表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/58

03

「ユリウス様とダンスの練習?!」

アリスは悲鳴を上げた。


「無理い!」

「そんなこと言ったって、婚約発表式の後のパーティーでお兄様と踊らないとならないのでしょう」

「どうして?!」

「だってお兄様のパートナーだもの」

夜会などで踊る時は、一曲目はその日のパートナーと踊るのが決まりだ。

今回は王家主催のパーティー、しかもお兄様は王太子の婚約者となる私の兄である。相当注目を浴びるだろう。

それなのに相手のアリスが挙動不審でダンスが失敗などしたら目も当てられない。

だから事前に練習してお兄様に慣れてもらわないと。

そう言うとアリスの顔が青ざめた。


「そ、そもそもどうして私がユリウス様にエスコートされるの?!」

「それは……アリスは今うちのお客様だから?」

まあ、それだけではないと思うけれど。


家族が執拗にアリスをこの家に留めておこうとしたり、自分たちの外出先へアリスを同行させること。

そしてお兄様がアリスと親しくしたがっていること。

それには私の恩人であり、前世の妹であることは別の理由があるのだと思うのだけれど――憶測なので、それをアリスに言うことはできない。


(でも、今日のドレス……あの色って、お兄様の髪色よね)

青はロンベルク家を象徴する色だ。

お母様から借りるアクセサリーも、あれはお母様の母国の特産であるローズダイヤとロンベルク家の色の石であるサファイアを組み合わせたもので、両家の友好を願い嫁入り道具として特別に作ったものだと聞いたことがある。

ドレスに合うという理由だけで貸すようなものではない。


(誰からも聞いていないから、あくまでも予測だけど)

それでも多分、私の予想は当たっていると思う。



「無理いい」

ぼすっと音を立ててアリスはクッションに顔を埋めた。

「無理でもやるの。練習は明日よ」

「明日?!」

「お兄様楽しみにしてるって。あとお母様が張り切っているわ」

アリスとお兄様のダンスの練習を提案すると、『すっかり失念していたわ』と声を上げたお母様の瞳が怪しく光ったのを見逃さなかった。

――あれはやる気満々だ。

アリスが無事だといいけれど。


「……お姉ちゃんの悪魔あ」

そんな私の心が伝わったのか、恨めしげな瞳が私を睨んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ