終局「哀歌」
一歩退く。男。
女。うつむく。
喋る。どちらか。
唾を飲む。あきらかに男。
女。女が喋っている。
女。女が喋っている。
男。耳を傾けている。
見ている。
聞こえていない。
話しかけたいのに、
本当は話なんてどうでも良いのに、
話し、かけることが、できないでいる。
女。女が喋り続けている。
青。比較的白い。
白。あまりにも白い。
青。渦巻いている青。
白。停滞し俯瞰する白。
青。白に浸食されて行く。
白。青を食いつぶす音。
滴るものの音。
男。目を上げる。
女。……話し続ける。
走る! 白がそれを覆う。
男。男が居ない。
女。男に抱きしめられている。
白、そして女。
泣いている。世界が泣いている。
世界の中心で泣いている。
世界の中心で全ての事象が泣いている。
世界の中心で、一人の男が泣いている。
腕の中で、一人の男が泣いている。
えがお。えがおにみたされて。
ひとりなんかじゃないよ。
いつもいっしょだから。
ずっとみてるから。
なかないで。
いつもいっしょだよ。
だから……
いつでもえがおをわすれないで……
さようなら…………。




