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Singalio Rou' Se lef  作者: 篠崎彩人
最終章「雪降る野原に、愛を繋いで」

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第五幕「破られた、嘘と沈黙」

 しばらく会わなかった人に会う、というのは、懐かしさが第一にあって、知っているのに知らない人と会うようで、もどかしい嬉しさと奇妙な刺激と新鮮さがある。昔のように語り合いたい、という思いが込み上げてきて、僕の中の人との絆の在処を再認識する。この絆が深かったら深かっただけ、心の中も大騒ぎを始めるのだろうが、ただ、この人とはそんなに強い繋がりが持てたわけではない。久し振りに二人して会えたというのに、それが残念だ。

 会った人というのは、僕にいろんなことを教えてくれた——飽くまで知識の上での話、だ。僕がそこから何か大切な物を学べたのかというと、本当をいうとよくわからない——、名前のない彼だ。僕は会うなりすぐさま、彼につけようつけようと思っていた名前をつけて勝手にそれで呼び始めた。エリクエク・エスタルから名前を取って、エリックという名を作ったのだ。きっとこの国に奉仕することを良しとして生きてきた人だ、喜んでくれるに違いないと思ってのことだったが、案の定、少し嫌そうな顔をして見せていたが目や口元で、心は喜んでいるんだなとわかった。こんな風に人を細かく観察したり、難しげな思考をしてみたり、僕は子供の頃からませていたが、こんなのん気な名前をつけてみたりするのは、意外に子供っぽい側面は人一倍大きかったかもしれない。きっと、親というものに面倒を見てもらったことがない分、背伸びをしつつもその子供のように甘えたいという願望の表れは捨てきれなかったのだろう。ほら、今だって妙に醒めた目で自分を見つめてみたりしている。まるで、親にそうしてもらいたいとでもいうような、そんな視点だ。

 歌姫、あの人の微笑みを見た日から六年、彼と最後に会ってから五年。彼によればそれだけの月日が、流れ過ぎているということだった。僕は、嬉しいことに、彼と親子のように過ごすことができた。人恋しかったというのがその理由だとは、僕は思っていない。僕なりに親という存在、その愛について考えたのが大きな理由だろう。彼の目は僕を愛していると言ってくれていた。僕には、彼が本当の親でなくたって、もしかして人ですらなくたって、それで十分だと思えた。うれしい日々が、子供の心で躍り回れる日が、また来てくれた。本当にそう思ったんだ。その時は、まだ全然、あんなに痛くて苦しい別れが来るなんて、思っても見なかったんだもの……。

 そう、でも僕は、逃げないでそれについて振り返ってみようと思う。僕が、この空間にあって、今の自分を見失わないためにも、未来の先から来る日に身構えるためにも、まだ、眠っちゃダメなんだ。 そうだ、これからの日々は、僕と世界のみんなの闘いなんだ……!

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