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Singalio Rou' Se lef  作者: 篠崎彩人
第一章「枯葉の愛」

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第五幕「黄昏に抱かれて」

 ひどいものだ。これを神の気紛れと言わずして何と言い表すことができよう。いやそれでは済まされない。神は人では無し。人は定められた運命には抗えぬというのか。こんな苦しみの中を生きることを人に強いるというのか。もはや、神を頼みとはできない。自分の力だけで生きてみせる。そう、そしてアイカさえいれば……と思って前を見る。そこには、まるで幸せが躍っているかのような、両手に魚の全形を留めた骨を持ってくるくると舞い躍る、夕日に染まった少女がいた。魚が、彼女が食べる分の二匹しか捕らえられなかった不運。

 私たちは今、浜辺に沿って旅を続けている。腫れ上がった顔に、潮風が染みる。説教が全く通じないため体罰に及ぼうとしたのだが、アイカにお手持ちの虫で襲われて転んでしまって、その隙に馬乗りされて顔をポカスカと殴られてしまった不運。

 夕日があるであろう海のほうを見る。霧も海も、夕日に染まっている。魚が、海に犇めくようにして、悠々と我が物顔に泳いでいるに違いない。しかし、もはや体力も、腕の疲労具合も限界にまで陥ったただ今をもっては、彼らに対しいかなる捕獲手段も講じ得ない不運。心ばかりが、やるせなさで一杯に溢れている。

 再びアイカを見る。満足げな笑顔が妬ましくなってきた。

 私は、それまで特に意味もなく手にしていた壊れた釣り竿を握り締めると、夕日の方へと向き直り、一気に駆け出した。そして、姿の見えない夕日に向かって壊れた釣り竿を投げつけた。私は心の中で、様々なものと訣別していた。涙が、潮影に飲まれていった。

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