弱体化した王子
とりあえず王子の元に戻ります。
かなり怒ってるだろうから。さすがに気まずいけど、それで訴えられて死んだら元も子もない。
もう自殺しようとしてる時点で死んでるんだろうけど、せっかく助かったのなら生きたい。
よし。
◇ ◆ ◇ ◆
「「あの(さ)」」
媚薬の効果のせいでもじもじしてしまう。声が重なったことに少なからずびっくりする。
「ど、どうぞ。」
「その、わるかった。もう二度とこんなことはしないと誓おう。」
え?それはやりすぎたってことに謝ってるのかな?
怒ってないのか。
「いえ。私のほうこそすみませんでした。ですから、これでおあいこということしにませんか?」
「いや、謝って許されることではないのはわかっている。それと、エリナならもうわかっているだろうが、俺がもったのは惚れ薬と媚薬だ。」
「私だってあなたに不敬を働いたので、それでおあいこということにするんです!それと、薬のことはもういいです。」
「これで最後か(ボソッ)」
「え。」
「好きだ。愛してる。言い訳にしか聞こえないだろうけど、婚約破棄したのは俺の自分勝手なんだ。
ただ、エリナがかまってくれないからそれにイラついて、それでほかの令嬢たちを侍らせながら婚約破棄したら少しは嫉妬してかまってくれるかも、なんて思って。」
突然の告白に顔が赤くなりつつも混乱する。うれしい。でも、もう婚約破棄はもうとっくに広まってしまってる。やっぱ婚約破棄はなしですなんて言えるわけがない。
結局は一緒にいられない。こんなにも好きなのに。本当にこれは薬の効果なのだろうか。
それを思うと自然に涙がこぼれてくる。
「エリナ?ごめん、傷ついたよね・・。」
「違う。ユノリのせいじゃない。だから謝らないで」と
俯きながら言う。
「エリ、っ。ごめん、俺にはそう呼ぶ権利も呼ばれる資格もないんだ、もう婚約者じゃないから。
でもずっとそう呼んでほしかった。殿下も、様もつけないで。」
何かに操られてるみたいに感じるくらい素直になれる。
「私だって呼びたかった。でも、ユノリは王子だからっ!ずっとふさわしくなれるように頑張ってたのに。この国のためだったのに。でも、ユノリがそれで苦しむくらいならいくらでも呼ぶよっ。ユノリっ!ユノリ!」
自分でよんでるくせにでももう隣にはいられないと思う気持ちが増してきて涙がボロボロこぼれる。
この涙さえ薬の効果なのか。この感情がいつかなくなるのか。そんなのは怖い。
「ありがとう。薬・・。解除するから、目をつむって、口を開けて?飲み込んでね。」
え?とりあえず従っておこう。
目をつむって少しだけ口を開ける。
!?唇に柔らかいのが当たる。そして何か入ってきた。おもわず飲み込む。
キス・・?だよね。
やっと離れたと思うと、薬の効果が引いてきてムズムズも暑ささえも消えてってしまう。
その感覚がなんだか寂しくて。
「ありがとうございます。」
「いや、もともと原因は私なんだし。すまなかったと思ってる。」
一人称が私に戻ってる。ユノリがどんどん遠くなっていくように錯覚する。
ユノリが好きという感情がまだ残ってる。薬の効果がまだ残ってるということ?
でも薬のせいにしたくない。この感情を偽りにしたくない。
でも
「ほとんど治ったんですが、、その。まだ・・。」
「じゃあもう一回やる?」
甘い声で耳元で囁かれる。
元に戻りたい。胸の苦しさと暑さから逃げたい。
少し離れて。
「もう一回してください・・・」
「わ、わかった・・」
なんだか乗り気じゃない?
「あ、いやだったら大丈夫なんですけど・・・」
「嫌じゃない。でもエリナの嫌がることはしたくないから。」
私のこと考えててくれたんだ。と思うと心が温かくなる。
そっともう一度唇を重ねる。わかっているとなおさらドキドキしてしまう。ちょっとした悪戯心で少しだけ目を開けると綺麗に整えられた顔が。いつ見ても見惚れてしまう。
天使みたいに綺麗。
薬を飲みこむ。すっと彼の法から身を引く。そのことに少し寂しさを感じる。
彼をいとおしいと感じるこの気持ちに嘘はない。消えない。
この気持ちから逃げたい。一緒にいられない。胸が苦しくなる。こんなことなかった。今まで。
呼ぶ声から現実に引き戻される。
「エリナ?大丈夫?」
ユノリに好きってことはばれちゃいけない。ばれたら結ばれないから余計苦しくなる。ユノリを困らせてしまう。そんなのは嫌だ。
「はい。治りました。おかげで」
満面の笑みを浮かべて見せる。
「そっか・・・」
そっか、そうだよね好きな女の子にあなたが好きじゃなくなりましたって笑顔で言われてもね・・。
でも、これしかない。
「もう俺のことは好きじゃない?」
寂しそうに聞いてくる。
返事に困る質問だな・・。




