表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/58

19 庇護

「何事?!」

アリスと顔を見合わせ、声のした方へ向かった。


数人の令嬢と、彼女たちが取り囲む先に蹲る一人の令嬢。

(あれ、この光景どこかで……)

「ジャネット!」

アリスが駆け出した。


蹲っていたのは子爵令嬢のジャネット様だった。

そしてその前に険しい表情で立つ、アデール様。

「ジャネット! どうしたの、大丈夫?!」

アリスはジャネットの身体を支えるようにその肩を掴んだ。




「またアデール様が噛みついたようですわ」

いつのまにか私の隣に立ったソフィア様が小声でそう言った。

「……何故ですか?」

「何でも自分と同じ髪飾りをしているのが気に入らないとか」

「え……そんな理由で?」


(そうだ、これ、ゲームと同じだわ)

私は思い出した。

ジャネット様の家は爵位は低いけれど国一番の商会を持っており、裕福なのだ。

その髪飾りも確か商会で扱う商品で、だからジャネット様が身につけるのは当然なのだけれど。


「とにかくアデール様は階級意識が強くて、お茶会などでも下位のご令嬢相手に時々問題を起こしますの」

頬に手を当ててソフィア様はため息をついた。

「対立するより友好的に接した方が何かと良いと思うのですが」

「……ちなみにアデール様のご両親はどうなのですか」

「ラビヨン侯爵も同じですわね。夫人は穏やかな方なのですが……」

「そうですか。親の影響ですと……変えるのは難しそうですね」

下の爵位を差別することは、アデール様にとっては『常識』なのだろう。

確かに、侯爵と子爵では立場に大きな差がある。

――でもだからといって、低い爵位の者を攻撃するのはアデール様のためにはならないのに。


「子爵の分際で!」

はっとして見るとアデール様が扇子を振り上げていた。

そうだ、ゲームでは友人を庇い抗議したヒロインの顔を扇子で叩くのだ。

その勇気ある行動を見た殿下が心動かされるのだけれど。


(扇子で顔を叩くなんてありえない)

昔よく、義母に叩かれた。

何年も痕が残るほど強い痛みがある扇子で顔を叩かれるなんて……。


ダメだ、そんなこと。


無意識に身体が動いていた。




背中から身体中を駆け巡る激しい痛みと、悲鳴。

すぐ目の前の大きく見開かれた、その顔は。


前世で死ぬ直前に見た妹の顔と同じだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ