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09 候補者たち

今日の予定は、候補者たちの顔合わせを兼ねた晩餐会だけだという。

候補者たちは合計十五名。

広い食堂に色とりどりのドレスが並ぶ様は華やかだ。


(ゲームと同じ光景だわ)


内心テンションが上がるのを隠すように、澄ました顔を作る。

「リナ様、緊張なさっていますの?」

隣に座るソフィア様に声をかけられた。


「……ええ」

実際は緊張半分、興奮半分だ。

「こういう場では堂々となさった方がよろしいですわ。リナ様は一番立場が上なのですから」

「そうなのですね」

堂々と……それは難しそうだ。

前世では人見知りではなかったけれど、この世界に生まれてから家族や親戚、教会関係者くらいしか接したことがないのだ。

知らない貴族令嬢たちを前にすると緊張してしまうのは仕方ないと思う。

それでも背筋だけは伸ばした。



「では、まず今回の候補者の方々を紹介いたします」

文官らしい男性が口を開いた。


「リナ・ロンベルク嬢」

「……はい」

立ち上がると軽く礼をとる。

お母様から教わった通りにしたつもりだけれど……大丈夫だろうか。


「ソフィア・ドルレアク嬢」

「はい」

次々と令嬢たちが名前を呼ばれていく。

「コゼット・ヴィトリー嬢」

「はい」

心臓が跳ね上がった。


コゼット……私の実の妹。

やはり彼女もこの場にいたのか。


その顔を見る勇気はない。

ろくに視線を合わせたことがないから実際の顔はよく分からないし、それは向こうも同じだ。

それに私は元孤児という設定だ。

――関わらなければ、向こうには気づかれないはず。


私の動揺に関係なく紹介は進んでいき、最後の令嬢となった。

このゲームのヒロイン、アリスだ。


ゲームでは、実はこの晩餐会、陰で王太子が観察している。

そしてアリスは名前を呼ばれた時、一人だけ大きな声で『はい! よろしくお願いします!』と挨拶するのがこの場での正解となっている。

貴族令嬢らしくない元気な姿に王太子が興味を持つのだ。


「アリス・デュパール」

「……はい」

けれど他の令嬢同様の挨拶に、おやと思い思わず声の主を見た。


肩下までの長さのローズゴールドのふんわりとした髪に、丸くて大きな青い瞳。

それは確かにヒロイン、アリスだった。


(まあ……この場で一人だけ目立つようなことをする勇気はないわよね)

あれはゲームだから出来る選択だ。

納得していると、先刻の文官が一同を見渡した。

「それでは、今回の選考会について説明いたします。これからひと月の間皆様はここで過ごしていただきます。その間の行動などを見てお妃となられる者が決まれば選考会は終了。決まらなければ、人数を絞った上で継続となります」


(基本的にはゲームと同じのようね)


ゲームでも最初に同じ説明があった。

その後もゲーム同様、定期的に能力を測る試験があること、決められた時間以外は自由だがこの離宮から出ることは禁じられていると説明された。

「それから皆様の行動は審査官と呼ばれる者が見ており、随時審査いたします。どうか未来のお妃に相応しい行動をお願いいたします」

この審査官が厄介だ。

審査官であることを明かす者もいれば、隠している者もいて正確な人数は分からない。

侍女や庭師といった者も審査官だったりするのでどこで見られているか分からず、気は抜けないのだ。

――ほとんどの候補者はそれを知らないので色々と問題が起きたりするのだけれど。

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