエールが負けそうになります。
そして、エールが優男なこともわかります。
王立騎士団団長のレオナルド・マーティンは三人のことが気に入らなかった。
地図を見つけたとはいえ、なんで素人冒険者のお守りなんかしなければならないんだ。
しかし、その素人の中に何故国難を救ったあのチャールズ様がいるのだろうか?
彼はため息をついた。
制度改革により東方の官僚制度を一部採用することを始めたことにより生まれた、貴族以外の天才でありながら、決して思い上がらない男だった。
本人は十八まで職に就かず、日がな一日遊び、食べ、飲み、寝ていたという。そんな話をしていたが彼への尊敬はゆるがない。
前々王に肩を叩かれてその生活を辞し、孫の位にいつか仕えることを決めたという。現在彼は三十三で王は二十歳。王がまだ五歳の頃だろう。
前々王は翌年に崩御された、五十三であられた。そして、エドワード王の父であるフィリップ王の時代が始まってしまった。「最悪の時代」が。
およそ愚王の行うことを全てなさったうえ、前々王の「貯金」を使い切り多額の赤字を抱え、周囲は敵国ばかりになっていた。
エドワード王ことエドワード様はで十七でご即位なされた。彼には荷が重すぎた、彼はよく泣くようになった。それが国民を不安にさせた。
しかし、彼は現れた。前々王ルイ様との約束を守るために、赤字は消え、敵国は次々と友好国へと変わり、エドワード様は名君と呼ばれるようになった。
まるで魔法にかけられたようだった。そんな中ルイ様との約束は果たしたと職を辞した。引き継ぎは完璧だった。奴が現れるまでは。
ジェイコブである。チャールズ様の残した者を片っ端から壊していき、自分の王国を創ろうとしていた。いや、まだ現在進行形だ。
今こそチャールズ様にはエドワード様の元に帰ってきてほしい。本音をいえば、ジェイコブの元で働き、明日は自分がクビになるのかとガタガタ震えて眠れない夜なんてもう嫌だ!
なんとか戻ってきてもらわねば!
そんなことをレオナルドが考えている時。三人は「王家の十二の財宝島」の話をしていた。
エールが昨日見つけた「謎の空白」。これについてフィッシュは心当たりがある。
「十三番めの財宝島」手にいれた者は大いなる災いを招くという言い伝えがあったのを二人にいう。災いとは魔王の復活だという説があるといった。
魔王のいない時代を生きている三人には現実感がない。ちょど王立騎士団と会う時間になった。
三人は王立騎士団よりも三十分早くついていたので雑談していたのだ。場所は副団長のメアリー・スチュアートの指定した食堂だ。
メアリーは栗色の髪にエメラルドの瞳の愛らしい女性だった。彼女はお菓子が大好きでレオナルドの放つチップスとエールに対する殺気を和らげていた。
しかし、限界があった。レオナルドは勝負を持ちかけたのだ。エールはそれにのった。
「優男の君が私と勝負? は、馬鹿にされたものだな!」
「僕、けっこう強いですよ?」
勝負は三回戦、審判はメアリー。場所は闘技場。ギャラリーは騎士団員たちとフィッシュとチップス。
勝負が始まるとレオナルドは初手は君に譲ろうと言いだした。そうですか、後悔しますよとエールは返した。
稲妻のような攻撃が始まるとレオナルドは防戦一方だった。強い、見たところ十代後半の端正などこか気品のある顔立ちでとてもそんな風には見えない。しかし、その戦い方にはムラがある。
一瞬の隙をレオナルドは見逃さなかった。攻撃を仕掛ける合間に足元がおろそかになる。彼はまずは一本だといい攻撃する。
思うも寄らない攻撃にエールは避けきれなかった。一回戦が終わった。
エールはこの攻撃で初めて自分の弱点に気がついた。彼はこの弱点を利用することにした。
レオナルドは当然だという顔をした。エールは悔しそうな顔をしている、顔が真っ赤だ。
二回戦が始まった。レオナルドはまた同じ隙を見て攻撃しようとした、しかし、それはたやすく打ち破られた。
レオナルドは攻撃が開始される前に防戦を強いられた。
たった一度の戦いで自分の弱点を見つけて罠を仕掛ける。レオナルドはこんな相手に今まで会ったことがなかった。
彼は常勝の騎士だった。だからこそ、若くして騎士団長にまで上り詰めた。
「考え事してる余裕なんかないですよ?」
しまった。そう思った瞬間エールの一撃が腕に当たった。防御魔法の施された防具がなければ斬りおとされていただろう。
三回戦が始まった。
二人とも全力の戦いだった。長期戦になると思われた、チップスの腹の音が聞こえるまでは。
「夕食の時間までには終わらせようと思っていたんだがな」
「僕もですよ」
その会話後にレオナルドの突きがエールへと伸びる、しかし、これを僅かに避けてエールは彼の兜を砕かんばかりの一撃を食らわせる。
レオナルドは気がつくと、騎士団のアリスに治療を受けていた。大きなたんこぶ程度ですんだが、兜がなければ……。
彼は久しぶりの強敵との戦いだった。次の戦いはいつ行う、といおうとした時にどこか見覚えがあることに気付く。
「名はなんという?」
「エール・アーサー・ケリー、この意味わかるよね?」
アーサーは王家にのみに許された名だ。ということはこいつ、いや、この方は。
「まあ、落ちぶれて酒場でウエイターしてたけどね、一応王家の血を引く貴族だよ」
「ええええ、俺はそんな方にいつも仕事の愚痴をこぼしてたのかよ!? これからどう接したらいいんだ」
今までどおりでいいよというとエールは座り込んだ。どうやら、体力と集中力を使いすぎたようだ。
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